(2000/ブレット・ラトナー監督/ニコラス・ケイジ、ティア・レオーニ、ドン・チードル、ジェレミー・ピヴェン、ソウル・ルビネック、ジョセフ・ソマー、ジェイク・ミルコヴィッチ、ライアン・ミルコヴィッチ、リサ・ソーンヒル、ハーヴ・プレスネル、メアリー・ベス・ハート/125分)
1987年、NY。恋人同士の若い二人。男はロンドンの銀行が主催する企業研修に旅立とうとするが、女はある予感におそわれて行かないでと言う。
『飛行機事故を心配しているのかい?』。男は『100年経っても帰ってくるから、君も立派な大学で法律を学んでいてくれ』と搭乗口に向かう。
それから13年。男はニューヨークの大きな投資会社の社長になっていた。彼女とはロンドンに旅だったまま別れ、今は億ションの高層階に住み、女にも不自由はしないという優雅な独身生活を送っている。
クリスマス・イブの夜、たまたま居合わせたコンビニで強盗に遭遇、男は強盗にお金を渡し努力して仕事に就くようにと説教をする。
『お前は俺を救おうとしているのか?』
『人は誰でも救いを求めているものさ。私には不要だけどね』。ソレを聞いた強盗は『これから起こる事は、自分が招いた事だからな』と不思議な事を囁き去って行く。
いつもの大きなベッドで眠りにつく男。次の日の朝、目が覚めると傍らには13年前に別れたあの女性が居た・・・。
「素晴らしき哉、人生!」と発想は同じ。天使(or神様)が主人公にタラレバ人生を見せる事によって、実人生の認識を改めさせるという話だ。但し、「素晴らしき・・」が終盤の切り札的な扱いとしているのに対し、コチラはタラレバの世界で主人公が体験することを描くのが主眼となっている。
男の名はジャック。演じるのはニコラス・ケイジ。この人、顔は似てるけどアンディ・ガルシアの方が二枚目だし、額は広いし、脱いだら(筋肉は)凄いことになってるし、初めて写真で見たときは主役を張るような役者じゃないように思ったんですが、フィルムの中で見てみると人間くさい表情に味がある俳優です。
恋人の名はケイト。コチラは「ジュラシック・パークⅢ(2001)」のティア・レオーニ。実はビデオのジャケット写真でメグ・ライアンによく似た可愛らしい女優だなぁと思っていて、ティアだと分かって少しガッカリしました。しかし、このケイトは「JPⅢ」のヒステリックなお母さんとは違って、ジャケット通りの可愛らしい女性でありました。
さて、タラレバの世界はどういうことになっているかというと、ジャックとケイトはNYの郊外に住んでいる夫婦で、男の子の赤ん坊と幼稚園に行っているアニーという女の子が居る。大会社の社長ではないが、小さな会社を取り仕切り、沢山の友人もいる普通の男性だ。つまり、13年前にケイトと別れずに結婚していたらという世界なのだ。但し、コチラの世界でもジャックの中身は前夜までの社長のジャック。つまり、ジャック自身にはケイトと結婚後の13年間の記憶がないという不思議な空間になっている。
ちょっと、SFチックで興味深い本(脚本:デヴィッド・ダイアモンド&デヴィッド・ウェイスマン)であります。誰でも『あの時こうしていたら・・』と思うことはありますよね。それをスリリングに、ファンタジックに描くとこうなるという映画です。
突然違う人生のレールに乗っけられたジャックは一時パニックに陥るわけですが、タラレバの周りの人々はジャックが少し変だぞくらいにしか思わない。ただ一人、アニーちゃんだけはパパの異変に気付き、エイリアンがお父さんに化けたと思っている。この女の子がとっても可愛くて素敵! “エイリアン”が自分たちに危害を加える気が無いのを確認した後は、“地球の事”を何かと教えたりする。この子とジャックとの関係が彼の変貌ぶりを象徴的に表しております。13年間連れ添った亭主の異変に気付かない奥さんというのもオカシナ話ですが、ま、その方が都合がいいし、ファンタジーですから堅いことは言わないことにしましょう。
