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65オヤジのスタイルブック

65才茶々丸のスタイルブック。様々なカルチャーにふれて養ったライフスタイルを紹介

映画 サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ

2021年04月30日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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先日のアカデミー賞2021の受賞作品の中で、Amazonオリジナルとネットフリックスのオリジナル作品が5本受賞しました。最近はネットフリックスオリジナル作品の受賞が際立っていますが、今回もネットフリックスオリジナル作品が4本が受賞、Amazonオリジナル作品が、2017年のマンチェスター・バイ・ザ・シーと2018年のセールスマン以来1本が受賞しています。

今回はアマゾンプライムで視聴可能な音響編集賞に輝いた「サウンド・オブ・メタル」をご紹介します。

 

メタルロックのドラマー、ルーベンは恋人のルーと共にトレラーハウスで生活しながらライブで各地を巡っている。ある日ルーベンの耳がほとんど聞こえなくなってしまいます。医師から回復の見込みがないことを告げられたルーベン。ルーのすすめで、ろう者のコッミュニティーに参加することに、手話を覚えコミュニティーの人々とも心を通わせ始めたルーベンでしたが、音楽への思いを断ち切れず、ある決断をします。

主人公のルーベンを演じるのはヴェノムやナイトクローラーに出演したリズ・アーメッド。ラッパーでもある彼は、薬物依存症で退廃的な役どころがピタリとはまってます。ちなみに主演男優賞にノミネートされています。監督のダリウス・マーダーは、主人公にろう者を選ばなかったのを、ろう者や障がい者を差別的な役どころに当ててきたハリウッドに対するアンチテーゼとして健常者がろう者となった時の苦悩を表現したかったそうです。

全編でルーベンの耳を通じて感じるろう者の世界と健常者の持つ世界を対比しながら、お互いが感じる日常をうまく表現しています。タイトルのサウンド・オブ・メタルのメタルにはメタルロックとは金属音としてのメタルの方が強く印象付けられました。ラストシーンは正にろう者となったルーベンの心の解放につながっているようです。

人間大なり小なり、人生の中で身体的な欠如をもって送っています。それは平等な欠如ではないかとこの映画を通じて感じます。そのことを自覚した時に差別という意識から本来解き放たれるのではないかと思います。


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映画 アンモナイトの目覚め

2021年04月27日 | 【映画・ドラマ・演劇】

ケイト・ウィンスレット&シアーシャ・ローナン共演 、フランシス・リー監督による18世紀にイギリスで実在した女性考古学者をモデルに描かれたラブサスペンス「アンモナイトの目覚め」を鑑賞。

昨日は、アカデミー賞授賞式があり、ノマドランドが下馬評通り作品賞、監督賞、主演女優賞の主要3冠を受賞しました。アジア人初の中国人女性監督クロエ・ジャオの受賞に、助演女優賞ではミナリで韓国人女優ユン・ヨジョンがアジア人初の受賞、コロナ禍でアジア系の人々が差別に苦しむ中で、今回に受賞は一筋の光を与えてくれました。アカデミー賞も白人偏重主義からの脱皮でここ数年で大きく変わりました。ミーツー運動により女性監督や女優の立ち位置も変化し、確実にその地位はステップアップしているように感じます。

今回の映画は、まだ女性に対する差別が根強く残る18世紀のイギリスで当時まだ恐竜の存在が世間に知られてない時代にイクチオサウルスの全身化石を発見した女性古生物学者メアリー・アニングをモデルに描かれたラブ・サスペンスです。

かつて大英博物館に所蔵された歴史的発見の恐竜化石を発見したケイト・ウインスレット演じるメアリー。しかし女性と言う理由で古生物学者としての地位も低く、今は年老いた母の下でお土産用のアンモナイトの化石を採掘しながら生計を立ててます。ある日、化石収集家の夫と共に訪れたシアーシャ・ローナン演じる鬱を患っている妻のシャーロットを留守中に面倒を見てほしいと依頼する。

貧しい生活の糧に仕方なくシャーロットを面倒見ることとなったメアリーだったが、人付き合いを嫌い、社交界にも興味がない彼女がシャーロットの看病を境に密かな感情が芽吹いていきます。

