(1999/ジョー・ジョンストン監督/ジェイク・ギレンホール、クリス・クーパー、ナタリー・キャナディ、ローラ・ダーン、クリス・オーウェン(=クエンティン)、ウィリアム・リー・スコット(=ロイ・リー)、チャド・リンドバーグ(オデール)/108分)
二週間ほど前に「自転車泥棒」を見ようかなとツイートしたけど、年末だし、暗いのにも躊躇して別の中古DVDを選びました。「遠い空の向こうに」。ロン・ハワードのような語りに面白く見ていたら、エンドクレジットで監督がジョー・ジョンストンと分かって納得。「ジュマンジ」、「JPⅢ」ですもん。
[12月06日 twitterで]
1957年10月、ソ連が人類初の人工衛星スプートニクの打ち上げに成功した。このニュースは世界中を駆け巡り、アメリカ合衆国ウェスト・ヴァージニア州の小さな炭鉱町に住む高校生ホーマー・ヒッカムにとってもそれは衝撃的で、少年は自分もロケットを打ち上げたいと思うようになる。
ホーマーが生まれたコールウッドは採炭で成り立っている町で、彼の父親ジョンは鉱山会社の現場監督をしていた。家は勿論、家財道具も半分以上は会社からの支給品、町の教会の牧師でさえも会社の従業員だった。
厳格な父と、絵の好きな母ナンシーと、フットボールの上手い同じ高校に通う兄ジムとの四人家族。
父にとってジムは自慢の息子で(彼のフットボールの)試合は必ず見に行ったが、弟のホーマーは特にスポーツで目立つこともなく、又、町にも鉱山にも興味を示さないのでジョンは忸怩たる思いでホーマーを見ていた。
仲の良いロイ・リー、オデールを誘ってロケット作りを始めるホーマー。単純な素人考えで作った第一号はロケット花火の火薬を利用したオモチャ同然の代物で、一ミリも上に飛ぶことはなく、ただヒッカム家の庭の柵を壊しただけだった。ホーマーは自身の知識の無さに気付き、ふと学校の中で孤立している科学オタクのクエンティンに目を付ける。案の定、クエンティンはロケット作りにおける人類の歴史さえも紐解くことの出来る男だった。
ホーマー、クエンティン、ロイ・リー、オデール。四人の高校生のチャレンジは、やがて彼等の人生を大きく変えるものとなっていく・・・。
後にNASAのエンジニアになったホーマー・ヒッカムの自伝「Rocket Boys」を基に作られたドラマで、ストーリーの軸はロケット作りが成功するまでの過程ですが、ドラマとしての軸は父と息子の葛藤、親子の愛の行く末になっていますね。
すなわち、父ジョンには石炭は鉄を作るのに必要なものであり、鉄はアメリカ経済の基盤を作っているもの、つまり炭鉱堀りはアメリカ社会を支えている誇りある男の仕事だと言う自負があり、そのことに敬意を払わない息子ホーマーに不満があるわけですが、一方のホーマーは、採炭の仕事によって父親は肺に爆弾を抱えており、自分は出来れば地上の仕事でひとかどの人間になりたいと思っている。その価値観のぶつかりですね。
父親と息子の対立。この普遍的なテーマが底流をなし、ロケット作りの成功と共に親子の和解が生まれるラストシーンには自然と暖かい気持ちにさせられます。
ホーマーに扮したのは当時19歳のジェイク・ギレンホール。11歳で映画デビューした彼の初主演作だそうです。
父親に認められない寂しさと自身の夢に向かう一途さ、周囲の人々に対する思いやりなどを繊細に表現した素晴らしい演技だったと思いますが、この年の賞関連には無縁だったようです。残念。僕が女性で、この映画を十代で観ていたら彼のファンになっていたでしょうね。
父ジョンにはクリス・クーパー。なんと「アメリカン・ビューティー」と同じ年の出演なんですね。だからでしょうか、「カポーティ」では思い出さなかったあの作品のゲイのオジサンを思い出してしまいましたがな。ちょっとだけど。
息子にはこうあるべきという古い時代の頑固な父親らしさと、恋女房には何にもいえないという夫の弱さの両方を演じてこちらもご立派でした。
特典映像では、クーパー自身子供の頃にロケット作りに夢中になっていたと告白しておりましたな。
全国の高校生で競う科学コンテストに出品して優勝すれば各地の大学から奨学金付きで誘いが来ることを教えてくれたのが、物理の女教師ミス・ライリー。演じたのは「ジュラシック・パーク」から6年後のローラ・ダーン。
煤だらけ以外の人生もあることを子供達に教えていきたいと願う教師の思い。ホーマーたちが実現してくれた夢をその後に続く後輩達へ語ること、その事が彼女の希望だったわけですが・・・。
ホーマーたちがコールウッドで最後に打ち上げたロケットの名前が「Miss.Riley」でした。
