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四谷三丁目すし処のがみ・毎日のおしながき

北海道の生いくらが入りました。8月上旬から始まり9月〜10月と粒が大きくなって岩手産になり、11月上旬には食べ納めです。

第443回にちよう☆ひるのがみ(お子さんデー)

2025-05-11 01:01:00 | 5/1~5/31


野上啓三インスタグラムsushi43nogami2←こちらに変更しました。
すべての魚・貝、天然ものです。
◇営業時間について◇火曜~土曜17:30~21:55※ラストオーダー(酒類・酒類以外全て)21:25まで
日曜お子さんデーは11:30~17:30です。※日曜はお子様の日です
店には月曜(+第一日曜日)以外10:30~営業終了+aおりますのでお気軽にご連絡ください!03-3356-0170
※レストラン予約代行サービス『オートリザーブ』でのご予約は日付・時間帯にかかわらず受け付けておりません。
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おかみノート
主人の実家はお寿司屋さん。私はなんにも知らないドシロウト。
今まで見たり聞いたり体験した 寿司屋のいろんなことを書いておきたいと思います。

『 留め袖 』
普段着るような着物の試験が終わったと思ったらすぐに留め袖の試験があると言われ、この三週間は予行練習に明け暮れていた。
十分間で着終える。しかも手の感覚だけを頼りに鏡を見ずに帯まで締める、という内容だ。
「留め袖は着ようとすると重くてズルズルずれてしまうから自分で着る着物の中で一番難しいの。これが着られるようになったら何でも上手に着られるわよ。それにね、結婚式場に行って着替えのお部屋に通されるでしょ。鏡なんかひとつくらいしかないんだから。仕上げに後ろ姿をちらっと確認するくらいしかできないわよ。狭い部屋で何人もで着替えるし、半畳くらいのスペースで出来るようになれば、あとは広くなる分には問題ないでしょ。やっぱり留め袖って、やっとくといいのよ。これはほんとよ」
先生は言った。
私以外の四人のメンバーはほぼ合格間違いなしだった。
また私だけ出遅れている。普通の着物の試験の時もそうだった。
もともと着丈が短い母の着物で無理におはしょりを作っていた、というのも苦戦した理由である。でもこれは言い訳だ。
何度もやらないと習得できないタイプなのだ。
今回の留め袖もまた何度着ても胸のところが微妙にずれて、はだけて、決まりがわるく、その原因がわからなかった。
(この池袋教室で、しかも私のクラスで落第者を出すわけにはいかない)
向かい合って指導してくれている先生の顔がそう言っているようだった。

母と同い年の先生は着物のセンスがとてもよくて、毎回先生の着物を見るのが楽しみでなんだかんだ一年半も続いたようなものだった。
「野上さん、いい?前身ごろはバストトップの上にかぶせてもってくるのよ。あなたはいつもここで間違っちゃうからずれているの!わかった?ほら、やってごらんなさい早く、バストトップの上、ほらっ」
え?ちょっと待ってなに、バストトップ?平浩二?あれはバスストップか。
若干イラついていた。
マンツーマンのスパルタ指導で頭がグルグルになっているところに抽象的な馴染みのないバストトップという名称を言われても何のことだかよくわからなかった。
しかも下着メーカーに勤めていた人間としての余計なプライドが頭をもたげた。
バストまわりの呼び方や範囲はたくさんあるのだ。
このバストトップがいったいバストのどの位置なのか、胸のトップの頂点そのものなのか、胸のトップのあたり
全体を指すのか。それを突き止めなければ納得もできないし、前へ進めないと思った。
「先生!バストトップというのは、つまり“乳頭”のことですか?」
先生の耳はみるみる真っ赤になった。
「にゅ、にゅう・・?まっ!なっ・・の、野上さんッ!なんてことをッ!!」
先生はいきなりついたての後ろに入ってしまった。
二つ年下の同級生が自分の練習を止めて留め袖をざっくり羽織ったまま足袋で畳を擦りながらカラクリ人形のように近寄ってきた。
「もうっ!野上さんってば最高ッ!面白いねー。くぅ~」
私の背中をバンバン叩きながら大笑いしていた。
真面目に「乳頭」と言ったつもりだった。
べつに「乳首」と言ってもよかった。でも、「ち・く・び」と口に出すのはなんだか恥ずかしいから医療用語っぽい「乳頭」を選んだだけだ。
例えるならば「ハマる」と言うのは俗っぽいから「著しく傾倒する」と言い替える、そんなノリで言ったつもりなのに。
「乳頭」で怒ってしまうなら、いっそ業界用語でいうところの「ビーチク」とでも言ってしまえばよかったのか?
いずれにしても私の不適切な発言で教室の空気を汚してしまったことには違いない。
先生がついたての奥から出てきた。
「先生、・・あの、すいませんでした。そんな意味で言ったんじゃないんですけど、ヘンなこと言って、すいませんでした」
頭を下げた。足袋を履いた先生の足と、足袋を履いた自分の足が見えた。
「いいのよ、いいのよ。わかった、わかった。・・はいっ!ほれっ、がんばりましょ―――!」
肩をポンポンと叩いてくれた。
謝って、赦してもらえた。
職場のような厳しい場ではなく、もう少し甘い、・・学校生活などの人間関係の中で起こった、小さな小さなイザコザの着地点。
謝るのは悔しくて、でも、ほっとして、でもやっぱり悔しくて。
小学生の頃はそういうことがあると溢れ出る涙を隠すために、いつもハイソックスを直すフリをして下を向いてごまかしていた。
今ならわかる。私があの時泣いていたのは、つまんないプライドのずるくて弱い自分を見据える勇気がなくて、泣くとなんでもうやむやにできそうだったから涙を出していたのだ。
三十三歳でやっとわかるっていうのも情けない。
先生が「がんばりましょ―!」と言った時、同級生がみんな私を見てうん、うん、とうなずいてくれていた。
テレビドラマみたいだった。
とっさにうつむき、留め袖を畳む作業に没頭した。

