はる日記

「人間万事塞翁が馬」

日々の出来事を綴ってます。

『追想五断章』

2017-01-07 17:47:05 | テレビ・映画・本
米澤 穂信 著

あらすじ。

古書店アルバイトの大学生・菅生芳光は、報酬に惹かれてある依頼を請け負う。依頼人・北里可南子は、亡くなった父が生前に書いた、結末の伏せられた五つの小説を探していた。調査を続けるうち芳光は、未解決のままに終わった事件"アントワープの銃声"の存在を知る。二十二年前のその夜何があったのか?幾重にも隠された真相は?米澤穂信が初めて「青春去りし後の人間」を描く最新長編。

(「BOOK」データベースより)

(´・ω・`)

読み終わったとき、不思議な感覚になりました。なんかこう朧気なものを掴むような。だからといってモヤモヤはしません。

これって何の話だろうと考えたとき、とてもシンプルで複雑な人の心理の話だと思いました。

真相を言いたい、知ってほしい。いや、言いたくない、知られたくない。相反する感情が同時に発生する人間の複雑さ。厄介なのは、どちらも本心だということ。こうなると相手に委ねてしまおうという気持ちになるのは解る気がします。相手が真相に気付こうが気付かまいがどちらでも構わない。何故なら、どちらも望んでいることだから。

(´・ω・`)

それは、筆名にも表れている気がします。

主人公は、筆名の由来について「筆名もそのままだったのかもしれない。叶黒白。…叶うことなら、白黒をはっきりさせたい」と考えますが、私には「叶うことなら、コクハクしたい」というのが由来に思えました。

告白ではなく黒白。ここに、叶うことならの気持ちが含まれているような。

(´・ω・`)

揺れ動く気持ち。

しかし、最後には結論が出ます。

最後に見付かった一篇は本名で書かれてあり、手元に残してありました。

何故、これだけ本名で書いたのか?
何故、これだけ手元に残したのか?

考えると切なさが込み上げてきます。

ρ(・・、)

読めば読むほど味が出る話です。