最初に言っておくと、ここは化女沼レジャーランドという休業した遊園地である。休業といっても、破産したわけではなく、所有者はちゃんと存在する。私有地なので当然立ち入り禁止である。かつて、僕はこの中に入って撮影したことがあるが、それは紹介者が許可を取ってくれたからである。いまは、その紹介者が遠方に移転してしまったので、僕はもうこの内部に入ることが出来なくなった。
今回の写真、これは敷地に立ち入らず道路から撮ったものであり、しかも50ミリレンズで撮ってこの距離感なのである。不法侵入などしなくても十分楽しめるのである。
LEICA M9 / SUMMICRON 50mm (1st RIGID)
回転遊具は、どれだけ廻ったとしても、どこにも到達しない。例え、地球一周分の回転をしても、現在地から一歩も移動できないのである。そういう宿命を背負っている機械といえるのだ。出発点は到着点に変わり、到着点は再び出発点になる。それを延々と繰り返すだけである。子供たちの歓声に溢れた回転遊具を見るたびに、僕はやりきれない気持ちになる。希望と明るさに満ちた遊園地のなかで、これらの遊具だけは行き場の無い週末感に包まれているからだ。
そして今、この遊園地は時の流れを止めている。哀しき回転遊具も、行き場のない移動を繰り返した同じ場所で、静かに静かに朽ち始めているのである。その姿は、どんな遊園地に置かれた、どんな回転遊具よりも、美しく見えるのである。
EOS 6D / EF24-105 F4L
またまた化女沼レジャーランドに行って来た。今回の写真はEOSで撮影し、LightRoomで暖色に振った現像処理をしている。普段は、こういうことはしないけれど、こういう被写体の場合、EOSのお役所的な(堅実だけど面白みはないことの例えで、悪意はありません)ホワイトバランス処理では、どうしてもツマラナイ色になってしまうのである。例え多少破綻してでも、記憶色に近づけたかった。
ちなみに化女沼レジャーランドは、東北自動車道の長者原SAのすぐ近くにある廃遊園地であり、SA内からも観覧車は簡単に見ることができると思う。レジャーランド内の建物施設に侵入する輩もいると聞くが、所有者のいる管理物件であり、巡回の警察に発見されれば建造物侵入で現行犯逮捕されるので、注意されたし。このお伽話みたいな遊園地を、いつまでも残すためにも、節度ある行動が求められる。尚、化女沼レジャーランド詳細については、Wikipedia及び下記記事を参照して欲しい。
(当ブログにおける化女沼レジャーランドの過去記事)
○廻ることなき観覧車(2013年9月16日)
○観覧車#2 色彩なき世界(2013年9月17日)
○It's a state of mind(2013年9月19日)
EOS 6D / EF24-105 F4L
宮城県栗原市の旧細倉鉱山住宅である。取り壊しが決まっていたが、2007年公開の映画「東京タワー~オカンとボクと、時々、オトン~」のロケ地として整備された。結果的に鉱山住宅街が、ほぼそのまま保存されることになった。観光地として一般公開されていたが、2008年の岩手内陸地震(栗原市で震度6強!)、そして2011年の東日本大震災(栗原市で震度7!)と相次いで大地震が襲い、ダメージを受けた。建物の倒壊等はないものの、安全が確保できないとして、現在は一般公開は中止、廃墟化している。
今回で2回目の訪問。街がまるごと廃墟になったような、その規模に改めて驚かされる。解体を免れた貴重なものだけに、何とか今後も保存してほしいものだ。一般公開はされていないので、内部には入れないものの、外から眺めるだけであれば見学はできる(立入禁止箇所あり)。今回も見学に来られる観光客が結構いた。郷愁を誘う町並みである。
Leica M8 / レンズ各種
遊園地廃墟ものを何日か掲載したが、これで終わりにする。厳密にいえば、この遊園地は廃墟ではない。営業は、とうの昔に終了したが、施設自体は同じオーナーが売却せずに所有しているという。この遊園地を再開するという夢。「その夢を叶えてくれる人が出てくるのを待っている。それまで施設はそのまま残す」。これがオーナーの意思であるそうだ。その道のりは、確かに容易ではないだろう。だが、再建の可能性を考察することが、この記事の目的ではない。
『青春とは人生のある期間を言うのではなく心の様相を言うのだ。優れた創造力、逞しき意志、炎ゆる情熱、怯懦を却ける勇猛心、安易を振り捨てる冒険心,こう言う様相を青春と言うのだ。年を重ねただけで人は老いない。理想を失う時に初めて老いがくる。』サミュエル・ウルマン
再開しようとする意思、これ自体がこの遊園地を維持させ、それが失われるとき、この遊園地は崩壊するだろう。
Leica M8 / Biogon 28mm F4
メリーゴーランドは稼働中の新しいものであっても、それ自体が郷愁を誘う存在である。増してや、回転を止めたメリーゴーランド。それは途轍もないほど哀しく見える。機械なので、意思などあろう筈もないが、「動こう、前へ行こう」としているのに、時間軸が断ち切られ突然停止したように見える。現実世界では停止してはいるものの、どこか別の世界では動き続けているのではないか。そん気がしてならない。
Leica M8 / Biogon 28mm F2.8
昨日の観覧車のモノクロバージョン。若干のゴミ消しをしただけのJpegオリジナルである。ビオゴンの描写だが、これは恐るべきシャープさである。錆びの感じとか、色褪せたペンキの色に未練があり、カラー(RAW)でも撮ったのだが、やはりモノクロの描写のほうが圧倒的に面白い。この日は、撮影段階でカラーかモノクロか迷ってしまい中途半端になった。カラーへの未練を断ち切っていれば、もっと迫力ある姿を捉えられていたのに(はず)。ちょっと反省である。
Leica M8 / Biogon 28mm
その観覧車は、最後に動いてから10年以上になるという。その観覧車は廃止されたわけではなく、停止されているのだという。そして、恐らく5年後も、いや10年後も停止されているだろう。いつの日か再開する可能性がある、そのことだけが観覧車を倒壊から守っているようである。こういう運命を辿る観覧車は他にはない。
Leica M8 / Biogon 28mm F2.8 ZM