社長だったジャックは、周りの人に感づかれないようにタラレバ世界のジャックの13年間を確認していく。その過程で、結婚することを選んだジャックとケイトの人生を知ることによって、また庶民として、家庭人として生活していく内に、パーフェクトだと思っていた社長の人生では味わえなかったものを感じるようになる。【原題:THE FAMILY MAN 】
▼(ネタバレ注意)
家庭人ジャックの13年間を要約すると、ロンドンの研修を一日で切り上げて帰って来た彼はケイトと結婚、NYの証券会社に勤める。会社ではトップセールスのご褒美にその年の新人賞まで取るが、自動車修理工場を経営しているケイトの父親が心臓の病気を患ったために証券会社を辞め、義父の会社を手伝うようになった、という具合だ。
子供のお守りも初めての経験だったし、リッチマンだったジャックからすれば面白みのない日常生活に組み込まれた格好だ。しかし、13年ぶりに逢ったケイトが昔と変わらずに美しいのに気付いたりして、ジャックもタラレバ世界を前向きに考えるようになった頃、元の世界の上司、投資会社の会長に出会う。ケイトを今よりも幸せにしようと会長に自分を売り込み、役員として迎え入れられるようになる。可愛い子供たちと美しい妻をそのまま伴って、NYでの豪華な生活に入れるわけだ。スーパーの値札を気にすることなく買い物が出来、子供は私立の名門学校に通わすことが出来る。
ところがケイトの反応はジャックの思惑とは違った。子供への環境を考えてNYから郊外に引っ越したのに、何故? 静かなこの家で老後もあなたと過ごしたかったのに・・。
その後の『それでもアナタと一緒に居たいからついて行くわ』というケイトの言葉に作者の想いが詰まっているようです。
一見教訓的な話に見えますが、それよりは奇妙でロマンチックな空間をジャックと一緒に体験する面白さの方が勝っております。教訓的な話にするのならタイムマシンに乗せて社長として年をとっていった場合にどんな老後が待っているかという話でも良かったわけです。しかし、それだとどなたかの映画サイトのコメントにもありましたが、独身貴族で過ごすのも一つの人生じゃないかなんて事にもなりかねませんものね。
元の世界に戻ってきたジャックは、前夜のクリスマス・イヴにかかってきたケイトからの電話を思い出し、彼女のアパートを探す。コチラでも13年ぶりに会ったケイトは美しかった。ジャックと別れた後、法律事務所に勤めた彼女はパリ支店に赴任する直前で、引っ越し準備の真っ最中だった。前日の電話は、13年前から預かっていたジャックの荷物を返す為の電話だった。そして、彼女も独身だったがその夜に機上の人となる予定だったので、ゆっくりと話す時間はとれなかった。彼女も一人で頑張って高給取りになっていたのだ。今更ジャックに引き留めることなど出来るはずもない。
この後、ジャックは社長の座を投げ捨てて空港にケイトを探しに行きます。それは13年前の二人の立場が逆転した格好で、一緒に居たいという必死のジャックの想いが通じることになります。
ラストシーン。空港ロビーの片隅でコーヒーカップを前に話しをしている二人。会話の内容は聞こえません。ガラスの向こうには白い雪が降っているクリスマスの夜でした。
▲(解除)
監督のブレット・ラトナーは2006年の大ヒット作「X-MEN:ファイナル ディシジョン」が最新作品とのこと。ストーリーを面白く魅せる技は確かなモノを持っているようで、名前は覚えておいて宜しいようです。
親しみやすい音楽はロックバンド出身のダニー・エルフマンという人。80年代の後半から映画音楽を手がけるようになっていて、フィルモ・グラフィーを見るとティム・バートンやガス・ヴァン・サントと組むことが多いようです。なんと、ブリジット・フォンダの旦那さんだそうです。
