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65オヤジのスタイルブック

65才茶々丸のスタイルブック。様々なカルチャーにふれて養ったライフスタイルを紹介

山梨•小淵沢アート旅1 清春芸術村

2023年04月29日 | 【町歩き・旅】
 
先日、ゴールデンウイークを避けて恒例の車中泊ひとりアート旅に出かけました。今回は山梨県の小淵沢周辺の三つの美術館を巡りましたので紹介します。
 
土曜日の夜に出発して、下道と高速を利用して深夜に伊那市にある道の駅南アルプスむらに到着、ここは幹線道路から少し離れた場所で車も少なく静かに眠りにつき翌朝は8時にオープンのパン屋さんで焼き立てメロンパン(クロワッサンが名物らしいですがまだ出来上がってなく残念)をかじりながら、最初の目的地、清春芸術村に。
 
清春芸術村は、一度は行ってみたいお勧めの美術館。創立者の吉井長三氏が、小林秀雄、白洲雅子、東山魁夷夫妻などと桜の咲く春に訪れその美しさに魅了され1980年にアトリエをオープン、その後にパリの集合アトリエを模したラ・リューシュを建設し、当地に様々な芸術の館を建設していきます。
 

1900年のパリ万博にワイン館として建てられたラ・リューシュはシャガールやスーチンなど20世紀の巨匠たちのアトリエ兼住居で同じ設計で建てられた芸術村の拠点となっています。


エッフェル塔完成100周年を記念してフランスより移設されたエッフェル塔の階段とセザールによるエッフェル像


地上4メートルの高さにある茶室「徹」は建築史家・藤森照伸氏設計、赤瀬川原平や南伸坊などが建築に携わっています。



安藤忠雄設計の光の美術館は自然光をいかしクラーベの作品や現代美術家の作品を展示


20世紀最高の宗教画家ジョルジョ・ルオーを記念して作られたルオー礼拝堂、入口上部の壁面を飾るルオーの宗教画や制作されたステンドグラスに祭壇背後の壁にある17世紀のキリスト像はルオーの彩色によるもの。建築設計は谷口吉生。


森の中に佇む平屋の建物は梅原龍三郎のアトリエを移築したもので愛用のイーゼルや画材、未完の油絵が展示されています。

後方にある清春白樺美術館は、白樺派の作家たちの作品を展示。親交のあった吉井長三氏が武者小路実篤や志賀直哉などが建設を夢みた美術館を谷口吉生の設計で実現したもの。
一面が芝生の広場や白樺の森など自然と現代建築が一体となる空間が心地よい。


白樺図書館は雑誌「白樺」の復刻版や白樺派ゆかりの文学や美術書などの資料を保管している。谷口俊太郎氏が図書館長を務めています。(現在は非公開)
 
季節の移り変わりと共に彩を変える清春芸術村、パリのエスプリや日本の近代芸術に現代美術が混然一体となった素晴らしい芸術空間です。山梨を訪れる際には、ぜひ訪れてほしい芸術の村です。


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映画 丘の上の本屋さん

2023年04月24日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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本日の映画レビューは、黒柳徹子さんのナレーションCMでも話題のイタリア映画「丘の上の本屋さん」です。

今回の映画は、イタリアの最も美しい村を舞台に、古書店を営む老店主とアフリカ系移民の少年の本を通して心の交流を描いたドラマです。本が好きだけど買うことができない少年に店主は読書感想を条件に本を貸し出していきます。最初は店の前に置かれた漫画に始まり、会話の中で店主から彼が興味を抱く本を進めていきます。物語は書店を訪れたお客の本にまつわるサイドストーリー加わっていますが主題は二人の交流です。

最後に少年に渡される本でなるほどそう言う意味だったかと、誰もがわかる優等生的映画でしたが、本や映画の素晴らしをシンプルに伝えるには最適な映画といえます。この作品ユニセフが推薦、文部科学省特別選定となっていますので、本好きの人には少し物足りないかもしれません。本が好きで素直に映画が観れる人にはおすすめの映画です。


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映画 ザ・ホエール

2023年04月17日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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本日の映画レビューはブレンダン・フレイザーがアカデミー賞主演男優賞に輝いた「ザ・ホエール」です。

