

映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は、Netoflixから2018年制作の韓国ドラ「刑務所のルールブック」です。
最近、Netflixで韓国ドラマに再びはまりつつある僕ですが、スポーツドラマ好きの僕の心を激しく揺さぶらせたのが今回のドラマ「刑務所のルールブック」です。主人公は韓国プロ野球界のスーパースターのジェヒョク。メジャー行き決まり前途洋々の彼が、妹の暴漢に襲われ助けようとして犯人に重傷を負わせたしまい1年の刑に服することに。刑務所内で生活を共にする服役囚の出会いと経験、苦難の中で奇跡のカムバックを果たすまでを描くヒューマンドラマです。
このドラマは、様々な魅力的な要素がちりばめられていて、とても素晴らしいドラマです。今回はそんなドラマの魅力ポイントをご紹介したいと思います。
その1、対称的な主人公とライバルでもある親友ジュノと恋人ジホとその家族たちの関係。
ジェヒョクとジュノは幼なじみで野球ではライバル。遅咲きで苦労人のジェヒョクに対してジュノは知能明晰で天才肌。そんな二人が、刑務所内で服役囚と刑務官として再会を果たします。また、恋人のジホは高校野球時代の監督の一人娘。ジュノとジホは、野球しかない脳のないジェヒョクを陰で支えていきますが、過去のストーリーも含めた青春ドラマと純愛ドラマが展開され、そこにジェヒョクの妹も加わり、ほのぼのとしたドラマが展開します。
その2、ジェヒョクを取り巻く服役囚との関係。
正義感塊りのようなジェヒョクは、最初に刑務所で服役囚たちと対立しますが、次の移送先の寝起きを共にする服役囚たちと深い人間関係を結んでいきます。ここでは、個性的な彼らの服役の理由がサイドストーリーとして描かれるのですが、この内容が実に濃い。一人一人の物語だけでもお腹いっぱいになるような展開です。今度はジェヒョクが彼らに一役もかっていて、笑いと涙があふれるドラマが展開します。
その3、ジェヒョクの野球人としての関係する人間味あふれるドラマ。
ジェヒョクの野球人としてのスタートは、ある出来事でケガを負いそこからトライアウトを得てプロ野球人としての人生をスタートさせるのですが、彼の野球人としてのポジションと深く関わっています。彼は試合の最後を締めくくるクローザー投手。この役割が今回のドラマの最大の要素。救援投手として、また様々な困難を乗り越えてきた彼ならではの手法や考えがドラマの中に散りばめられ、彼と関係した人々すべても輝かせていきます。
今回の作品は、Netflix以外でもBS11で現在放映中、またレンタルも可能です。野球しか知らない男が、自らの投球術を駆使して起こす奇跡をぜひ楽しんでほしいと思います。
長澤まさみ主演、大森立嗣監督の実話をベースに描くヒューマンドラマ。「MOTHER マザー」を鑑賞
実際に起きた17歳の少年による祖父母殺害事件に着想を得て作れた本作。加害者の少年の母親役に長澤まさみが、少年役にはオーディションで選ばれた新人、奥平大兼、母親の恋人役には阿部サダヲなどが出演し、今までない役柄を演じています。
物語は、働かず生活保護を受けながらもパチンコに明け暮れ生活に困窮している三隅秋子、周平を出しに使いながら家族に借金をせがむ毎日の中で、ホストの恋人を作り居所を変えながら放浪の日々を送っている。周平は小学校にも通わず年を重ね、恋人との間に生まれた妹の面倒を見ながら母親と暮らす中で、ついに母親から祖父母を殺し金を奪えて命ずる。
怒りと絶望しか感じない世界ですが、最後まで引き込まれる異様な空気は、クズとしか思えない母親を演じた長澤まさみと周平役の奥平大兼によりもたらされたもので、異常な親子関係が二人の演技で強く印象付けられます。
最近は、バリエーションの幅は広いでうが、今回の作品は、さよなら渓谷や光などに通じる人間の業を鋭く突く大森立嗣監督の代表作品のひとつだなと思っています。そして、印象に残る日本映画のひとつに数えられるのは間違いないと思います。
怒りと絶望の中で繰り広げられる異質な親子愛をぜひ劇場で感じてみてください。
今回は、Netflixの韓国ドラマから、キム・ヘス&チュ・ジフン共演のリーガルドラマ「ハイエナ -弁護士たちの生存ゲーム-」です。
以前から韓国ドラマをよく観てますが、どうも僕は熟女系韓国女優に惹かれる傾向があり、ドラマの脇役であっても主役の若手女優よりも目がいってしまいます。今回もアラフィフ韓国女優のキム・ヘスが主人公とあって、内容を度外視して先ずは鑑賞してみました。
内容は、金のためなら手段を選ばないハイエナのようなキム・ヘス演じる女弁護士チョン・クムジャと大手弁護士事務所のエース、チュ・ジフン演じるエリート弁護士ヒジェの恋を絡めたリーガルサスペンス作品です。