メアリーとシャーロット、性格も環境も異なる二人が徐々に心を通わせながら、愛の炎と進む感情の起伏を世代を代表する二人の女優の圧巻の演技と光を指さないイギリスの海岸と重なり合い美しい情景が流れています。特に男性社会の中で古生物学を生涯に仕事して学び続ける女性の孤独と失望の中で感情を抑え生きる女性学者を演じたケイト・ウインスレットの演技は最高でした。

出会いと別れ、そして再会、そしてラストでメアリーが下した決断には、自らが求めた苦悩の道に対する強い信念を感じるものです。女性はもとより男性にも是非鑑賞てほしい美しくも切ないドラマです。


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映画 ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー

2021年04月15日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回はガリ勉女子高生コンビが繰り広げる青春コメディ「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」です。

この作品、巷の女性映画ファンから、絶大の人気を博していた記憶があってDVDにて遅まきながら鑑賞してみました。監督は、リチャード・ジュエルでも出てた女優オリビエ・ワイルドの長編映画デビュー作品です。

舞台はある高校で、生徒会長をやってるモリーと親友のエミー。この二人成績優秀で高校の模範的な存在。高校生活をただただ勉強だけに励み希望の大学に進学勝ち取っていたのですが、卒業前夜のパーティーに夢中なクラスメートたちが実はエリート大学や有名企業に就職が決定しているのを聞いて、勉強で犠牲にしたきた高校生活を取り戻すためにパーティーで思い出を作ることに。

ただただ、卒業式前夜のパーティ―の顛末を描いている内容なんですが、これがなかなか濃密で、先ずぽっちゃり体型でおしゃべりなモリーと内気で美人なエミーコンビの好対照な姿と漫才的な会話がとにかく面白い。それでいて、クラスメートたちの個性的なキャラクターの隠された真実的な部分もちゃんと描かれていて飽きさせないです。また流れるパーティーチューンの音楽もグッドです。

これは女子受けするはずだわと納得ですが、少々変わった僕のようなおじさんにも受けるわけですから、映画ファンならそれぞれに青春映画を代表作がると思います。僕の中での青春映画ベスト1は何といっても「アメリカングラフィティ」ですが、時代ごとに彩るその世代の青春映画のベスト1のひとつになるでしょう。


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映画 その手に触れるまで

2021年04月13日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は、カンヌ国際映画祭監督賞受賞のダルダンヌ監督によるヒューマンスリラー「その手に触れるまで」です。

今回はベルギー映画をご紹介。ベルギーに住む13歳の少年アソッドはゲーム好きの少年だったが今はイスラムの聖典コーランに夢中になっている。近くの食品店にある2階のモスクで兄と一緒に礼拝に通っているが、学校の女性教師イネスのあいさつの握手を拒否したことで、母親にとがめられ、イスラムの導師の言葉をきっかけにイネスをナイフで刺そうとしたことで少年院にはいってしまいます。

イスラムの教えを信じ、導師の言葉で犯行に及んでしまったアソッド。少年院での農作業を手伝いながらの更生生活の中でも宗教心をたもち続けるアソッド。今回の作品のテーマは少年の純真さがもたらした不幸だ。そしてもう一点は、犯行に及んだきっかけが女性に対するイスラムの教えに起因していること。アソッドは農作業のある出来事をきっかけに再燃してしまうのだが、ラストではアソッドにもたらされた思いもしない救いの手が。

世界三大宗教のキリスト教、仏教、イスラム教。とりわけ近年イスラム教を信仰する人々が増えていると言う。イスラム過激派によるテロによりヨーロッパでは警戒心が強い。特に今回の舞台となったベルギーブリュッセルのモレンベークはテロの拠点となっているそうだ。クリントイーストウッド監督による15時17分パリ行きで映画された事件の犯人もブリュッセルから乗り込んでいる。

しかしながら、イスラム過激派の信仰がもたらした少年犯行と言う表面的なことではなく、今回の作品は信仰心がもたらした盲信がベースになっているように感じる。思想信条は自由ではあるけれど、盲信により得てして人間は良識や常識の範囲から逸脱しがちだ。宗教に限らず、良識の眼を持つことが大切だと思う。


