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地球の未来を救う鍵 質も量も高く不自由ない暮らし…アマゾン先住民を研究(産経ニュース)

2014-11-12 10:50:00 | 先住民族関連
地球の未来を救う鍵 質も量も高く不自由ない暮らし…アマゾン先住民を研究
2014.11.12 10:50

吹き矢を持つアシュアール族の子供たち。命中精度は高い(cDescola)
 南米のエクアドルとペルー国境をまたぐ奥地には、アシュアール族という先住民が暮らしている。彼らの生活と自然観を研究してきた仏コレージュ・ド・フランスのフィリップ・デスコラ教授が今年の「コスモス国際賞」(国際花と緑の博覧会記念協会主催)を受賞し、10月30日の授賞式に来日した。

 デスコラ教授の研究は、アマゾン密林の未踏の世界を照射し、数千年にわたって息づく自然と人間の共生の姿を浮かび上がらせた。環境問題が深刻化する欧米型の現代社会に、新たな発想からの解決の糸口をもたらす可能性が期待されている。



 アシュアール族は、われわれと同じモンゴロイド系の先住民だ。焼き畑農耕と狩猟で暮らしているが、労働時間が極めて短いにもかかわらず、不自由のない日々を送っている。

 「焼き畑と狩猟生活からは困苦や貧しさを連想しがちですが、彼らは質も量も高い暮らしを営んでいたのです」

 デスコラ教授によると男性は主な仕事の狩猟に平均で毎日3時間半を使う。ものを作ったり修繕をしたりには約1時間。

 女性の場合は畑仕事と家事で約5時間働くが、男女とも睡眠を含む自由時間は、18時間前後と長い。

 以上は台地の村人の暮らしだが、川辺の村人の男性の場合は狩猟と漁労が各1時間半前後となる違いはあっても、男女の自由時間は19時間前後で、やはりたっぷり休んでいる。

 「それでいて彼らは十分な栄養を摂取しているのです」

 平均すると毎日、3408キロカロリーと104・5グラムのタンパク質という食事になっている。ともに国連食糧農業機関(FAO)の基準値を上回っているから驚きだ。

 デスコラ教授がアマゾンの奥地にアシュアール族を訪ねたのは1976年のことだった。

同じく文化人類学者の夫人を伴い、3年間密林でアシュアール族と生活を共にした。

 当時は、彼らと外部社会との接触が始まって間もないころで依然、好戦的な気風が濃厚だった。それでも夫妻が受け入れられたのは「害のない人間とみなされ、もの珍しさが働いたためらしい」ということだ。

 アシュアール族は、ヒヴァロア語という特殊な言語を使うが、片言のスペイン語を話す若者がいたので彼を仲立ちに、言葉を覚えながら彼らの生活を文化人類学の視点で研究した。

 彼らは動物性タンパクを得る狩猟に吹き矢を使う。獲物は鳥やサル、イノシシに似たペッカリーなどだ。シカもいるが、狩猟の対象外。死者の魂を宿しているとみなされているためだ。

 約3メートルの長さがある吹き矢の筒は、堅いヤシの木を2枚、貼り合わせて作る。ピラニアの歯で加工した矢の先にはクラーレという植物性の神経毒が塗られていて、刺さった矢を動物が抜こうとすると折れて体内に残る構造になっている。

 2本刺さるとペッカリーも倒れるそうだ。二の矢は頭髪に挿しているので、間髪を入れずに吹ける。弓矢は使わない。

 漁労では、えらを麻痺(まひ)させる毒を川に流してナマズなど30~40種の魚を取る。2メートルもの大物も含まれるということだ。

 焼き畑農耕地では、女性がマニオクやトウモロコシ、サツマイモなど約60種の栽培種とともに40種を超える野生種を育てることで食用植物の密度は原生林より格段に高くなっている。

 数千年にわたる人々の働きかけが、自然を破壊することなく、広大な森林の姿を維持したまま、農耕地としての機能を兼備させ、発達させたのだ。

 作物は女性の親族とみなされる。狩猟獣は母方のオジやイトコとして扱われる。こうした自然の認識は、人間の側からのみ一方的に自然の利用を進めてきた欧米式の流儀とは異質の知の体系の産物だ。

 地球と人類の将来は環境問題ひとつをとっても、従来の延長線上での存在が難しくなっている。自然との永続的な共存を可能にする新たな哲学が必要な時代に私たちは生きているのだ。

 デスコラ教授へのインタビューを通じて日本の里山が連想された。人間の適度な介入が豊かな生態系を存続させてきた好例だ。マタギの伝統的狩猟でも獲物と自然に深い敬意が払われている。教授はアイヌ民族にも関心があるという。文化人類学の知の地平は、地球規模の広がりを持っているようだ。

http://www.sankei.com/life/news/141112/lif1411120023-n1.html


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