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65オヤジのスタイルブック

65才茶々丸のスタイルブック。様々なカルチャーにふれて養ったライフスタイルを紹介

映画 サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)

2021年08月31日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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1969年の夏、ハーレムで行われたもうひとつのウッドストックがあった。今回の映画は日の目を観なかったブラックミュージックに燦然と輝くフェスティバルの全貌を蘇らせた「サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)」を観てきましたのでご紹介します。

 

1969年のアメリカは公民権運動の渦の中でカウンターカルチャー史に輝くウッドストックフェスティバルが開催された年です。フェスティバル未経験の若者たちのよりニューヨーク郊外で開催されたフェスティバルがジャニス・ジョプリンやジミ・ヘンドリックスなど当時の人気ミュージシャンの参加と無料コンサートに変更したことで全米各地から60万人の若者が集まり、今も伝説のフェスティバルとして語り継がれています。

当時はキング牧師やマルコムXなどによる公民権運動に加え、彼らを支持したケネディー大統領の暗殺、弟のロバートの暗殺事件に加えベトナム戦争が勃発するなど権力との対峙が激しい時代でした。そうした時代背景があってウッドストックは、当初の予想を超えるものへと発展したことは明らかです。

ウッドストックが行われた1969年の夏にウッドストックより先に、そして人種差別撤廃の理念のもとに行われたブラックミュージックの祭典がハーレムの野外公園で行わました。ハーレム・カルチュアル・フェスティバルと題した祭典は6月29日から8月24日まの6回の日曜日に無料開催され延べ30万人を数えるフェスティバルでしたが、黒人差別が色濃く残る時代にあってウッドストックの陰に隠れ、主催者であるハル・トゥルティンの自宅に記録フィルムは眠ってしまいます。

今回の映画は、その記録フィルムを基に当時の出演者や観客の証言を加えて構成され、ヒップホップ界の重鎮、クエストラブが監督しアメリカで重要なフィルムフェスティバル「サンダンス映画祭」で上映されるや観客賞、審査員賞大賞を受賞しています。

出演者は若き日のスティーヴィー・ワンダー、ブルースの王様、B.B.キング、日本でもおなじみの黒人ポップグループのザ・フィフス・ディメンション、ゴスペルの女王スマヘリア・ジャクソンにステイプル・シンガーズ、、モータウンのグラディス・ナイト・アンド・ザ・ピップスにウッドストックに出演した黒人&白人混合バンド、スライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーン、マルコムXとも親交があった黒人女性運動家でもありブラックミュージックのアイコンでもあったニーナ・シモンなど、ゴスペル、ブルース、ソウル、アフリカンミュージックなどブラックミュージックの歴史と今が集結した夢のような祭典です。今回ドルビーシアターで鑑賞しましたが、映像フィルムの美しさと音質は、ウッドストックの比ではありません。貴重なフィルムを保管しいつか世に出ることを願ったトゥルティンに敬意を抱きます。

そして、膨大な記録フィルムは当時のブラックカルチャーを反映し歴史の証言となっています。そこにはサブタイトルにあるように革命がテレビ放映されなかった時代を反映してます。監督であるクエストラブは現在のアメリカの黒人に対する差別と同じ空気を感じたそうで、このドキュメンタリーが高く評価される一因でもあります。

この映画は黒人の暗黒史に一筋の光明となる重要なドキュメンタリー映画となるでしょう。その音楽と共にソウル・魂をぜひ感じてください。

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グランマ・モーゼス展 名古屋市美術館

2021年08月28日 | 【美術鑑賞・イベント】
 

コロナ禍の夏休みに楽しめる美術展2回目は名古屋市美術館で9月5日まで開催中のグランマ・モーゼス展です。
 
アメリカでグランマ・モーゼス(モーゼスおばあさん)の愛称で親しまれる国民的画家で、名前をアンナ・ロバートソン・モーゼスと言い80歳の時に絵を描き始め1961年に101歳でこの世を去るまで、ニューヨーク郊外の農村風景を描き続けた画家です。今回の展覧会はモーゼスの生誕150周年を記念して企画されました。
 
モーゼスは第二次大戦の時代の戦前、戦中、戦後を生き抜いた画家で、その作風は丘から農村の風景を描いたり、農作業や記念日の祝典を描いたりと自然の風景の中に人物や住まいなどを細かく描いたパノラマ的な作品が特徴です。どこか15世紀の西洋美術史の中で輝きを放った北方ルネサンスの画家、ブリューゲルの世界を想起させてくれ作品に描かれる人々の物語を感じさせてくれます。
 
また彼女は独学で油絵を描いたことから、アンリ・ルソーなどと並びピカソが称賛するナイーブ派・素朴派の画家として有名です。日本でもルソー作品と共に素朴派の作品を収集するハーモ美術館世田谷美術館などにも所蔵されいますが、日本ではあまり知られていない画家だと思います。
 