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映画 ノマドランド

2021年04月07日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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フランシス・マクドーマンド主演、新鋭監督クロエ・ジャド監督の現代の遊牧民の人生を描いた「ノマドランド」を鑑賞してきました。

スリービルボードでアカデミー賞主演女優賞を受賞したフランシス・マクドーマンド。その個性的でシリアスな演技は今も強く印象に残ってます。彼女が今度は夫を亡くし車上生活者としてノマド・現代の遊牧民の女性役と知り、その演技に注目して楽しみにしていました。

企業城下町に暮らしていたファーン。リーマンショックによる倒産で住む町と家を失ってしまい。夫の残したバンに想い出の品を積み季節労働の仕事をしながら車上生活者として、放浪の旅を続けています。

職場仲間とも一定の距離をおきながら独り身の生活を楽しんでいたファーンでしたが、あるトラブルがきっかけで誘われていたノマドのキャンプに参加します。そこから新たな旅が始まっていきます。

アメリカらしいロードムービーと思いきや、主人公は貧しい高齢の車上生活者たち。彼らの車は薄汚れた古い車ばかりですが、工夫を凝らしたライフスタイルの縮図のような空間で、大自然を愛し車での旅を楽しむ生活は、お金では得られない魅力があります。そして、主人公のファーンも含め女性たちを中心に描かれているところが新鮮です。作品の原作者のジェシカ・ブルダーも新鋭監督のクロエ・ジャドも女性、ジェンダーが叫ばれていますが、女性らしい視点も作品の肝だと思っています。

ファンを演じたフランシス・マクドーランドは、スリービルボードでの強い女から打って変わり、亡き夫との思い出を胸に抱き自由な生活を楽しみながらも、どこか孤独と不安を抱える物静かな女性を演じています。そんなマクドーランドの違う一面が見えてとても魅力的でした。

ファンを含め、ノマドたちは一人になるとそれぞれの過去を抱えながら自由という名の孤独を楽しんでいるかのようでした。そこには、先々の不安や迎えるだろう死へ恐れなどなく、それぞれの人生の旅路を進んでいるようです。映画を通じて人生の楽しみ方は何かを学べるような作品です。

今までとは、一味も二味もロードムービーを楽しんでみてください。

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映画 星の子

2021年04月05日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は芦田愛菜主演、今村夏子原作の映画「星の子」本編です。

僕の場合は、ほとんど原作を知らず映画を通じて原作を知るパターンが多いのですが、今回も芦田愛菜が6年ぶりの主演で近作のマザーやさよなら渓谷などの大森立嗣監督の作品が好きなこともあり興味深く鑑賞しました。

作品に流れるテーマは家族愛。愛情たっぷりに育てられた芦田演じる中三生のちひろは、病弱だった頃に幼い頃のちひろを治した宗教を信じている両親と暮らしてます。ちひろには姉がいるのですが、そんな両親と距離を置くために家出をし行方不明。親戚の叔父は、ちひろを両親から引き離そうとしています、そんなちひろは、ひそかに恋い焦がれる教師がいますが、教師のあらぬ噂に巻き込まれることに。

家族の日常生活と密接な関係にある、ちひろを治したとされる信仰の水。他人には不可解に見える両親の行動に疑念を持ちながらも、両親の愛に寄り添うちひろ。ちひろの父を永瀬正敏が母を原田知世を演じていて、日常での宗教活動を除けば、どこにでもある、むしろそれ以上の家族愛を感じます。また、ちひろの周りにいる友人たちも、一人の人間として温かく見守っていて好感を持ちました。

この映画は、決してカルト的な宗教に対しての批判ではなく、ちひろの家族の中に流れる深い愛を中心に描かれ星の子のタイトルを象徴的なラストで締めくくっています。


映画ドクター・デスの遺産―BLACK FILE―

2021年04月02日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。久しぶりの今回は綾野剛&北川景子が刑事役でバディとなった「ドクター・デスの遺産―BLACK FILE―」です。

