フィレンツェの同名の広場に面して建つ
ルネッサンス様式の宮殿。
同時代の宮殿の中でも
最も美しい宮殿のひとつとして挙げられる傑作。
1400年代半ばからフィレンツェの街で
急速に力をつけていったのは新興の商人階級。
メディチ家、ピッティ家、ストロッツィ家などに代表される
フィレンツェのこうした新勢力は次々に
一族の富と権力を象徴する、威厳のある
エレガントな宮殿を競って建設しました。
アンティノーリ宮殿と呼ばれている建物は
1461年から1469年にかけて
Giuliano da Maiano(ジュリアーノ・ダ・マイアーノ)が
Giovanni di Bono Boni(ジョヴァンニ・ディ・ボノ・ボーニ)の
依頼で建築したもので
その後、1475年には
Lorenzo il Magnifico(ロレンツォ・ディ・メディチ)が購入、
Martelli(マルテッリ家)を経て
1506年にAntinori(アンティノーリ家)の所有に。
アンティノーリ家の所有になってから
Baccio d'Agnolo(バッチョ・ダーニョロ)の手により
いくつかの改築が行われて、裏庭を含めほぼ現在の形に。
アンティノーリ家所有になってから500年が経ち、
今なお同家の人々が暮らす宮殿。
典型的な「フィレンツェ様式」で
非常に荘厳な雰囲気を漂わせるこの宮殿。
一階部分はほとんど窓がなく天井も高く作られています。
正面はバルコニーなどの突起もなく平坦で
装飾も控えめとなっているため
よりいっそう建築的な技術による美しさが強調されています。
宮殿の中央に回廊をもつ造りはメディチ・リッカルディ宮殿を
モデルにしているともいわれ、
自然採光の回廊の中庭にはアンティノーリ家が所有する
トスカーナ一帯に広がるブドウ畑などの
農地の模型が置かれています。
現在一階部分の手前広場に面した部分は
アンティノーリ家のワインをメインに楽しめる
「Cantinetta Antinori(カンティネッタ・アンティノーリ)」。
現在のアンティノーリ家の主要なビジネスである「ワイン生産」。
一族のブドウ栽培&ワイン生産の歴史は
非常に古いといわれていますが、
元々この一族がかかわっていたのは「毛織物・絹織物」産業で
ワイン生産に携わり始めたのは1385年から。
17世紀頃からフィレンツェの有力商人・貴族たちは
一族が手がけるワインを
宮殿の一角を利用して、一般庶民にも販売を行っていました。
宮殿の一部にワインを貯蔵する蔵をもち、
そこに近い部分に小さな穴を開けて
限られた時間だけわずかな使用人を働かせて
自家製ワインの販売を行うようになります。
現在もアンティノーリ宮殿の正面右手の小道
(Vicolo del Trebbio:トレッビオ通り)に
その当時の面影をわずかに残す
ワイン販売用の小窓が残っています。
フィレンツェにはこうしたワイン販売用の
小さな窓を持つ宮殿は珍しくなく、
小さなアーチ型をして木扉がつけられた窓が
その宮殿の歴史を物語っています。
この宮殿所有500年を記念して
アンティノーリ宮殿では
7月13日まで小さな展覧会が開かれています。
また通常は一般公開されていない
小さな手入れの行き届いた裏庭が
5月13日のToscana Esclusivaの一環で
一日だけ一般公開となります。