1987年、NY。恋人同士の若い二人。男はロンドンの銀行が主催する企業研修に旅立とうとするが、女はある予感におそわれて行かないでと言う。
『飛行機事故を心配しているのかい?』。男は『100年経っても帰ってくるから、君も立派な大学で法律を学んでいてくれ』と搭乗口に向かう。
それから13年。男はニューヨークの大きな投資会社の社長になっていた。彼女とはロンドンに旅だったまま別れ、今は億ションの高層階に住み、女にも不自由はしないという優雅な独身生活を送っている。
クリスマス・イブの夜、たまたま居合わせたコンビニで強盗に遭遇、男は強盗にお金を渡し努力して仕事に就くようにと説教をする。
『お前は俺を救おうとしているのか?』
『人は誰でも救いを求めているものさ。私には不要だけどね』。ソレを聞いた強盗は『これから起こる事は、自分が招いた事だからな』と不思議な事を囁き去って行く。
いつもの大きなベッドで眠りにつく男。次の日の朝、目が覚めると傍らには13年前に別れたあの女性が居た・・・。
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「素晴らしき哉、人生!」と発想は同じ。天使(or神様)が主人公にタラレバ人生を見せる事によって、実人生の認識を改めさせるという話だ。但し、「素晴らしき・・」が終盤の切り札的な扱いとしているのに対し、コチラはタラレバの世界で主人公が体験することを描くのが主眼となっている。
男の名はジャック。演じるのはニコラス・ケイジ。この人、顔は似てるけどアンディ・ガルシアの方が二枚目だし、額は広いし、脱いだら(筋肉は)凄いことになってるし、初めて写真で見たときは主役を張るような役者じゃないように思ったんですが、フィルムの中で見てみると人間くさい表情に味がある俳優です。
恋人の名はケイト。コチラは「ジュラシック・パークⅢ(2001)」のティア・レオーニ。実はビデオのジャケット写真でメグ・ライアンによく似た可愛らしい女優だなぁと思っていて、ティアだと分かって少しガッカリしました。しかし、このケイトは「JPⅢ」のヒステリックなお母さんとは違って、ジャケット通りの可愛らしい女性でありました。
さて、タラレバの世界はどういうことになっているかというと、ジャックとケイトはNYの郊外に住んでいる夫婦で、男の子の赤ん坊と幼稚園に行っているアニーという女の子が居る。大会社の社長ではないが、小さな会社を取り仕切り、沢山の友人もいる普通の男性だ。つまり、13年前にケイトと別れずに結婚していたらという世界なのだ。但し、コチラの世界でもジャックの中身は前夜までの社長のジャック。つまり、ジャック自身にはケイトと結婚後の13年間の記憶がないという不思議な空間になっている。
ちょっと、SFチックで興味深い本(脚本:デヴィッド・ダイアモンド&デヴィッド・ウェイスマン)であります。誰でも『あの時こうしていたら・・』と思うことはありますよね。それをスリリングに、ファンタジックに描くとこうなるという映画です。
突然違う人生のレールに乗っけられたジャックは一時パニックに陥るわけですが、タラレバの周りの人々はジャックが少し変だぞくらいにしか思わない。ただ一人、アニーちゃんだけはパパの異変に気付き、エイリアンがお父さんに化けたと思っている。この女の子がとっても可愛くて素敵! “エイリアン”が自分たちに危害を加える気が無いのを確認した後は、“地球の事”を何かと教えたりする。この子とジャックとの関係が彼の変貌ぶりを象徴的に表しております。13年間連れ添った亭主の異変に気付かない奥さんというのもオカシナ話ですが、ま、その方が都合がいいし、ファンタジーですから堅いことは言わないことにしましょう。
社長だったジャックは、周りの人に感づかれないようにタラレバ世界のジャックの13年間を確認していく。その過程で、結婚することを選んだジャックとケイトの人生を知ることによって、また庶民として、家庭人として生活していく内に、パーフェクトだと思っていた社長の人生では味わえなかったものを感じるようになる。【原題:THE FAMILY MAN 】