映画ファンには、かなり酷評されている作品ですが、結論から言えばこれはこれでよかったと僕は思ってます。

警視庁捜査一課のナンバーワンコンビ。綾野演じる犬養と北川演じる高千穂刑事は、終末期の患者ばかりが不審な死を遂げる安楽死事件を追う中で、ドクターデスと言われる闇サイトに辿り着きます。患者の家族の証言から元看護士が浮かび上がります。二人を任意で取り調べるも確証を得られず事件は再び闇の中に。そんなとき、腎臓病を患いドナーを待つ犬養の一人娘が何者かに誘拐されます。

今回の作品、安楽死をテーマにしたミステリー小説が原作となっていますが、小説派には原作が踏襲されず安楽死のテーマが薄らいでいるとの批判を受け、映画ファンには、後半の展開は拙速すぎて作品自体が軽くなったとの批判を受けてます。

先ず、綾野剛と北川の刑事コンビのキャスティングで、その批判を捨てるべきだと思います。北川景子は、その美貌ゆえに実力が過小評価され、カメレオン俳優と言われる綾野には役柄において評価の差が激しく出ます。僕はシリアスな演技の綾野が好きで、今回の作品のような娯楽色が強い作品では仕方ないなと思うのです。それは、この世代の役者の宿命みたいなものだと割り切ってます。

今回の作品でもっともすごいなと思ったのは看護師役の木村佳乃。前半から中盤まで暗くて質素な姿にまったく木村佳乃と気づきませんでした。今回の映画でもっとも輝いていたと思います。ここまで書くとネタバレ感がありますが木村だけを観ていた僕にとっては楽しめました。

安楽死を扱った作品は、近年増えてきましたが結論は個々人で違います。ここは、安楽死を利用した猟奇的な殺人とて観るのが今回の映画にはふさわしいかなと思います。


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映画 ミナリ

2021年03月22日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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本年度アカデミー賞ノミネート。スティーブン・ユアン主演、リー・アイザック・チョン監督による話題の韓国映画「ミナリ」を観てきました。

前回のアカデミー賞で旋風を巻き起こし、アジア初の作品賞、監督賞を受賞した韓国映画「半地下の家族」から今回もアカデミー賞有力作品の1本と言われているのが、今回のミナリ。ミナリとはセリの名前で、作品の肝となっています。

舞台は、1980年代のアーカンソー州の高原。韓国移民のジェイコブと妻、二人の子供が農業で成功するのを夢見て引越して来ます。トレーラーハウスと曰く付きの土地で妻のモニカは不満を抱き夫と衝突を繰り返しますが、子供たちの面倒を見てもらうためにモニカの母を向かい入れることで折り合いをつけます。

物語は、夫婦の価値観の違いや見えない差別で構成されています。持病を抱えた息子に口の悪い祖母などによる何気ない日常が描かれているのですが、家族の個性が随所でほのかな輝きがあり家族の会話が楽しい作品です。また、皮肉めいた差別が散りばめられています。そんな中で、唯一何事にも動じない祖母の存在が徐々に大きくなり、思いがけない結末と共に祖母の愛がクローズアップされます。特に祖母と息子のふれ愛が、とても良いです。

作品全体では、半地下の家族のようなユーモアからリアルホラーへと続く衝撃はないものの、大自然を舞台に抒情的な空気が漂い、そこに家族模様がうまく溶け込んで静かな感動を与えてくれました。一言でいえばシンプルなファミリードラマでしょう。


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映画 アウトポスト

2021年03月21日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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アフガンでタリバンに包囲された米軍基地で戦った兵士たちの実話による映画「アウトポスト」を鑑賞してきました。

 

舞台は、2009年のアフガニスタンで陸の孤島ともいえる米軍の前哨基地。四方を険しい山に囲まれ谷底に位置するこの基地の兵士は僅か50人。いつ起こるかもしれないタリバン兵との戦闘に備えながら、米軍の補給経路として重要な基地となっている状況下で300人以上のタリバン兵と僅か50人の兵士だけで戦ったカムデシュの戦いを、ロッド・リー監督は、何と実際にこの戦いを経験した兵士をキャスティングしていて、さらに生き残った兵士の証言を基に再現したリアルミリタリー映画です。