この記事の冒頭にツイッターの呟きを転載しましたが、調べてみるとロン・ハワードとジョー・ジョンストンは同じ南カリフォルニア大学の映画学科の出身でした。年齢も四つ違いで、多分同じような授業を受けたのでしょう。スピルバーグの子供達と呼びたくなるような、彼の良いところを引き継いだ演出が似ています。
あらすじだけ聞けば単純な話なのに、そこに50年代の雰囲気を出す音楽を使ったり、地方の炭鉱町の環境描写、高校生達を手助けする鉱山会社のエンジニアのおじさん達とのふれ合いや、ガールフレンドのこと、ホーマー以外の少年達の人生模様も入れて、多分撮影フィルムの尺は上映時間の倍はあったと思うんですが、編集で削って削って出来上がった作品なのだと思います。実話を基にしながら、全てのエピソードを上手く絡めた脚本も上手いですね。
1999年の放送映画批評家協会賞で「ファミリー映画賞」というのを受賞したそうです。
尚、映画の原題【OCTOBER SKY】は、原作「Rocket Boys」のアナグラムだとネットに紹介されていました。
エンドロールの前に、ホーマーたち本人のフィルム(多分8ミリ)が流され、その後の彼等の人生なども紹介されました。
四人の高校生は全員大学に進み、そして卒業。クエンティンは石油会社のエンジニアになり、他の二人も銀行に勤めたり牧場を経営したりしたようです。
ホジキン病を患っていたライリー女史は31歳で亡くなったとの事。まだ元気な頃の彼女のフィルムも映し出されました。
父ジョンは76年に炭塵肺で亡くなり、母エルシーはその3年後に新婚旅行で行った思い出の地に移り余生を過ごしたそうです。
1965年にコールウッドは売却され、炭鉱は永遠に閉山されたとのことでした。
二週間ほど前に「自転車泥棒」を見ようかなとツイートしたけど、年末だし、暗いのにも躊躇して別の中古DVDを選びました。「遠い空の向こうに」。ロン・ハワードのような語りに面白く見ていたら、エンドクレジットで監督がジョー・ジョンストンと分かって納得。「ジュマンジ」、「JPⅢ」ですもん。
[12月06日 twitterで]
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1957年10月、ソ連が人類初の人工衛星スプートニクの打ち上げに成功した。このニュースは世界中を駆け巡り、アメリカ合衆国ウェスト・ヴァージニア州の小さな炭鉱町に住む高校生ホーマー・ヒッカムにとってもそれは衝撃的で、少年は自分もロケットを打ち上げたいと思うようになる。
ホーマーが生まれたコールウッドは採炭で成り立っている町で、彼の父親ジョンは鉱山会社の現場監督をしていた。家は勿論、家財道具も半分以上は会社からの支給品、町の教会の牧師でさえも会社の従業員だった。
厳格な父と、絵の好きな母ナンシーと、フットボールの上手い同じ高校に通う兄ジムとの四人家族。
父にとってジムは自慢の息子で(彼のフットボールの)試合は必ず見に行ったが、弟のホーマーは特にスポーツで目立つこともなく、又、町にも鉱山にも興味を示さないのでジョンは忸怩たる思いでホーマーを見ていた。
仲の良いロイ・リー、オデールを誘ってロケット作りを始めるホーマー。単純な素人考えで作った第一号はロケット花火の火薬を利用したオモチャ同然の代物で、一ミリも上に飛ぶことはなく、ただヒッカム家の庭の柵を壊しただけだった。ホーマーは自身の知識の無さに気付き、ふと学校の中で孤立している科学オタクのクエンティンに目を付ける。案の定、クエンティンはロケット作りにおける人類の歴史さえも紐解くことの出来る男だった。
ホーマー、クエンティン、ロイ・リー、オデール。四人の高校生のチャレンジは、やがて彼等の人生を大きく変えるものとなっていく・・・。
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後にNASAのエンジニアになったホーマー・ヒッカムの自伝「Rocket Boys」を基に作られたドラマで、ストーリーの軸はロケット作りが成功するまでの過程ですが、ドラマとしての軸は父と息子の葛藤、親子の愛の行く末になっていますね。
すなわち、父ジョンには石炭は鉄を作るのに必要なものであり、鉄はアメリカ経済の基盤を作っているもの、つまり炭鉱堀りはアメリカ社会を支えている誇りある男の仕事だと言う自負があり、そのことに敬意を払わない息子ホーマーに不満があるわけですが、一方のホーマーは、採炭の仕事によって父親は肺に爆弾を抱えており、自分は出来れば地上の仕事でひとかどの人間になりたいと思っている。その価値観のぶつかりですね。
父親と息子の対立。この普遍的なテーマが底流をなし、ロケット作りの成功と共に親子の和解が生まれるラストシーンには自然と暖かい気持ちにさせられます。
