コチと聞いただけで白身の魚だと判断できるようになるのは、店を始めてしばらく経ってからのことでした。
十六~七年前のこと、ふと見ていたテレビ番組『TVチャンピオン・~魚通選手権~』にはまだ高校生くらいだったさかなクンが出ていました。出題は“これから一貫ずつ出てくるにぎり寿司のネタは白身魚で、その名前を当ててください”というものでした。さかなクン(当時宮沢君)は自分の番が来ると他の出場者がじっと眺めたり食べたりしてゆっくり答えを出すのとは対照的に、目の前に出た一貫をパッと見ただけで「わかりました!」と即座に正解を出してしまうのでした。ソイ、ハタ、ムツ、メジナ…。私にとって馴染みのない白身の魚の名前が次々に挙がっていきました。ひょっとしたらその中にコチも入っていたのか…それすらハッキリしない、そんなコチにまつわる初めての記憶でした。