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グアムへの米海兵隊移転計画に障害(WSJ.com)

2013-01-08 13:58:00 | 先住民族関連
2013年 1月 08日 13:58 JST
グアムへの米海兵隊移転計画に障害

 【アンダーセン空軍基地(グアム島)】アジアで最大規模の米軍のプレゼンスをグアム島に置く計画は、地元の反対や予算超過の問題でこの数年間先送りされている。

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 現地では単に「ビルドアップ(増強)」と呼ばれているこのプロジェクトは、米国防総省の二つの目標が盛り込まれている。1つは、アジアでの米軍の軍事能力を高め、米国の外交と軍事面での関心をこの地域に集中させること。もう1つは、米兵による犯罪や事故、基地騒音によって反米感情が高まっている日本の沖縄からの数千人の海兵隊の移転だ。

 国防総省が2006年に初めてこのビルドアップ計画を発表した際、グアムには既に空軍と海軍の施設があり、軍と強い結び付きを持つ米国市民も多いことから、計画は比較的容易に進められると見られていた。軍はアジア重視政策の一環として、原子力空母用の軍港とミサイル防衛システムの計画も追加した。

 しかし、ロジスティック面での問題や予算オーバー、そして、先住民族チャモロ族の活動家による予想外の反対運動に直面して、計画の進ちょくは鈍った。当初の見通しでは計画は14年には完了しているはずだったが、今では、最近再開が発表された環境評価が終わってからで、早くても15年まではスタートできないと見られている。

 米国と日本は昨年4月、グアムに移転させる海兵隊員の数を9000人から5000人に減らした。残りの隊員はオーストラリアとハワイに移し、これにフィリピンが加わる可能性もある。

 ビルドアップ計画の遅れの一部は、議会内での懐疑的見方からもたらされた。ジョン・マケイン(共和)、カール・レビン(民主)の両上院議員を含む議員らは、軍がコスト効率の低い方法でこの移転を実行できるのか疑問を呈し、予算を阻止すると警告している。

 オバマ大統領が最近署名した2013年度の米国の国防予算に関する法律は、海軍と空軍の基地への燃料パイプライン敷設を含め、グアムでのビルドアップ計画の数事業向けに1億0200万ドル(89億円)を盛り込んだ。この予算は、さらなる支出について国防総省が議会への一定の報告義務を果たすまで歳出に制約を課している。

 米政府監査院(GAO)の11年の報告では、ビルドアップ計画の費用は240億ドルと推定され、国防総省の100億ドルの予算を大きく上回った。日本は海兵隊の移転向けとして、このうち33億ドルを拠出することに同意した。同省は海兵隊員の移転数を減らした上での移転費用(他のビルドアップ計画項目を除外)は86億ドルになると見ている。

 グアムのエディー・カルボ州知事は「日本と米国による当初計画にはロジスティック面で大きな障害があった」と述べた。具体的には下水処理システムへの過剰負担や道路の渋滞などが挙げられるという。長さ30マイル(48キロメートル)のグアムには高速道路がない。

 同知事は、ビルドアップ計画は人口16万人、経済規模40億ドルのグアムが吸収するには大きすぎると懸念していた。同知事は「私がいつも心配していたのは肥大な成長だ。好景気の母であり、不況の母だ」と述べ、規模縮小と計画延期によって「はるかに持続可能になった」と指摘した。

 この計画は、国境の外で軍事と海洋のプレゼンスを拡大している中国に米国が対抗することなどを狙って、軍事的軸足をアジアにシフトしようとしている最中に進められてきた。

 カルボ知事は、太平洋を見下ろす崖の上にあるオフィスから外を指さしながら、「この地域が今日的意味を持ちつつある。ここから1500マイル(2400キロ)先には南シナ海がある」と述べた。南シナ海は天然資源が豊富で、中国とその近隣諸国が領有権を主張し合っている。

 米国は1898年の米国・スペイン戦争でグアムを取得。第2次世界大戦では日本との激戦地となった元日本兵の横井庄一さんは1972年に発見されるまでグアムのジャングルで隠れ続けた。


Getty Images
グアムのアンダーセン米空軍基地

 米軍は大戦後にグアムを管理した。この島は72年の北ベトナム爆撃に際して、爆撃機の基地となった。今は記念として、退役したB52爆撃機が空軍基地の滑走路わきに置かれている。

 グアムは日本や韓国の米軍基地ほどにはアジア大陸には近くはないが、米国の土地だという利点がある。Kマートやウェンディーズ、メーシーズの店舗がある。住民は米国市民だ。ただ、大統領選挙には投票できない。

 グアムの活動家は、チャモロ族が聖域としている土地の使用など、ビルドアップ計画のいくつかの点に反対することで団結している。環境保護活動家は、原子力空母用の港を作るための浚渫(しゅんせつ)でサンゴ礁が傷つけられると懸念している。コミュニティーグループ「われらグアム(We Are Guahan)」のリーダー、レービン・カマチョさんは「グアムでコミュニティーが軍に反対するのは非常に珍しいことだ」と話した。同グループは、古代からの村落地に射撃演習場を作る計画に反対して軍を提訴した。

 カマチョさんは片方にジャングル、片方に基地の高いフェンスがある裏道を車で走りながら、「軍に入っている人、軍に依存している人、家族が軍にいる人はたくさんいる。しかし、限界というものがある」と話した。

 カマチョさんによると、既にグアム最大の土地所有者である軍がさらに土地取得を進めて、住民が先祖伝来の土地に近づけないようにしてしまう恐れがあることにいら立っているのだという。こうした土地の多くは既に基地の一部となっている。

 国防総省は昨年10月、いったんは完了していた、ビルドアップ計画による土地使用が及ぼすと見られる環境や浚渫によるサンゴ礁への影響評価を再開した。グアムの海兵隊の報道官によると、同省が懸念される問題について住民らの意見を聞き、環境評価報告書草案についての公聴会を開くと、14年いっぱい時間がかかることになる。報道官はこの新たな環境評価は「前進」だとしている。

 軍は最終的な環境評価報告書を発表できるのは14年末で、その後60日たたないと実際の工事は始まらないとみている。

http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324890804578228623449941416.html


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