既に日本中にも報道されたと思いますが、
昨日の夜、速報で金正日の長男である金正男氏が
マレーシアの空港で毒物によって殺害されたことが報道されました。
金正男は、金正恩がいきなり浮上するまで
金正日の長男として、後継者として有力視されていた人物。
性格も割りと自由で北朝鮮の指導者というポストが性に合わないところもあったし、
偽造のパスポートで日本への密入国を試みたことが発覚し結局追放されましたが、
海外を転々とする金正男を中国が保護しているだの、
北朝鮮政権に反する勢力が金正男を中心に海外亡命政府を立ち上げようとしているだの、
金正恩の気に障るようなうわさが絶えなかったので
金正恩にとっては政権トップになってからもずっと気になる存在だったはずです。
そんなわけで、これまで金正男の暗殺に関するうわさが多くて、
昨日のニュースを聞く時点では、私も本当かなーと思っていました。
でも、今日の韓国の情報機関の発表やマレーシアの警察の発表などを総合してみる限り
今回は本当のようです。
金正恩が執権を始めた5年前から
北朝鮮の工作員に「金正男暗殺」の指示を出していたということですが、
(本当に北朝鮮による暗殺なのかの判断は置いといて)
殺害のタイミングが妙に先日のミサイル試験発射と重なって
今北朝鮮が新聞の国際紙面を覆っている状態です。
(99.99%確実でしょうが、)金正恩が金正男の暗殺を命令したのだとすれば、
「なぜ」と、その背景が気になりますが
私は、北朝鮮の権力層の政治的な情勢なども重要だと思いますが、
独裁北朝鮮政権においては、金正恩の意中が一番大事なので
金正恩本人の心理を覗くことが一番意味があると思います。
大きくは2点を考えています。
①「白頭血統」コンプレックス
②失政によって弱まる住民の支持と強まる「住民の反感」への不安
北朝鮮は「白頭血統」へのこだわりが強く、
それが権力を正当化する要件になる封建的な体制です。
しかし、金正恩は在日コリアン出身の母のせいで
「富士山血統」と皮肉にされているし、
しかも母は金正日の本妻でもありません。
一方の金正男は金正日の長男で「白頭血統」とされているのです。
そこから生まれたコンプレックスで、
金正男は金正恩にとって目の敵。
しかも、金正男は海外で自由な生き方をしていて
「北朝鮮の3代世襲は望ましくないと思う」なんてことを公然と口にする。
このように自分の権威を脅かす第一の存在がまだ地球上に生きているのに、
愛民指導者をふりをしたり、自分を褒め立てたり、公開処刑などで脅迫したりしても
住民の心が自分に背を向けることが目に見える…
しかも、幹部たちも目の前ではペコペコするが、
自分について「若い指導者」と無視するかのように感じる…
ますます不安になるしかありません。
もう5年前に出した暗殺指令とはいえ、
時間が経つほどそのコンプレックスと住民の不満は深まる一方だったので、
金正恩の「金正男を除去しなきゃ」という意志はもっと強くなったと思います。
しかし、何回考えても「殺害」という凶悪なやり方しかなかったのかを考えると
批難されて当然です。
国内で、理不尽でも何らかの罪を着せて処刑することまでは
百歩譲って、許せないけどこれが人権蹂躙国の実態なのだと言うことができるが、
海外で毒物を利用して人を殺すことは
明らかに「テロ行為」です。
民主主義国家では、それぞれ投票方式に違いはあるといえ、
候補が公の場で自分のビジョンを示し、
国民に選ばれるためにお互い「競争」します。
自分の権力を維持するために相手を殺すことは絶対にありえない。
自分の欲のために毒殺という極端な人権侵害行為・テロ行為を犯した
金正恩を強く批難します。
今のところ金正恩は、金正男の死亡の報告を受けて
笑っているのかホッとしているのか分かりませんが、
金正恩の統治方式と北朝鮮の独裁体制が変わらない限り、
第2の金正男はまた現れます。