ハムナプトラで有名なブレンダン・ジョンソンがカムバックして挑んだ映画が今回の作品、特殊メイクにより体重272キロの孤独な男を演じ、オスカーに輝きました。ちなみにメイクアップ・ヘアメイク部門でもオスカーを獲得しています。監督はダーレン・アロノフスキー、レスラーやブラックスワン、マザーなどの映画で知られています。この監督、とにかく主人公をいたぶることが多いです。今回の作品も精神的にも肉体的にかなりやられてます。ただ、今回は少し希望がもてるものでした。

物語は大学講師の引きこもりの男チャーリー。重度の肥満を抱える彼は自らの姿を隠しながらリモートで教えています。余命僅かであることを悟った彼は、長年会うことが出来なかったひとり娘への絆を取り戻そうとすします。

映画はチャーリーが生活の中心となる居間と寝室だけで進んでいきます。登場する人物も介護をする親友の女性リズ、娘エリーに妻、ある宗教団体の宣教師のトーマスとごくごく少ない人々と進んでいくのですが、登場人物が伏線となってチャーリーが現在のような生活となった事実と真実が明らかになっていきます。

現在の進んだ技術によって作られたチャーリーの肉体ですが、作られたものとは思えない造形とブレンダン・ジョンソンの生身のような演技が輝きを放ってます。また、介護士の女性を演じたホン・チャウの演技も個人的にはオスカーに値するものでした。また、根底に流れる思想的な背景と文学的な要素を取り入れた演出もとても素晴らしいです。

余談になりますが、今回のアカデミー賞、エブエブの独壇場的な結果でしたが、今回のブレンダン・ジョンソンの主演男優賞は納得できアジア旋風の中での獲得に納得できる結果でした。また、後には主演女優賞にノミネートされているケイト・ブランシェット主演のターが控えていますのでこちらの方も楽しみにしています。

ぜひ、エブエブとは違う骨太の舞台劇ともいえる「ザ・ホエール」観てない人はぜひ鑑賞ください。


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重要文化財の秘密 東京国立近代美術館

2023年04月06日 | 【美術鑑賞・イベント】

東京アートひとり旅の最終レビューは、東京国立近代美術館70周年記念展「重要文化財の秘密」です。

 

今回の展覧会は、近代美術の重要文化財68点のうち51点が全国から集結したとても価値のある展覧会です。なぜ価値があるかと言うと重要文化財作品保護の観点から公開が限られているからです。さらにこれらの第一級の美術品が一堂に介することはまず難しいからです。そして、ここ東京国立近代美術館は近代美術の重要文化財の大半を所蔵しているからこそ今回の展覧会が実現したと言えます。

日本の美術史において近代美術は分岐点であり新しい芸術のスタート地点ともいえます。現在の日本の芸術の革新の源は近代美術から始まったと言っても過言ではないと思います。また、今日の洋画、日本画、工芸の世界においても新しい潮流であり、当時の美術界においては問題作と言える作品が数多く存在します。

たとえば洋画作品で初の指定となった高橋由一の「鮭」は写実表現の傑作でありその質感を表現するために切り取られた皮の脂との対比で表されたいわれています。また、後期の展示となりますが菱田春草の「黒き猫」は文展の審査員を委嘱された春草が制作期間5日間でありながら春草の独自の表現方法が散りばめられています。

また、関東大震災の潜り抜け100年の経過でありながら見事な保存状態と水墨画の傑作である大絵巻である横山大観の「生々流転」や長く行方が分からず昨年新たに重要文化財となった鏑木清方の「築地明石町」の美人画など枚挙にいとまがないです。

現在では何か「現代美術」だけが革新的なもののように思われがちで、難解な芸術表現や意味不明な作風に目を向けがちな昨今ですが、近代美術における重要文化財の革新性は観る人を容易く理解でき、さらに深く芸術への感動を誘うと思います。

会期は5月14日まで(菱田春草の「黒き猫」は5月9日から14日まで)まだ一か月余りと余裕があります。美術ファンなら見逃せない展覧会ですのでぜひご鑑賞ください。


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佐伯祐三 ―自画像としての風景展 東京ステーションギャラリ

