緑のカーテンとゴルわんこ

愛犬ラム(ゴールデンレトリバー)との日々のあれこれと自然や植物、
本や映画などの勝手な独り言を書き留めています

映画「母なる証明」

2020年03月05日 | 映画

「パラサイト」でアカデミー作品賞、監督賞をとった今、話題のポン・ジュノ監督作品「母なる証明」を見ました。
以前に劇場公開された時に見ているのですが、Netflixで家で見られるので再見しました。重たい内容なのでどうしても二度見たいと思った訳ではないのですが、最近親子関係や母であることを振り返って考えさせらる出来事があったもので、「母なる証明」を見直したくなりました。

ポン・ジュノ監督、すごい力のある監督ですね。
よくねられた脚本、優れた出演者、無駄なく張り巡らされた伏線の数々、息をのむ展開、見事です。

「殺人の追憶」を見たときも圧倒される思いでポン・ジュノワールドに引きずり込まれたのですが、「母なる証明」も息もつかさない迫力で濃密な母と知的障害のある息子の世界にどっぷり浸されます。

母親役のキム・ヘジャは韓国のオモニ(母)と呼ばれているその存在感で、自分を見下ろすほど大きくは育ったものの何をするのも危なっかしい息子から一時も目が離せない溺愛母ぶりを熱演しています。大ヒットドラマ「宮」でコミカルに可愛らしい皇太后を演じた同じ人とは思えません。

汚れのない美しい瞳で永遠の5歳児を演じるウォンビンは、立派に育った大きな身体をどう動かせばいいのか分からず、エロ話でからかってくる悪友ジフンにいいようにあしらわれています。ウォンビン、どんぴしゃりのはまり役です。彼の瞳の色に胸の奥を掴まれます。
親子を取り巻く周りの人々も誰ひとり無駄なく、韓国演技人の相変わらずの安定したうまさに見ほれてしまいました。

ポン・ジュノらしくネタバレ厳禁のストーリー展開なので、詳しくは語れないのですが、私は障害のある男の子を育てた同じ母として、痛いほど胸をうたれました。5歳の頃の写真を見ながら、「この頃が一番可愛かった」と知り合いと話す母親を見ながら、そうだよね、ずっと子どもでいてくれたら安心だったよねと共感しきりでした。子どもはいつまでも子どもではいてくれません。精神は子どもでも身体は大人になり、周りの人々の扱いも大人としての扱いになっていきます。悪いことをすれば罰も受けねばなりません。

ウォンビンの透き通るような瞳が忘れられません。そして後半ワンシーンだけ出てくるもう一人の汚れなき瞳に出会った時、私は号泣してしまいました。母なればこその行動は、画面に現れない別のそれぞれの親子の姿を想像させます。どんな子にも親がいて、その親その子なりの愛の形があるのです。

母親の息子を愛する気持ちが、思いがけずも傷つけてしまうもう一つの瞳の力のなさに、切なくてやるせなくて、やりきれなくなってしまいました。

見事にはられた伏線がぴしとはまっていくラストの快感は、ポン・ジュノさすがの一言につきます。「殺人の追憶」「母なる証明」「グエルム 漢江の怪物」「パラサイト」、立て続けの力強い名作の数々に、遅すぎた感さえあるアカデミー賞受賞なのでしょう。
ポン監督、おめでとう。そして監督を支えている多くの韓国映画人たち、本当によかったですね。

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