午前中の国際宇宙大学での授業を終えた僕は、さっそく午後2時からのプレゼンに備えることにした。会場はキャンパス内にある講義室だ。部屋も新しく、設備もしっかり整っている。快く場所を提供してくれた国際宇宙大学に感謝したい。Merci!
僕が今日プレゼンをすることは、国際宇宙大学の学生の間にもしっかりと周知されていた。ある日本のMBA学生がこういうテーマで講演をしにくるから、興味のある人はぜひ聞きに行ってください、という内容だったらしい。しかも、このメールは国際宇宙大学の教授陣にも展開されていて、後で知ったのだけど僕は大学内で「コイツは何者だ?」と話題になっていたらしい。それも当然といえば当然だ。国際宇宙大学に一度も来たことのない日本人が、ある日いきなり大学にやって来て、宇宙とはあまり関係のないテーマでプレゼンを仕掛けてきたのだ。前代未聞のことかもしれない。
僕のプレゼンには、結局20人近い学生の皆さん、それに、国際宇宙大学の教授にティーチングアシスタントが参加してくれた。実をいうとこの日は金曜日で午後の授業は一切予定されていなかった。つまり、皆さん僕のプレゼンを聴くためだけにわざわざ学校に残ってくれたのだ。彼らの好意に心から感謝しなければならない。Merci beaucoup!
予想以上の参加者に驚いた僕は、いつも以上に心を込めて、丁寧にプレゼンをするよう心掛けた。礼に対しては礼を尽くさなければならない。最高のプレゼンをすることこそが、彼らに対して今僕にできる最大の恩返しだ。僕はパワーポイントの最後のページの最後の一行までしっかりと、論理的に、かつ、分かりやすく説明をしたつもりだ。
僕が現在取り組んでいるテーマは「航空」に関するものなので、本当をいうと彼らの興味の的ではない。彼らは「宇宙」を学びたくてこの大学にやって来ている。しかし、彼らは実に熱心に僕のプレゼンを聴いてくれた。そして、プレゼン終了後も矢のような質問を次々と僕に浴びせてきた。午前中の授業での静かさがウソのようだった。結局、質疑応答も含めて全てが終わった時には、プレゼン開始から既に1時間半近くが経過していた。
驚いたのは、プレゼンも質疑応答も全てが終わった後で、何人もの学生さんが僕の周りにやってきたことだ。彼ら曰く、僕のプロジェクトに対してまだまだ質問したいことがたくさんあるらしい。この感覚、どこかで経験した記憶がある。そう、採用担当をしていた時のあの会社説明会が終わった直後の感覚だ。いつも学生さんが僕の回りにやってきて、説明会中に聞きそびれたことを僕に質問してきたのを覚えている。あのときのあの感覚と全く同じだ。とても懐かしい感覚だ。そして、僕にとって最高に嬉しい瞬間でもあった。少なくとも、彼らは僕のプレゼンに興味を示してくれたのだ。
一番僕の心に響いたのは、ある学生から最後に言われたこんな一言だった。
「いつもは全く講義のノートをとらない学生達が、あなたのプレゼンには熱心に耳を傾け、必死にメモをとっていた。本当に驚いた。」
僕が今使っている名刺入れは、フランス留学に際して会社の同僚達から心を込めてプレゼントされたものだ。その大切な名刺入れから、今回僕の名刺が大量に消えていった。その事実こそが、今回のストラスブース出張の成果を物語ってくれていると思う。
ストラスブールまで来て、本当に良かった。
(写真はライン川沿いの風景)