ホーマーに扮したのは当時19歳のジェイク・ギレンホール。11歳で映画デビューした彼の初主演作だそうです。
父親に認められない寂しさと自身の夢に向かう一途さ、周囲の人々に対する思いやりなどを繊細に表現した素晴らしい演技だったと思いますが、この年の賞関連には無縁だったようです。残念。僕が女性で、この映画を十代で観ていたら彼のファンになっていたでしょうね。
父ジョンにはクリス・クーパー。なんと「アメリカン・ビューティー」と同じ年の出演なんですね。だからでしょうか、「カポーティ」では思い出さなかったあの作品のゲイのオジサンを思い出してしまいましたがな。ちょっとだけど。
息子にはこうあるべきという古い時代の頑固な父親らしさと、恋女房には何にもいえないという夫の弱さの両方を演じてこちらもご立派でした。
特典映像では、クーパー自身子供の頃にロケット作りに夢中になっていたと告白しておりましたな。
全国の高校生で競う科学コンテストに出品して優勝すれば各地の大学から奨学金付きで誘いが来ることを教えてくれたのが、物理の女教師ミス・ライリー。演じたのは「ジュラシック・パーク」から6年後のローラ・ダーン。
煤だらけ以外の人生もあることを子供達に教えていきたいと願う教師の思い。ホーマーたちが実現してくれた夢をその後に続く後輩達へ語ること、その事が彼女の希望だったわけですが・・・。
ホーマーたちがコールウッドで最後に打ち上げたロケットの名前が「Miss.Riley」でした。
この記事の冒頭にツイッターの呟きを転載しましたが、調べてみるとロン・ハワードとジョー・ジョンストンは同じ南カリフォルニア大学の映画学科の出身でした。年齢も四つ違いで、多分同じような授業を受けたのでしょう。スピルバーグの子供達と呼びたくなるような、彼の良いところを引き継いだ演出が似ています。
あらすじだけ聞けば単純な話なのに、そこに50年代の雰囲気を出す音楽を使ったり、地方の炭鉱町の環境描写、高校生達を手助けする鉱山会社のエンジニアのおじさん達とのふれ合いや、ガールフレンドのこと、ホーマー以外の少年達の人生模様も入れて、多分撮影フィルムの尺は上映時間の倍はあったと思うんですが、編集で削って削って出来上がった作品なのだと思います。実話を基にしながら、全てのエピソードを上手く絡めた脚本も上手いですね。
1999年の放送映画批評家協会賞で「ファミリー映画賞」というのを受賞したそうです。
尚、映画の原題【OCTOBER SKY】は、原作「Rocket Boys」のアナグラムだとネットに紹介されていました。
*
エンドロールの前に、ホーマーたち本人のフィルム(多分8ミリ)が流され、その後の彼等の人生なども紹介されました。
四人の高校生は全員大学に進み、そして卒業。クエンティンは石油会社のエンジニアになり、他の二人も銀行に勤めたり牧場を経営したりしたようです。
ホジキン病を患っていたライリー女史は31歳で亡くなったとの事。まだ元気な頃の彼女のフィルムも映し出されました。
父ジョンは76年に炭塵肺で亡くなり、母エルシーはその3年後に新婚旅行で行った思い出の地に移り余生を過ごしたそうです。
1965年にコールウッドは売却され、炭鉱は永遠に閉山されたとのことでした。
・お薦め度【★★★★=友達にも薦めて】
以前企画にも取り上げたんだけど、その頃は感想を残してなかったんですよね~。
う~む、再見したくなってきた!
やっぱり、父と息子と先生の印象が一番強く残ってます。本当に演技が上手くて。
特にお父さんは、この時代の父親像を完璧に見せてくれて、もう頑固オヤジと聞いたらこのお方が思い浮かぶくらいです(笑)
聞き惚れてしまいました。(^ ^)
大好き!オールディズの定番ですね~
この甘い声と雰囲気好きですなぁ~
亡くなられた奥様も大好きでございました。
あ、
「遠い空のむこうに」拙記事にTB・コメント
ありがとうございました。
良作でございましたね~これは。
こういう感じの男子の青春ものは
貴重品ですよ~
>父と息子と先生の印象が一番強く残ってます。
改めて考えると、父親と先生が対峙するシーンって無かったんですよね。あれば、先生と父親との和解シーンも入れないといけないんですが、あればあったで良いような気もするけど・・・。
やはり、父子のドラマに絞ったんでしょうね。それが正解だったかも。
この辺のオールディズはナベプロの歌手の唄で覚えた口で。さて、「恋はボサノバ」は誰が唄ってたっけなぁ?
正に良作。
750円也でDVDめっけました、貴重品です。息子に観ろ観ろと先日からせっついてるんですがねぇ