今回の展覧会は、油絵を描く前の刺繍作品からリュウマチで手が不自由になったことを機に描き80歳から描き続けた油彩画にモーゼスゆかりの貴重品や資料などを含め100点余りが展示されるモーゼスの大回顧展ともいえます。自らの感性や意志で誰にも影響されることなく自由に描かれる作品は、素直にモーゼスが愛した暮らしの中に入り込み、コロナ禍ですさんだ気持ちを癒してくれることと思います。
 
展覧会は、9月5日まで名古屋市美術館で9月18日から静岡市美術館で開催されます。アメリカ国民に愛されたグランマ・モーゼスの世界をぜひ楽しんでください。

ぼくおばけのマール絵本原画展 一宮市三岸節子記念美術館

2021年08月27日 | 【美術鑑賞・イベント】
 
コロナ禍の夏休みもあとわずかになりました。なかなかお出かけもままならない状況ですが、密にならないイベントなどはコロナ禍の中でも心の癒しになるのではと思ってます。
メディアでも紹介されている会期まであと僅かの美術展を2回にわたって紹介したいと思います。
 
なかいれいさんの絵とけーたろうさんのストーリーと文による絵本「おばけのマール」は三岸節子の夫で洋画家の三岸好太郎の故郷、札幌を舞台におばけのマールが好奇心いっぱいに駆け回るお話です。
 
札幌の子供たちには絶大の人気を誇るマールが昨年15周年を迎えて、今回北海道から一宮にやってきました。実はマールシリーズの最新刊「おばけのマールとモーニングのあとで」はここ一宮市が舞台となっています。地元や愛知の人ならおわかりかと思いますが、タイトルのモーニングは喫茶店文化の発信地のドリンクに無料で付くモーニングサービスをさしています。
今回の展覧会では、最新刊の原画を初公開、さらにシリーズの名場面を中心に原画や貴重な資料が公開されています。
 
しかもほぼ全部の原画が写真撮影ができ、子供たちが遊べるスペースが設けられていて親子で楽しめる企画になっています。夏休みの思い出にぜひ絵本展に訪れてみてはどうしょう。



 

映画 孤狼の血 LEVEL2

2021年08月25日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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白石和彌監督、松坂桃李&鈴木亮平共演のヤクザ映画「孤狼の血 LEVEL2」を鑑賞してきました。

先ずは観てる人も観てない人も、前作の弧狼の血のおさらいをしたいと思います。

舞台は昭和63年の広島。呉原市(架空の町・呉市がロケ地)では五十子会系加古村組と尾谷組が勢力争いを繰り広げる中で、役所広司演じるマル暴刑事の大上の元に松坂桃李演じる新米刑事日岡が配属されます。実は日岡は暴力団との癒着の噂がある大上の内偵調査のために送り込まれた広島県警のスパイだったのですが、大上はスパイと知りながら、日岡と組むことで大上の後継者に仕立て上げ大上の死をきっかけに尾谷組若頭の江口洋介演じる一ノ瀬が五十子会会長を殺害すると企てを日岡が立てたことで大上の後を引く継ぐことに。

今回の続編では、大上の後釜に座った日岡が自らの工作により手打ちとなった加古村組を継いだ五十子会と尾谷組でしたが、鈴木亮平演じる五十子会の組員上林の出所をきっかけに、上林と手下によるある殺害事件により両者の秩序が崩れ、日岡が追い積まれると言う内容です。

前作も熱気がムンムンするヤクザ映画の醍醐味を感じたが、今回は鈴木亮平役のムショ帰りの上林の狂気が爆裂してとにかくエグい。おそらく、こんな亮平誰もみたことないと思います。主役の松坂桃李演じる日岡をはじめ全ての役者が鈴木の悪の演技に染められた感じがしました。作品もバイオレンスと共に人間の業や情念みたいなものがスクリーンに叩きつけられた感じがして続編としては前作を超えた感じがします。

そして、もうひとつの見どころは日岡を取り巻く因縁がおもしろい。残忍な上林は前作で一ノ瀬に殺害された五十子会会長の敵討ち以外は眼中になく彼の残忍さを作りあげた過去や日岡が上林の元に送り込んだ村上虹郎演じ宇るチンタが上林の恐怖と日岡との信頼感の狭間で次第に崩壊していく様や日岡を息子のように慕う中村梅雀演じる定年近い元公安の相棒刑事瀬島との関係なども見どころのひとつです。

白石監督は、東映ヤクザ映画「仁義なき戦い」シリーズのオマージュとしてこの作品を作っているようですが、日本のやくざ映画に影響された、香港や韓国のノワール作品とは異なる日本のやくざ映画でしか作れない登場人物すべてに人情味も加えたジャパニーズノワールを作り上げたような感じがします。


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映画 佐々木、イン、マイマイン

2021年08月18日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は、内山拓也監督、藤原季節主演の青春映画グラフィティ「佐々木、イン、マイマイン」です。

今回の作品は、劇場で目に留まったのですが見逃した作品で、今回DVD化で鑑賞しました。東京藝大卒の人気ロックバンド「King Gnu」や平井堅のPVを手掛けた内山拓也監督で主演はドラマ「監察医・朝顔」でも監査官役でレギュラー出演していた藤原季節が売れない役者石井悠二を務めています。他にも悠二の後輩役者に村上虹郎に、彼を取り巻き仲間たちなど個性的な若手俳優が顔を揃えています。また、King Gunのボーカル井口理もチョイ役で出たりしてます。