先ずは二人のコインランドリーからの出会いで恋に発展、しかしー、ヒジェが担当した法廷で二人のラブロマンスは一転、闘争劇へと発展、二人は仕事上のライバルに変わります。ここからが、実に面白い展開に、この法廷争いをきっかけに韓国の財閥と政治の関係がクローズアップしてどろどろとしたサスペンス劇が繰り広げられます。
アラフィフ韓流女優好きの僕としては、バブリーな衣装に身を包んだクム・ヘスの濃いキャラクターに釘付け、二人が出会うコインランドリーでも清楚な雰囲気から弁護士チョンのワイルドでセクシーなキャラクターに変貌する感じもドストレートにはまりました。
作品としての肝は、底辺から這い上がってきたハイエナ弁護士チョンと裁判官の父と判事の兄を持つ法曹エリートヒジェの関係、男女関係はもとより手法も考え方も違う二人が、タッグを組み巨悪と戦うところも見どころです。
とにかくどこをとっても飽きのこない内容と演出です。韓国ドラマファンなら必見のドラマ(僕にはどのドラマも必見ですが)です。
映画館で観れなった作品をDVDで観るシリーズ。今回は人気コミックの実写化作品「キングダム」です。
最近は、レンタルではなくサブスクで観ることが多くなりました。今回はAmazonプライムで視聴。コミックとは縁遠い昨今の僕ですが、日本アカデミー賞で最優秀助演女優賞を獲得した長澤まさみ出演作でしたので、とりあえず視聴してみました。
舞台は、紀元前245年の中国、秦国。奴隷の身分であった山崎賢人演じる信と親友である吉沢亮演じる漂が大将軍となる夢を抱いて武道に励んでいる中で、漂が秦の国に召し上げられますが、秦で内乱が起こり漂は命を落とします。国を追われた王エイ政の下で、信は王政奪還のために漂の願いを叶えるために戦うという内容です。
長澤まさみは、かつて秦国と同盟を結んでいた山の民の王、楊を演じていますが、助演女優に輝いただけあって、アクションがすごくカッコいい。その目力は全出演者を圧倒してました。コミック実写化の場合、特に日本映画では原作のイメージを限りなく近づける形をとるように思いますが、コミックファンにも一定の評価を得ているのかと。僕としては、敵対する暗殺者たちのキャラクターが好きです。
全体としては、内容よりもエンターテーメントの要素を散りばめて興行的に成功した一例として評価します。続編も決定しているそうですがこのまま突き進めばOKって感じがします。
ブルース・スプリングスティーンの出会いで人生が開けたパキスタン青年の青春ダイアリーを描いた映画「カセットテープ・ダイアリーズ」を観てきました。
舞台は、1980年代後半のイギリス田舎町。パキスタン移民の高校生ジャベドは、人種差別と保守的で厳格な父の押し付けに鬱屈した思いを日記に書き留めている。ある日、友人からブルース・スプリングスティーンのカセットテープを渡されたことでブルースの音楽を知り、人生が少しづつ変わっていくという実在の人物で脚本、原作のサルフラズ・マンズールがモデル、監督は、ベッカムに恋してのグリンダ・チャーダです。
当時のイギリスは鉄の女として有名なサッチャー政権下で、失業率が上昇し、労働組合などのストライキは減ったもののネオナチなどの人種差別主義者のデモが行わるなど社会が混乱を極めた時代。一方で、音楽シーンでは、ニューウエーヴといわれるUKロックが世界的にヒット、主人公が聴いていたバンドもペットショップボーイズでした。
そんな時代に、アメリカでボスといわれたブルース・スプリングティーンのアルバム「ボーン・イン・ザ・USA」がヒット。再び脚光を浴びます。僕も当時、このアルバムを聴きまくってました。
主人公のジャベドの置かれた環境を思うと、当時の音楽とは異なるエネルギッシュで名もなき庶民の思いを代弁する彼の歌声と詞は衝撃的だったと思います。そして、彼が人生をサポートしてくれた友人や教師の存在もきちんと描かれているのも共感がもてました。
コロナ禍で世界的に様々な社会問題が噴出している現在、この作品は今の社会の風潮に一石を投じる説得力を決して重苦しさもなく、ブルースの世界を通じてリズミカルに表現してくれてるのも、とても素敵な映画です。
映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は、Netflix動画から椎名桔平主演、園子温監督「愛なき森で叫べ」です。
今回の作品は、短編ドラマ形式で進む映画で、猟奇殺人事件に着想を得たファンタジーともいえる作品で、園子温監督をメジャー監督にのし上げた「冷たい熱帯魚」にエンターテーメント性を加えた感じがありました。
