創世記22章20節である。「これらのことの後で、アブラハムに知らせが届いた。『ミルカもまた、あなたの兄弟ナホルとの間に子供を産みました。~』」という。「知らせが届いた」というが、その「知らせ」がどこからなのかを不明である。恐らく、旅人か隊商から聞いたものであろう。「知らせ」は「ミルカも~子供を産みました。」であった。
「ミルカもまた、」と。11章27~29節によると、「テラの系図はつぎのとおりである。テラにはアブラハム、ナホル、ハランが生まれた。ハランにはロトが生まれた。ハランは父のテラより先に、故郷カルデアのウルで死んだ。アブラムとナホルはそれぞれ妻をめとった。アブラハムの妻の名はサライ、ナホルの妻の名はミルカといった。ミルカはハランの娘である。」という。遠くカルデアの「知らせ」であった。
21節である。「長男はウツ、その弟はブズ、次はアラムの父ケムエル、」という。この三人の名は、その後の五人との間にいくらかの区別があるように見える。その三番目が、「アラムの父ケムエル」と説明されている。10章22節に「セムの子孫はエラム、アシュル、アルパクシャド、ルド、アラムであった。」となっていて、アラムの父はセムということになって、この節と一致しない。
一般にアラム族はメソポタミヤと北部シリヤ地方に住み着いたセム族の主要な部族であるとするのが定説であるから、「父ケムエル」は何かの間違いか、「先祖ケムエル」と読みかえる人もいる。いずれにしても、アブラハムの兄弟ナホルとミルカとの間に生まれた三男「アラム」は、預言者ホセアの時代(前732)には「アラムの野」としての地域名に残っている。彼と彼の一族の働きが大きかったといえるであろう。