彼らに与えられた安息に時間は、タリバン兵のイスラムの礼拝時間のみ、24時間谷底から銃を構えいつ来るかも知れない攻撃に備えるという緊迫感と死と隣わせの中でジョークを交わしながら終結の日を待つ姿が対照的に描かれていて不謹慎ながら面白い。また、オーランド・ブルーム演じる最初の大尉から3人の大尉が交替し兵士の指揮が変化する様も興味深い内容でした。

そして、何により作品の肝である圧巻の銃撃を中心に繰り広げられる戦闘シーンに兵士たちの人間模様も証言を通じて詳細に描かれて良い作品でした。当然のことながらアメリカ偏重の感はあるけど、あの状況下では戦う選択しかなかったなと感じるし、何より最前線で戦う兵士たち同士の熱い人間関係に感動しました。戦争映画ファンには、必見の映画です。


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映画 カポネ

2021年03月09日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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トム・ハーディ主演、ジョシュ・トランク監督による暗黒街の帝王アル・カポネの晩年を描いた映画「カポネ」を鑑賞。

散々なレビューが並ぶ最悪な作品かなと半ば期待薄で臨んだ本作。史上最高のマフィアのボス、アル・カポネの晩年を描いていて(とは言っても40歳で出所48歳で死亡)物語は、長い服役生活を終えてフロリダの大邸宅に戻るところから始まります。彼の体は梅毒に侵されて排泄もままならい状態でさらに痴ほうと悪夢にうなされる毎日で精神状態は不安定。妻の介護の中で家族や友人たちの介助の中で静かな生活を送っています。

FBIはカポネの隠し財産を探るべく、盗聴とスパイを送り込みます。しかし、財産の隠し場所はカポネの頭の中に。FBIや家族、友人も財産のありかを探り出そうと思案を重ねます。果たして彼は本当に狂ってしまいたのか、果たして財産は見つかるのか。映画の本質はそこにあるのか。不明のままに、トム・ハーディ演じるカポネの狂気がクローズアップされ、悪事を重ね栄華を極めた男の末路の醜態がこれでもかとばかりに晒されていく、まさに下衆の極み的雰囲気が醸し出されいています。

たぶん、辛辣なレビューも見たくないものを見せられた気分によるとところが多いのではと思いますが、ここまで徹底的に醜態を描き、狂気の沙汰を見せつけられると僕は、人間の性みたいなものを感じてむしろ作品に対しては好感を持ちました。

悪のヒーローは、誰もが、いつの時代も生き急ぐような潔良ささえも感じる死を期待するのではないかと思います。しかし、アル・カポネの晩年はそうではなかった。今まで描かれなかったのは悪のヒーローとしての存在感の強さゆえ、誰もが描かなかった悪の最後の姿をトランク監督が描いたところに価値があります。そんなカポネの人生にも一筋の光を示しています。ラストシーンはそのことを静かに語っています。


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映画 だましだまされアート界:贋作を巡る物語

2021年03月05日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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先日、Netflixでアート関連の面白いドキュメンタリー映画を視聴しましたのでご紹介します。

タイトルは「だましだまされアート界:贋作を巡る物語」アメリカで165年の歴史を持つ最も古い老舗画廊ノードラー商会で起きた贋作詐欺事件の顛末を関係者の証言を通して描いたドキュメンタリー作品です。

事の顛末を簡単に説明するとロングアイランドの女性画商のロサレスがアメリカ抽象絵画の巨匠マーク・ロスコ、ジャクソン・ポロック、ロバート・マザーウエルなどの絵画をノードラー画廊に持ち込んだことに端を発します。画廊主の女性アン・フリードマンは、1994年から2011年までに販売したが、実は中国系画家のペイ=シェイ・キアンが制作し、ロサレスとその恋人のスペインの画商ホセが共謀して行ったことがわかり、ノードラー画廊とフリードマンを相手に訴訟にまで発展した事件です。

世界中では贋作事件は数多くありますが、今回の事件は、他の贋作事件とは意味合いが異なります。現在では科学的鑑定が真贋の大きな根拠となっていますが、アン・フリードマンは元より美術鑑定人の真贋が自らの目を信じている点。そして、抽象絵画という歴史が浅く真贋の論証が曖昧である点です。

