[2025年]野上啓三が見ている豊洲市場の風景 寿司屋の七十二候
[穀雨・第十六候 葭始生あしはじめてしょうず]4/20~4/24
[穀雨・第十七候・霜止出苗しもやんでなえいずる ]4/25~4/29
[穀雨・第十八候・牡丹華ぼたんはなさく]4/30~5/4
・千葉 勝浦 きんめだい 今、店
・愛媛 八幡浜 イサキ 今、店
・青森 八戸 イガウニ 今、豊洲
・北海道オホーツク海根室海峡ミンク鯨 畝須(うねす)今、豊洲
・北海道 小樽 シーズン初入荷 蝦蛄(しゃこ)今、店
・東京 式根島 赤イカ 今、店
5/4(日)5(月)6(火)お休みさせていただきます。
野上啓三インスタグラム、sushi43nogami2←こちらに変更しました。
すべての魚・貝、天然ものです。
◇営業時間について◇火曜~土曜17:30~21:55※ラストオーダー(酒類・酒類以外全て)21:25まで
日曜お子さんデーは11:30~17:30です。※日曜はお子様の日です
店には月曜(+第一日曜日)以外10:30~営業終了+aおりますのでお気軽にご連絡ください!03-3356-0170
※レストラン予約代行サービス『オートリザーブ』でのご予約は日付・時間帯にかかわらず受け付けておりません。
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おかみノート
主人の実家はお寿司屋さん。私はなんにも知らないドシロウト。
今まで見たり聞いたり体験した 寿司屋のいろんなことを書いておきたいと思います。
『 小樽の店 』
小樽に来たからにはどうしても納得のいく寿司屋に入りたかった。
ゴールデンウィークを使って旭川空港から入り、レンタカーで道央・道東・稚内、札幌と巡り車を返して電車で小樽に来た。
正味四日間で小さく北海道を一周するというタイトなスケジュールでしかも予約した各地の宿泊ホテルの夕食の時間には絶対に遅れてはならないというツアーを選んだため、ずっと走りっぱなし、パリダカのような新婚旅行だった。
さてどうしよう。
小樽になんのコネも知識もない私たちは、地元の人がよく行く寿司屋を訊いてしまうのが一番早いと思った。
「えー、いいですけど・・・歩いて二十分くらいありますよ」
寿司屋を知っているというガラス工芸品を置いてある店の人が書いてくれた地図にはほとんど目印らしきものはなく <アーケード街が終わるかなー・・というあたり> というヒントだけを頼りにひたすら歩いてきた。
繁華街からどんどん遠ざかっていた。
「アーケードったってなぁ・・三十~四十年前はここが栄えてたんだろうけどなぁ。ほとんどシャッター閉まったまんまじゃん」
「看板は出てないかもって言ってたよね」
日が暮れたせいか小樽特有の飴色の空気はますます濃くなってきた気がする。
「・・ここじゃねぇか?」
ガード下の焼き鳥屋という感じの店構えだった。
引き戸の上のほうを覗くと奥に裸電球のオレンジが見えた。
大将がいる。
「ここだ、混んでる。お客さんでいっぱいだよ」
入り口に待合用の丸イスが二つ並んでいた。
「いらっしゃい。時間かかりますけど、急ぎます?」
手の動きを止めずに私たちを見ながら大将が言った。
首をブルブル振ると大将は目線を落として再び仕事に没頭した。
「どうぞ」
声がした方を向くとエプロンをした女将さんがカウンター越しに丸イスをすすめてくれた。
カウンターに座っている人の延長上にあるイスに並んで腰を掛けると大将と女将さんの動きがちょうどよく見えた。
大将は使い込まれたまな板の上でマグロの表面を焼いてヅケにしたものや煮蛤を握っては目の前のお客さんに出していた。
「江戸前だね」
「生のエビやホタテばっかりじゃねぇな、だから人気あんのかな」
女将さんは右手に菜箸を持ったまま焼き網の穴子を凝視していた。
家庭用コンロのかなり強火で炙っている。もうもうと煙が出ていた。
ほんの一瞬の動きで大将の待つまな板へのせた。
大将は研ぎに研いで小さくなった出刃の刃先をコトンと穴子の上にのせる。