愛知県から上京してきた満島新之助演じるシンが、若者たちの自主映画に参加することなるのですが、その若者たちの知人の妙子と美津子に出演依頼します。妙子と美津子は女子高時代の友人で、友人の死を境に妙子はヤリマンに、美津子は引き込もりになっているのですが、椎名桔平演じる村田丈の登場で、映画仲間や家族を巻き込んで、狂乱の世界へと突き進んでいきます。
ベースになったのは、2002年の北九州監禁殺人事件。被告の松永太が、交際相手の女の家族や知人をマインドコントロール下において監禁殺害した事件。松永は、交際相手の女である緒方純子被告に殺害を実行させ、自らは手を下さないことでワイドショーでも毎日のように報道された事件です。今回も村田丈は、決して手を下さず被害者同士が殺害を繰り返すところは事件と酷似してましたが、監禁までにいたる過程は映画製作を通じて、村田が主導権を握っていきます。そんな彼に心酔していくのがシンで、どこか監督自身の生い立ちと重なるような感じがします。
モデルの松永役は、椎名桔平が演じた村田であることはわかりますが、殺害された被害者との関係に類似したところはありますが、内容としてはファンタジーな展開です。ラストでは、予想を裏切る予想外の結果でした。
映画.comのレビューを観ると園子音の最近の動向に批判的な人からの辛辣な評価がありましたが、彼自身が、過去のイメージで語られることを好まず、現在の映画づくりに変化していったことを考えれば個人的には納得できます。また、この作品は、スターリンのボーカルで2019年に亡くなった遠藤ミチロウに捧げられパンクの演出があり、そこが現在のエンターテーメント性と重なっているなと思います。
ともあれ、園子温監督自身は世間の批判など気にしない好き勝手ぶりが彼の魅力でもあります。
2019年アカデミー賞短編映画賞を受賞したガイ・ナイーヴ監督、ジェイミー・ベル主演の長編作品「SKIN/スキン」を観てきました。
先ず今回の作品は、短編作品とは内容が異なるものの、2003年に米国で発足したレイシスト集団「ヴィンランダーズ」の共同創設者ブライオン・ワイドナーが脱会、更生していくまでを辿った作品です。主人公のブライオン・ワイドナーには、リトルダンサーやロケットマンのジェイミー・ベルが、また、彼を愛し更生に導いていく女性で後に妻になるジュリー役には、短編でのネオナチの妻を演じたダニエル・マクドナルドが共演しています。
物語では、ブライオンが自分を育ててくれた組織のリーダー夫妻の恩と犯罪を犯すことへの葛藤、愛する家族を得たことで脱会を決意し、組織の報復の中で家族と共に生きようとする姿が全身に刻まれた差別の象徴である入れ墨を除去するシーンと共に描かれています。ジェイミー・ベルの迫真の演技には心を震わせ、母のような愛で包み込むダニエル・マクドナルドの心身共の包容力が印象的でした。
サイト上で期間公開された短編は、残念ながら見逃しましたが本作とは異なるものの、予告編や解説などを観る限り部分的にレイシストの夫婦に育てられたワイドナーとかつてのネオナチの夫と別れ三人の娘を育てるジュリーの関係性に共通項を持たせ、実話の中にうまく脚色されています。
今回の映画を観て、コロナ禍の中で、全米で巻き起こった警察官による黒人男性暴行死に端を発したデモの際に話題となった過激な行動をやめるよう諫めたカーティス・ヘイズ・ジュニアさんの動画を思い出しましたが、短編、長編の共通する差別への報復では何も解決しないことを強く感じます。肌の違いや思想信条を越えて次に世代が差別撤廃への共通の認識を持って進んでほしいなと思っています。
イ・スジン監督、ハ・ソッキュとソル・ギョングが共演のクライムスリラー「悪の偶像」を鑑賞。
スコセッシ監督が絶賛した本作、韓国映画を不動の地位にのし上げた韓国ノアールの特徴でもある犯罪劇をベースしたサスペンス作品は映画ファンにとって魅力のひとつです。
物語は、轢き逃げ事故の加害者の父と被害者の父が交錯しながら予測不可能な展開で進むスリリングな内容です。ハンソッキュが加害者の父で清廉な政治家、ソルギョング演じる被害者の父は、知的障害の息子を溺愛する役どころ。二人の繋がらない関係が事故により、醜悪な内面が噴き出します。さらに、被害者の息子の妻の過去までが絡みあい事態はますます深刻に。血の匂いが漂う悪にまみれた人間模様は、受け入れ難い人もいるかと思います。邦題のような悪の偶像が林立する作品です。また、ベースある韓国社会が取り巻く様々な問題と意識を感じると作品の奥深さを感じると思います。
韓国タイトルには、アイドルの表記がありましたが、韓国を代表する二人の名優の静と動が織り成す深みのある演技と共に、被害者の息子の妻を演じたチョン・ウヒの息を呑む演技には背筋が凍ることと思います。