アン・フリードマンと鑑定人が騙される最大の要因が、鑑定の根拠の一つである来歴。ロサレスとホセは、来歴を偽装し、さもありげな嘘のストーリーをでっち上げるのですが、それを信じてしまったフリードマンと関係者が滑稽に思えます。そこには、自身のキャリアによる信じ込みがあったのです。

アン・フリードマンは、あくまでも被害者だと主張していますが、三件の訴訟が示談、和解となっています。彼女が共犯者であったかは闇の中です。ノードラー画廊は、この事件を機に閉店していますが、晩年の老舗画廊は、ハマー財団が経営権を持ち売上を小遣いの道具にされていました。結局は金に目がくらんだ連中の体のいいビジネスにでしかなかったのでしょう。

結局、逮捕され刑に服したのは名もなき女画商?ロサレスのみ。贋作師のペイは、中国に逃亡し、ホセは健康上の理由でスペインに。アメリカには引き渡されず、アンは現在も美術商として現役。事件の真相は闇の中に葬り去れました。

おそらく20世紀初頭以前の美術品の鑑定は、いわゆる美術鑑定人による真贋は難しくなってくると思います。これからは、科学的鑑定が主流となってくると思いますが、新しく発見された絵画の真贋は100%とは言えなくなると思います。それこそ信じるか信じないかは、あなた次第なんてことになってくるんではないかと思ってます。

だましだまされアート界: 贋作をめぐる物語 | Netflix


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映画 存在のない子供たち

2021年02月22日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は2019年日本公開の中東レバノン出身の女性監督ナディーン・ラバキー監督による子供が両親を告訴に至る過程を描いた社会派ヒューマンドラマ「存在のない子供たち」です。

今回の作品は、2018年の第71回カンヌ国際映画祭で審査員賞とエキュメニカル審査員賞を受賞し、日本でもかなり評価の高い作品でした。劇場での鑑賞を逃したのでDVDの発売を心待ちにしながら、なかなかレンタルできない状態で現在に至ってます。

物語は、中東レバノンの貧困地域で戸籍もなく教育を受けられず路上で飲料を売る12歳の少年ゼインが、裁判所で両親を訴える場面からスタートします。ゼインは、妹が強制的に結婚させられたことで反発し家出をしていたのですが、そこで知り合ったエチオピア移民の女性の子供の面倒を見ることに。その後にある出来事をきっかけに事件を起こし留置されてしまいます。

12歳のゼインの犯行と両親への訴訟に至る過程を克明に描きながら、中東地域が抱える貧困問題を女性監督ならではの視点で抉り出していきます。そこには、性差別や宗教的慣習などが絡み、解決には困難を極めるものですが、彼女の勇気ある発信力に感銘を受けました。

主人公のゼインや貧困をあえぐ子供たちは、それぞれに役柄と同じ境遇を経験している素人たち。絶望的な境遇の中で、懸命に生きる子供たちの姿にはどこか躍動感があり、ゼインの覚めた眼の奥には、大切の人を守ろうと勇気に満ち満ちています。ゼインの行動は、明日の見えない子供たちに希望の灯を点火しているように感じました。

出生の証拠もない存在のない子供たち。子供たちの求めるものは、ただ一つ自分に与えられる愛だけが確かなものなのかもしれません。


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映画 イマジネーションゲーム

2021年02月21日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は、久本雅美&元AKB板野友美W主演の「イマジネーションゲーム」です。

2018年公開の本作。テレビの司会者としても根強い人気を持つ久本雅美。過去にドラマ出演昨やワハハ本舗の舞台を観ていることもあり、2018年当時観てみようと思ってましたが何せ劇場公開が少なく見逃していたところ偶然Amazonプライムに出ていたので鑑賞して観ました。

今回の作品は、大手ゼネコン勤務のエリートお局キャリアウーマンの久本演じる早見真紀子と家に閉じこもって生活する板野演じる池内葵が主人公。早見は、後輩OLをいびりながらもテキパキと仕事おをこなす女性部長、池内は、エリートサラリーマンの夫と二人に暮らしで、夫の食事と家事をする生活を送るだけで冷え切った夫婦生活を送る主婦です。コメディーの分野で活躍する久本のシリアスな演技が際立ち、あらためて彼女の演技力に好感を持ちました。