出刃の重みだけで穴子の肉厚の部分が二つに分かれ、くっついたままの皮目は左手を峰に添えながら体重を少しかけるだけで切り離した。
切ったところから湯気が昇り小骨がワシャワシャと見える。
「骨すげぇな。かなり大きめの穴子使ってるな」
大将はその手では似合わないような細かい動きで小骨を何本か抜き、すばやく握った。相当熱いはずだ。
「はいっ」
大将の合図で素早く女将さんがテーブル席にその穴子を運んだ。
三十分後にはそのテーブル席に座っていた。
箸を置き、垂れた煮詰めがくっついたゲタに視線を置いたまま飲み込んだ。
シャリと穴子と煮詰めと、黒く焦げてピンピン出ていた小骨も一緒くたになって食道を通過していった。
「・・おいしい」
主人も黙ってはいるけれどおいしいと思っているはずだ。
いつになるかわからないけれど
こんなふうな店をやりたいと思った。
『自宅の引越し1』
入居審査までして入った麹町のマンションだったが、四谷三丁目で店をやるからには近くに引っ越してきたほうが何かと便利だということになった。
はたと気づくと開店日まであと一ヶ月を切っていた。
「ちょ、ちょっと間に合う!?とりあえず、引越し作業が出来る日はいつ?」
合羽橋で食器を買う日、内装業者さんと立ち会う日、看板のデザイナーさんと会う日、店の賃貸契約をする日、店で着る白衣やエプロンを買う日、ひとつひとつ消していくと完全に空いているのは一日だけだった。
手帳をなめるように見ながら私は言った。
「店の内装工事が始まってからでもよかったらチャンスは何日かあるけどね。ただ、内装業者さんが工事に入ったらお茶とお茶菓子を毎日お届けするからその間はちょっと引越し作業から私は抜けるけど」
すると主人は間髪入れずに答えた。
「いや、工事に入る前に引っ越そう。そのほうがいいよ、バタバタしないし」
「じゃあ、引越しはこの空いてる日に決定ね。物件はまだ決まってないけどね」
「もうそこに合わせてやるしかないな」
心なしか主人の顔は白っぽくなっていた。
「七万、管理費込みでも七万五千円まででお願いします」
パイプ椅子に座ったまま二人同時に頭を下げた。
店の契約をする不動産屋さんで自宅も探す事にした。
担当は同じKさんだ。
Kさんは主婦でキャリアウーマン、“ガッツ”と“自然体”が溶け合う不思議と惹きこまれるパワフルな方で私たちは全幅の信頼を置いていた。
息子さんが私と同い年だということでとても親近感を持ってくれていた。
「七万。・・え?そりゃ、あるわよ~。まぁ気に入るかどうかは見ないとね。・・そう、二人で住める広さでね。え?今日決めるの?あらま大変、じゃ、あるもの全部手配しておいてあげるから、とりあえずこれ見てきて」
鍵と間取り図と地図を手渡された。
不動産屋さんが立ち会わなくていい物件というものがあるというのに驚きつつそのアパートに向かった。
この土地に賃貸で住みながら自営業をしているご夫婦と知り合いだったので、「どうですか?」と訊ねたことがある。
六万円台でも住む家はあると聞いていた。
「とにかく出費は抑えて。ボロアパートだって暮らしていけるんだから。そうじゃないとやっていけないよ」
と言われた。
でも、あまりに劣悪な環境だときっと参ってしまう。
駆け引きが甘いのかもしれないが、提示額はそういった意味も含めて少し多めに決めた。
「あ、あった、ここだよ。102号室」
場所は店から五分くらい。 まぁ、そうわるくない。
「え?」
となりの101号室のポスト。紙で挿む表札のところには苗字が四つ、所狭しと書いてあった。マジックで殴り書きだ。
「2K・・だよね?」
鍵を開けて入ると台所二畳ほど、奥に四畳半、六畳。
そして突き当りが足元まで窓になっていて、庭に出られる。
「おー、芝生じゃん。洗濯機は外に置くんだ。・・ん?」
101号室との間に垣根はなく、庭がお隣さんと一緒だった。
ショックを受けつつもサンダルを履いてウロウロすると隣はカーテンが閉まっていて人の気配がまったくなかった。
首だけ出して様子を窺っていた主人が小声で言った。