物語は、売れない役者の悠ニは同棲相手ともうまくいかず、アルバイトで生計を立てる日々。そんな時にバイト先で高校時代の友人と多田と出会いクラス一のずば抜けた個性派だった佐々木の話になります。実は悠二は佐々木のススメで役者を志すのですが、後輩の出演する舞台に誘われ稽古に励む中で、突然佐々木から電話がかかり、現在と過去の佐々木や彼の仲間たちの思い出がリンクしながら進んでいきます。

クールで物静かな悠二とは対照的な制御不能で予想外な行動を起こす佐々木の異なる個性の対比がとても面白く、佐々木の境遇と共にその言動がシンプルなのに哲学的で佐々木の存在に釘付けなりました。そして仲間たちの心に深く刻まれる展開が、ただの青春映画とは違う強烈な印象がありました。

佐々木を中心にした仲間たちの高校時代の疾走感と卒業後の悠二と佐々木を中心にした焦燥感が言葉や行動の中に見事に表現され、圧巻のラストに度肝を抜かれました。間違いなく日本を代表する青春映画の一本だと思います。

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映画 あの頃。

2021年08月16日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は松坂桃李がオタク青年を演じたコミカル青春映画「あの頃。」です。

 

本作は今泉力哉監督によるもので成田凌と岸井ゆきの主演の「愛がなんだ」がとても良かったので今回DVDにて視聴することに。

松浦亜弥のMVを観てハロプロのアイドルにはまってしまった主人公劔とハロプロ研究会的な自主イベントを主催する仲間たちの交流と友情を描いたいるのですが、松坂を除けば超個性的な俳優陣にお笑い芸人のコカドケンタロウを加えた仲間たちのハロプロ愛と微妙で奇妙な男たちの友情がコミカルに描かれています。

レビューでは内容の割には長いとの批判もありますが、僕はおもしろく観れました。僕自身は中学生のほんの一時期にアイドルへの憧れがありましたが、当時は親衛隊の存在はごく限られたメンバーで構成されていて特別な存在でした。

現在のアイドルはモーニング娘。の誕生によるその後のAKBへと続くアイドルの作られ方につながっていくのですが、かつての親衛隊とは違うオタクを突き詰めたオタク道の世界が作られています。そんな一ページをこの作品では描かれています。

そして、もうひとつのテーマは仲間の死に向かい合うこと。松坂演じる主人公と同じくらい強いインパクトを見せたのは仲野太賀演じるコズミン。最近とみに演技に深みが増してきた仲野が仲間たちの中で最も自己中心的で、他のオタクとは違うアイドルの幅広さとスケベさが際立っていて中盤から後半に向かい、映画の主人公は彼になっていきます。

そこから男たちの特殊な人間関係がなぜか心を揺さぶってきました。何かに真剣に向かう青春がそこにあります。


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映画 楽園の夜 Netflix

2021年08月03日 | 【映画・ドラマ・演劇】

今回はNetflixのおすすめ映画をご紹介します。今回は、パク・フンジョン監督による韓国ノワール「楽園の夜」です。

Netflix

アジアのノワール映画は香港から始まり韓国へと移行。今ではアジアノワールの最高峰としての地位を韓国ノワールを確立しているように思います。そこには、韓国の歴史と文化が深く関わっているからではないでしょうか。今回の楽園の夜は「新しき世界」「The Witch 魔女」のパク・フンジョン監督の手によるもので、2020年ヴェネツア映画祭に正式出品されています。作品の雰囲気は北野武作品の雰囲気を漂いますが、壮絶かつ哀愁を帯びたノワール作品の特徴をうまく捉えています。

暴力団構成員テグは、姉と姪を殺された報復に敵対組織のボスを襲撃し、組織の指示で済州島に住むある家族の元に身を隠す。身を隠した家族である女性ジョヨンと出会い束の間の休息を得ていたが、敵対組織の追手が迫ってくるというもの。

血で血を染める報復シーンは、目をつむるほどの残忍なシーンの連続。そして、信頼していた組織のボスの裏切りと謀略により、身を隠す家族にも魔の手が。練られたシナリオはオーソドックスですが、そこがノワール作品とよく作られてます。構成員をテグを演じたオム・テグの鍛え抜かれた体に彫られた入れ墨、哀愁を帯びた表情などヤクザの風貌は、どこか日本と重なります。

今回の見せ所は、なんといってもドラマ「ヴィンチェンツォ」でヒロインを演じたチョン・ヨビン。ドラマと違い寡黙でつらい過去を持つ女性でその役割がとてもクールです。クライマックスで主役が入れ替わるところもおもしろい。クライマックスの壮絶シーンは圧巻です。

Netflixには、韓国ノワールの作品は見逃せない作品が数多くあるので今後もご紹介したいと思います。


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