2023年04月04日 | 【美術鑑賞・イベント】

 

 

佐伯祐三 自画像としての風景 | レポート | アイエム[インターネットミュージアム]

東京アートひとり旅での今回の展覧会レビューは東京ステーションギャラリー(4月15日から大阪中之島美術館)「佐伯祐三 ―自画像としての風景」です。

佐伯祐三は30才でパリで死んだ近代洋画家のスターして知られてますが、その画業は僅か10年余り戦争中にほとんどの作品を焼失し、現存する作品も100点余りと極めて少ない画家です。また、本格的な活動は2回のパリ遊学の4年余りとなっています。

今回の展覧会は、自画像としての風景を題し中之島美術館の作品を50点を中心に東京藝大時代の卒業作品やが学生時代の自画像から始まり、2度のパリ遊学時代の内外の風景作品に郵便配達夫やロシアの少女などの人物など彼の画業のすべてを網羅した展覧会です。

藤島武二に師事していた頃の印象派の影響漂う作品やパリ時代にブラマンクから「このアカデミックな!」と批判されたことで荒々しい筆さばきとデフォルメされたパリの建物など明らかにブラマンクの影響が色濃く残るパリの街角の風景画、ユトリロの影響を色濃く残す後年の風景作品など、独自の絵画世界を見出だそうと苦悩する姿がキャンバスの投影されいるように感じます。

しかしながら佐伯祐三が100年にも及び常に評価され続けているのは、著名な画家たちの影響を常に受けながらも、その向学心により佐伯スタイルとも言う絵画世界が確たるものとして存在しているからに違いないです。

偶然のタイミングで28歳にこの世を去ったエゴン・シーレの展覧会と本展との出会いを思うと、娘の死と共に妻にも看取られず一人孤独に死んでいった佐伯祐三、決して幸せな時間は多くなかったとは言え夭逝の画家の運命を背負い後世の人々に感動を与え続けていく存在であると感じます。


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レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才 東京都美術館

2023年04月01日 | 【美術鑑賞・イベント】

レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才|イベントのチケット ローチケ[ローソンチケット]

先月の3月21日に東京にアートひとり旅に出かけてきました。展覧会を三カ所巡ってきましたので順に展覧会レビューをしたいと思います。先ずは、今回の最優先美術展の4月9日まで東京都美術館で開催の「レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才」です。

エゴン・シーレと言えば、クリムトと並ぶウイーン世紀末の画家です。クリムトとは師弟関係にありクリムトがその才能を高く評価していましたが、28歳の若さでスペイン風邪によりこの世を去ります。今回の展覧会は日本での展覧会史上最大のエゴン・シーレ展でレオポルド美術館が誇るシーレ最大のコレクションを中心に展示されています。

展覧会は、シーレ初期の写実的な作風から始まり、ウイーン分離派時代、表現主義へと移行し新しい表現へと進みながらも、病による突如終焉を迎える彼の芸術へのメッセージと共に構成されています。またクリムトやウイーン分離派の画家や表現主義の周辺作家などの作品を多数展示されています。

観る者に問いかけてくるような自画像、生と死が共存する世界、微笑むことのない女性像、不安定な構図が印象的な静物や風景画など多彩な作品の中にどこか孤独を感じる哲学的な表現は、どの作品も強い存在感を持っています。

レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才 | 東京都美術館 | 美術館・展覧会情報サイト アートアジェンダ レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才 | 東京都美術館 | 美術館・展覧会情報サイト アートアジェンダ

シーレと言えば妖艶で退廃的な自画像や女性の裸婦像などを思い浮かべます。自らの死を受け入れたかのような作品は、芸術によってのみ表現できないシーレの死生観を感じます。反体制的で自由な表現で若くして注目されたシーレはパトロンや恋人、後の妻などによる将来を保証されていました。もし、彼が生き続けていたら、芸術の世界はどう変わっていったのか、そんな夢を抱く画家ではないでしょうか。

決して万人受けしない作風でありながら多くのファンを魅了するシーレ、天才シーレの強烈な個性に触れてみてはどうでしょうか。


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