▼(ネタバレ注意)
家庭人ジャックの13年間を要約すると、ロンドンの研修を一日で切り上げて帰って来た彼はケイトと結婚、NYの証券会社に勤める。会社ではトップセールスのご褒美にその年の新人賞まで取るが、自動車修理工場を経営しているケイトの父親が心臓の病気を患ったために証券会社を辞め、義父の会社を手伝うようになった、という具合だ。
子供のお守りも初めての経験だったし、リッチマンだったジャックからすれば面白みのない日常生活に組み込まれた格好だ。しかし、13年ぶりに逢ったケイトが昔と変わらずに美しいのに気付いたりして、ジャックもタラレバ世界を前向きに考えるようになった頃、元の世界の上司、投資会社の会長に出会う。ケイトを今よりも幸せにしようと会長に自分を売り込み、役員として迎え入れられるようになる。可愛い子供たちと美しい妻をそのまま伴って、NYでの豪華な生活に入れるわけだ。スーパーの値札を気にすることなく買い物が出来、子供は私立の名門学校に通わすことが出来る。
ところがケイトの反応はジャックの思惑とは違った。子供への環境を考えてNYから郊外に引っ越したのに、何故? 静かなこの家で老後もあなたと過ごしたかったのに・・。
その後の『それでもアナタと一緒に居たいからついて行くわ』というケイトの言葉に作者の想いが詰まっているようです。
一見教訓的な話に見えますが、それよりは奇妙でロマンチックな空間をジャックと一緒に体験する面白さの方が勝っております。教訓的な話にするのならタイムマシンに乗せて社長として年をとっていった場合にどんな老後が待っているかという話でも良かったわけです。しかし、それだとどなたかの映画サイトのコメントにもありましたが、独身貴族で過ごすのも一つの人生じゃないかなんて事にもなりかねませんものね。
元の世界に戻ってきたジャックは、前夜のクリスマス・イヴにかかってきたケイトからの電話を思い出し、彼女のアパートを探す。コチラでも13年ぶりに会ったケイトは美しかった。ジャックと別れた後、法律事務所に勤めた彼女はパリ支店に赴任する直前で、引っ越し準備の真っ最中だった。前日の電話は、13年前から預かっていたジャックの荷物を返す為の電話だった。そして、彼女も独身だったがその夜に機上の人となる予定だったので、ゆっくりと話す時間はとれなかった。彼女も一人で頑張って高給取りになっていたのだ。今更ジャックに引き留めることなど出来るはずもない。
この後、ジャックは社長の座を投げ捨てて空港にケイトを探しに行きます。それは13年前の二人の立場が逆転した格好で、一緒に居たいという必死のジャックの想いが通じることになります。
ラストシーン。空港ロビーの片隅でコーヒーカップを前に話しをしている二人。会話の内容は聞こえません。ガラスの向こうには白い雪が降っているクリスマスの夜でした。
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監督のブレット・ラトナーは2006年の大ヒット作「X-MEN:ファイナル ディシジョン」が最新作品とのこと。ストーリーを面白く魅せる技は確かなモノを持っているようで、名前は覚えておいて宜しいようです。
親しみやすい音楽はロックバンド出身のダニー・エルフマンという人。80年代の後半から映画音楽を手がけるようになっていて、フィルモ・グラフィーを見るとティム・バートンやガス・ヴァン・サントと組むことが多いようです。なんと、ブリジット・フォンダの旦那さんだそうです。
・お薦め度【★★★★=友達にも薦めて、その人が好きなら】
>でもメグ版も観てみたかったかも…。
リメイクするには年齢が合わないし、似たような話でもう少し年輩のカップルの話にすると出来るかも・・・。