テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

宇宙戦争 (2005年版)

2007-09-27 | SF
(2005/スティーヴン・スピルバーグ監督/トム・クルーズ、ダコタ・ファニング、ティム・ロビンス、ジャスティン・チャットウィン、ミランダ・オットー/114分)


 この映画が作られるというニュースを聞いた後に、すぐに半世紀前(1953年)のジョージ・パル製作、バイロン・ハスキン(監督)版を見ました。主演はTV「バット・マスターソン」や「バークにまかせろ!」でお馴染みだったジーン・バリー。
 火星人やUFOは、日本の一昔前の「ウルトラQ」レベルのものですが、薄気味悪さは充分に出ていましたし、UFOから光線が出て、地球人を一瞬にして消してしまうシーンもショッキングでした。逃げまどう人々が、「蜘蛛の糸」状態に陥る群集心理も同じように描いていまして、ここはH・G・ウェルズ的には外せなかったということでしょうか。

 さて、2005年のスピルバーグ版。公開後の評判がそれほど良くなかったので、(見るのは)レンタルでも良かろうと思っておりましたが、いつの間にやら忘却の彼方へ・・・。先週の連休に息子が何か見たいのと言うので、思い出して借りてきました。
 『トム・クルーズが逃げるばっかりでつまらん』とか、『親子愛が絡んでくるのが、ハリウッド的で興ざめ』とか、そんな話も聞こえていたし、正直それ程期待はしていませんでした。
 が、しか~し。始まってすぐに思い出しました!

 『スピルバーグは、パニック映画の天才じゃった!』

 ハスキン版でもいきなり光線が出てきた時にはビックリしましたが、スピルバーグは、かの「激突!」や「ジョーズ」と同じように、徐々に不気味な雰囲気を醸成していって、いきなりドカン!と驚かす手口を、今作では序盤から発揮しておりました。
 変な雲の間から稲妻が何度も落ちてきて、トムさんは面白がっているけど、道路の真ん中に開いた穴からは変な物音。突然、四方八方に地割れが延びて、やがて地響きをたてて巨大なトライポットが登場する。風になびく洗濯物の扱い方や、群衆の反応シーンの編集、ビルの倒壊シーンの編集など、今更ながら上手いなぁと感心しました。トライポットが街中を移動しながら地球人を殺戮していくところも、ショーウィンドウや車のガラスに映し込んだりして、臨場感を高めておりました。

 封切当時 こちら福岡のテレビ番組に出演していた“おすぎ”が、『アレは政治的な組織と繋がって作られている』、つまり“9.11”に絡めて、外部からの脅威をイメージさせているんではないかという言い方をしていました。<外部からの脅威>という印象は殆ど受けませんでしたが、あのトムの息子がやたらとトライポットと戦いたいと主張する辺りは、穿ってみれば<政治的な組織>への配慮を感じなくもないなぁと思いましたな。

 序盤で、トライポットが暴れている所とトムの家との距離感が不可解な所(トムは歩いて最初の惨劇の場所へ行ったのに、トムの家で待っている子供たちは、トライポットの騒動に全然気付いていない)とか、中盤で川に落ちたトム達が、秋仕様の服装の割には全然寒がっていないとか、突っ込みたくなる場面も少なからず有りました。
 ティム・ロビンス絡みのシークエンスも、少し長すぎる感じもしましたな。

 ハスキン版の主人公は確か科学者だったような気がしますが、今回のトム・クルーズはクレーンのオペレーターという、ブルーカラーのバツイチ中年男。別れた奥さん(オットー)が子供二人を連れて再婚していて、その子供達を元夫の家に面会に連れてくるところが映画の始まりで、その後しばらくしてUFOの襲撃が始まり、あとはトムと二人の子供との(元の奥さんが避難していると思われる)ボストンまでの逃避行が描かれています。
 結末は、ハスキン版と同じ。というか、確か原作と同じ。あんなに桁外れの戦闘能力をもっている宇宙人相手には、とても人類の力だけでは戦えないということですな。

 しかしなぁ~。あのエイリアンは、事前に地球の環境だって調べてたでしょうにねぇ・・・。

 尚、前作の主役だったジーン・バリーとアン・ロビンソンが、今作ではミランダ・オットーの両親役でラストシーンにチラッと出てきます。
 凄いね。50年後に同じ映画に出るなんて。

・お薦め度【★★★=一度は見ましょう】 テアトル十瑠

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8 コメント

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見ましたね~~ (anupam)
2007-09-27 22:48:46
公開当時、劇場鑑賞。「こえ~~よ~~」とびびりまくりました。

これって体験型アトラクションみたいな映画です。でかい画面だとなおさらそうです。

確かにティムがらみはいささかリズム感を欠いたように思えたし、つっこみどころ満載だったけど、重量感のあるパニック映画としては合格点をあげてよかったと思います。

人間がどんどんこまみじんになるシーンの恐ろしさ・・
そして何よりもパニックになったときの人間の身勝手さ・・それが一番恐かったかな
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見ちゃったよぉ~~ (十瑠)
2007-09-28 09:04:12
ハハハ!