しかし、早見は動画サイトで池内は闇サイトでそれぞれカリスマ天使の裏の顔を持っている。二人の裏の顔がばれることで事態が急変することでドタバタ劇が面白かったのですが、後半は徐々にトーンダウンしていったのが少々残念でしたが、例えば田中裕子のように、かつての美人女優が、年を重ねることで違う魅力を出しているように久本にはシリアスな演技で新たな魅力を発揮してほしいなと思ってます。


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映画 すばらしき世界

2021年02月18日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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役所広司主演、西川美和監督の最新作「すばらしき世界」を鑑賞。

西川美和監督は、ゆれる、夢見るふたり、ディアドクターなど、人間の善悪に鋭く迫る女性監督として人気の高く僕も好きな監督の一人です。彼女が描く主人公は、表面的には悪人の主人公が多いのですが、そんな主人公が善なる人々により再生していくドラマが好きで、そのリアリティある演出が胸に迫る作品が多いです。

今回は、西川作品で初出演となった役所広司とタッグを組んで、直木賞作家の佐木隆三の実在の人物をモデルにした「身分帳」に着想を得て現在に日本社会の中で生きる主人公と彼を支える人々との交流の中で新たな人生を歩む再生のドラマを描いています。

物語は、殺人を犯し13年の刑期を終えた元やくざの三上。13年の刑務所生活から自立した新生活を送ろうとする三上は社会になじめず職に就けずまま。そんな時に若手テレビディレクター津乃田から、生き別れた母親の手がかりとしてドキュメンタリー取材を受けることになります。再生のドラマを描こうと意気込んでいた津乃田でしたが、三上の行動に翻弄され続けます。

己の正義と信念を貫く余り様々なトラブルを巻き起こす三上を今までにない役所広司の役柄とは違う鬼気迫る演技。若手ディレクタ役の仲野太賀やスーパーの店長役の六角精児や身元引受人の弁護士夫婦役の橋爪功、梶芽衣子、公務員役の北村有起哉など脇を固める新旧の役者陣が三上を支えながら時に激しく、時に優しく包み込むように接し人のつながりを強く感じる内容でした。

日常の生活の中で繰り広げられる紆余曲折の時間が目まぐるしく続き、最後にグッと胸に迫る結末に静かな余韻を感じました。原作のすばらしさを西川美和が現代によみがえらせた「すばらしき世界」に誰もが感動刷ると思います。本年初頭を飾りつつ本年度を代表する名作です。

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映画 KCIA 南山の部長たち

2021年02月16日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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イ・ビョンホン主演の1979年の韓国大統領暗殺に絡む実話を基に描かれたミステリー作品「KCIA 南山の部長たち」を鑑賞しました。

1979年の朴正煕大統領が中央情報部部長キム・ジェギュに暗殺された実話を基にした映画化された本作。キム部長をイ・ビョホンが演じています。軍事政権下の韓国で大統領直属の諜報機関KCIAは、周知のことと思います。当時の韓国の民主化の波の中で、前部長がアメリカに亡命し、大統領の腐敗政治を弾劾したことで巻き起こる騒動と密室の中で実行された暗殺までを描いていて興味深く鑑賞しました。

キム部長を演じたイ・ビョンホンは、今までの彼のイメージと異なり、大統領への忠誠と国家に対する忠誠の狭間でもがき苦悩する姿を演じています。日本では、実話に基づく作品として紹介されていますが、フィクションを織り交ぜて描かれているそうで、文政権下での公開とあって当時とは異なる見解があるのではと思います。そのことは、さておきキム部長が大統領暗殺に至る過程は詳細に描かれ、彼の主張するところはよく理解できました。

今回の作品を鑑賞するまでに、当時の時代背景を基に描かれた「タクシー運転手約束は海を越えて」や「はちどり」を鑑賞して民主化デモによる光州事件や軍事政権下での経済発展など、韓国が置かれた状況も容易に理解できましたので、今回の作品もスーと入りました。また、まだ観てませんが「1987、ある闘いの真実」も鑑賞しさらなる理解を深めてみたいと思ってます。


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