「おい!洗濯機、となりねぇぞ!!」
四人で住み、垣根はなし。もしここに洗濯機を置いてうちがほとんど留守にしていれば・・ちょっと想像がついた。
洗濯機、使われるかもしれない。
窓の鍵を閉め、風呂場を覗くと追い炊き式だった。
「あ、追い炊きだ。昔うちもこの型だった、懐かしー」
お風呂場の反対側を見ると鎖を引いて水が流れる式のトイレで、便座が外国にあるような高さのものだった。
どこかで見たことがある・・。
そうだ、参宮橋のオリンピックセンターの選手宿泊施設がそのまま貸し出しペースになっていてそこの便座はこんな感じだった。ということは東京オリンピックの時代のものなのか・・。
二畳の玄関兼脱衣所兼台所に居る主人が言った。
「このガス台もちっちぇけどさ、換気扇のとこになんか説明が書いてある。なに、“入浴の際は風呂場のドアを 少し開け、換気扇は必ずON。命に関わります”だってよ」
「え?なんで」
「なんでだろうな。換気が必要ってことだよな」
もう一度風呂釜を見て驚いた。
煙突が途中で切れてそのままになっており、排気が中に充満していくようになっていた。主人が叫んだ。
「なんで煙突が外に続いていないんだよ!これじゃたしかに換気しないと死んじゃうよ!!」
急いで鍵を閉めて不動産屋さんに戻った。
明日は『自宅の引っ越し2』です
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あなごの握りをのせるうつわ、左から初代⇒二代目⇒現在(山中塗)。[2023年][2022年]
[2021年]*お知らせ*4/26~5/12まで休業いたしました[2020年]5/2(土)~5/6(水)休業いたしました
[2019年]野上啓三が見ている豊洲市場の風景 寿司屋の七十二候
[穀雨・第十八候・牡丹華ぼたんはなさく ]5/1~5/5
・東京新島 赤イカ 今、豊洲
・本マグロのヅケ2-2【動画】今、店
・本マグロのヅケ2-1【動画】今、店
・北海道小樽 蝦蛄(シャコ)初入荷 今、豊洲
・兵庫淡路島 アズキハタ 今、店
・北海道噴火湾 活けボタン海老【動画】今、店
[2018年]野上啓三が見ている築地の風景 寿司屋の七十二候
[穀雨・第十七候・霜止出苗しもやんでなえいずる]4/25~4/29
[穀雨・第十八候・牡丹華ぼたんはなさく] 4/30~5/4
・大島 トコブシ 今、店
・5/4(木)築地 開市です 今、築地
・常磐 ほうぼう 今、店
・大分 佐伯(さいき)キス 今、築地
・神津島 赤イカ 右 佐島 スミイカ 今、店
・明石 アマテカレイ 今、築地
・新湊 白エビ 今、店
・明石 アズキハタ 今、店
・明石 虎魚(オコゼ)今、築地
[2017年][2016年]
[2015年]
[2014年]
5月6日築地風景[2013年]コハダの白子は大きいコハダが出回る今頃にしか登場しません。来月中旬から下旬、遅くても七月にはシンコがお目見えするのではないでしょうか。
[2012年]五月上旬のネタケースです。
右からアジ(三重)、真サバ(千葉館山)、アジ(鹿児島出水)、真サバ(京都舞鶴)、マコガレイ(千葉竹岡)です。
真サバはそろそろ終盤となります。真夏は真サバではなくゴマサバを仕入れます。
アジは夏が旬で、どんどんいいものが出てきます。
カレイもマコだけでなく、これから石ガレイ、目板ガレイ、星ガレイなどが登場します。
[2011年]スルメイカの子供、麦イカの一夜干しです。
[2010年]昨日は立夏、GWが終わると品揃えも途端に夏らしくなります。夏のフグといわれるコチ、今日は1.1kg、相当良いものだそうです。
[2009年]ひらまさは17.2kgの1/8を仕入れてきましたので、この大きさです。幽庵焼き用にまず切りまして
ネタケース(お刺身・にぎり)用はこんなふうに。
柚子と醤油と味醂とお酒が入ったところに浸けまして
先ほど引き揚げました。刷毛で浸け汁を塗りながらじっくり焼きます。
静岡・駿河の『めぐりあい』、…もう、めぐりあっちゃってください!