>体験型アトラクション

とは、言えてますなぁ。

ボワン!と、光線を浴びた人間が消えて無くなるところ、恐かったですよね。
夜が明けたら、家が無くなっていて、リビングに旅客機の巨大なエンジンが火を噴きながら動いているってえのも、シュールな画でした
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遅れてコメント(御免) (オカピー)
2007-09-30 16:15:46
基本に忠実で面白かったですね。
サスペンスの基本は追うことと逃げることにあり、
と双葉氏も仰っております。
今の頭でっかちは基本を忘れてはいませんか、てなもんです。(怒・・・笑)

幕切れが呆気ないのはかつてのSF映画の定石で、「人類SOS」の宇宙人は水に弱かった。
大事なのは途中のサスペンスをどう見せるか。淀みがなく滑らかな語り。スピルバーグは天下一品でしょう。
少なくとも刺激ばかり追い求める若い連中のほざきは当てになりません。
伏線がないというのは全く嘘で、娘の棘について言う言葉が結末を予言していました。「棘に何の意味もなかった」などというコメントを読むと、正にがっかり。

スピルバーグは追われる民族ユダヤ人ですから本能的に「逃げる者」を描く。家族への思いも強い。
9・11以降ハリウッドでは【家族の再生】がテーマになり、ハリウッドがスピルバーグと重なってきました。
彼が宇宙人をテロリストに擬したのはNYを舞台にしたことからも直観的に解りますし、次の「ミュンヘン」を観るとさらに本作がそうであることが解るような気がします(いつかご覧になって下さいませ)。

ただ、私が評価するのはあくまで語りの上手さです。^^
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オカピーさん、こんばんは。 (十瑠)
2007-09-30 21:46:49
最近、お忙しそうで、今回もTBだけかいな、と思っておりました。(ウソウソ^^)

カテゴリー別の記事数で、サスペンスは通常ドラマの次に多いのですが、最近は追いつ追われつのアクション絡みの系統は、どちらかというと避けております。これはジャンルはSFにしていますが、サスペンス物には間違いないですね。スピちゃんらしさが出ていて、安心して見れました。
最初は子供と見たので吹き替え版でして、そちらではダコタちゃんの金切り声は控えめになっておりましたヨ。

「プライベート・ライアン」もそうですが、ちょっぴり、信用していないところもあるので、「シンドラー」も録画したまま、「ミュンヘン」も先送りしております。

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ぉ今晩は~♪ (viva jiji)
2007-10-01 20:35:02
まったく本作のレヴューだか何だかわかんない
あいま~いな記事持参しましたです。(--)^^

パソちゃん、ギブアップで娘のご機嫌を見計らって
ちょこちょこ皆様のところへオジャマさせて
もらっておりますの。^^
(記事はしばらく休載します)

さて上の問題は何かしら?
私にわかるかな・・・うふふ。(^^)
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どうも~ (十瑠)
2007-10-02 07:30:32
毎日のようにパソコンに向かっていると、空気みたいなものでしょうから、なんとも言えない喪失感が・・・。
数日前の、姐さんの記事でそんな想像をしてしまいました。

私の場合は、仕事に使っていますから、壊れたら大変です。とりあえず、2台をLANで繋いでいますからバックアップは出来てますがね。

ポートレイトの方は、も少し置いてコメントしますネ。
返信する
サスペンスの基本再び (オカピー)
2007-10-04 16:06:21
少し時間が出来ましたので、またお邪魔。

追いつ追われつのサスペンスは最近敬遠気味ということですが、追うのが人間とは限りません。そう、時間ですよ。時限サスペンスというやつ。
時限爆弾や人質の命の保証期限が典型ですが、伝染の蔓延をいかに最小限に食い止めるか、なんてのも一種の時限サスペンスですよね。E・カザンの「暗黒の恐怖」がその代表的佳作ではないでしょうか。

>「プライベート・ライアン」…信用していない
その正確な意味は?
アメリカでは「シンドラーのリスト」はアメリカ映画史上ベスト10に食い込むほどの評価ですが、「ライアン」同様私もそこまでは評価していないです。
昔のアメリカ映画ほど単純・大味ではないにしても、欧州映画に比べると詰めの甘さを感じます。
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いらはい、いらはい♪ (十瑠)
2007-10-04 17:17:30
>時限サスペンス

確かに!
面白い作品が多いですよね。「真昼の決闘」もそうでしょうか。カザンのその映画は見てないですネ。

>その正確な意味は?

期待を裏切られたという、ただソレだけです。
助けたドイツ兵が裏切るという展開にも・・

実は「カラー・パープル」で、スピルバーグの演出が、それまでのサスペンス物と同じ語り口だったので、唖然とした経験があります。他の方には結構感動作だったようですが、すっかり内容も忘れてしまう程、しらっと見終わったと記憶してます。
あれ以来、スピルバーグの一般ドラマは期待しないようにしています。
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