明日は『留め袖2』です
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1dayアーカイブ2024年~2001年5月11日のおしながき[2024年][2023年][2022年]

先日私(野上有紀子)、尿路結石のため救急車→入院という運びとなりました。3/22~24(入院)、3/29~30(野上啓三発熱)で休業になりご迷惑をおかけした皆様、当サイトをご覧になって心配をしてくださった皆様、本当に申し訳ございませんでした。今日はその病院で退院の際「最終検査日は5/11水曜で!」と告げられたので店を休みにして行ってきます。ちなみにその後現在に至るまでずっと元気なのでご安心ください。
おかげさまで二十二年が経ちました。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。 

[2021年]*お知らせ*5/31まで休業いたしました
[2020年]休業いたしました

[2019年][2018年][2017年]
[2016年]本日もいつも通りがんばります!よろしくお願い致します。撮影:あだちみゆき[2015年]店を始めて15年が経ちました。今日は築地でいつもお世話になっている仲買(仲卸)さんのところへご挨拶に行ってきます。ご存知かと思いますが主人の仕入れの精度はとてつもない目利きの仲買さん方のおかげで上がり続けております。ありがたいことに主人の好む魚を熟知してくださってさらに提案もしていただいています。「変わってないね」と言われるには前進、向上していかないと、と思っております。16年目もがんばります。今後ともご指導ご鞭撻の程宜しくお願い申し上げます。      四谷三丁目 すし処のがみ     野上啓三  ・ 有紀子[2014年]014

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アサヒスーパードライ・プレミアム樽生、好評につき金曜日再度入荷しました。0069:35,シャリを炊き始めました。
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10:18、酢合わせです。005[2013年]003_2 004 赤いか、くるま海老、縞海老、キス、春子、スズキ、いがうに、生トリ貝、初鰹、活けじめ鯵、新規入荷です。

 

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赤イカ、今シーズン初入荷です。ぶどうえび、北海生だこ久々の入荷です。

 

活け宝彩(ほうさい)海老、赤貝、生トリ貝、好評につき新規入荷です。

 

本日で店をオープンしてから丸十二年が経ちました。

 

皆さまに支えられここまでやってこれました。

 

これからも前を見て進んでいきたいと思います。どうぞ宜しくお願い申し上げます。004

 

005[2011年]

 

今日もまた、いつも通りに開店です。

 

こうして店を開けられることに感謝します。

 

 

 

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[2010年]おかげさまで本日10周年を迎えることができました。

 

支えてくださった皆様のおかげです。

 

本当に、本当にありがとうございます。 

 

こういう日には店を開けて何か特別なことをするべきなのでしょうが‥。すいません、イベント的なことは何もやらず、しかも自分たちだけで旅行行っちゃいますっ!!

 

14(金)から通常通りスタートします。今後ともどうぞよろしくお願い致します。

 

          四谷三丁目すし処のがみ 野上 啓三 ・ 有紀子

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[2009年]ノンアルコールビールテイスト飲料・キリンのフリーを置くことにしました。

採用の一番の理由は

アルコール分が0.00%であるということです。

 

 

 

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5月10日(土)

2025-05-10 17:00:00 | 5/1~5/31


野上啓三インスタグラムsushi43nogami2←こちらに変更しました。
すべての魚・貝、天然ものです。
◇営業時間について◇火曜~土曜17:30~21:55※ラストオーダー(酒類・酒類以外全て)21:25まで
日曜お子さんデーは11:30~17:30です。※日曜はお子様の日です
店には月曜(+第一日曜日)以外10:30~営業終了+aおりますのでお気軽にご連絡ください!03-3356-0170
※レストラン予約代行サービス『オートリザーブ』でのご予約は日付・時間帯にかかわらず受け付けておりません。
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おかみノート
主人の実家はお寿司屋さん。私はなんにも知らないドシロウト。
今まで見たり聞いたり体験した 寿司屋のいろんなことを書いておきたいと思います。

『 振り袖 』
明日のお稽古は振り袖だ。
十三年前、成人式には出席しなかったし振り袖を着た写真も撮っておかなかった。
ならば三十歳を過ぎたとしても七五三以来せっかく晴れ着を着るのだから親に見せておこうというのが娘ゴコロというものだ。
着物教室用のカバンの中にカメラを入れた。

教室に着くとすでに貸衣装の振り袖を広げて雑談しているひとが何人か目に入った。
「おはようございまーす」
小さい声で挨拶をして靴箱に自分の靴をしまっていると
「おはよう、・・あれ?野上さん、お化粧してる」
「・・ん?髪もちゃんとアップにしてるじゃん!あ、きょう振り袖だからだ~」
同級生に目ざとくチェックされてしまった。
ふだんの練習の時はシャワーを浴びたまんまの顔で頭は茶色のゴムでぐるぐると高い位置にしばりポニーテールだと襟足に髪がかかってしまうので最後のひとくぐらせを中途半端にして髪を挟み、つまり家にいる時と全く変わらない状態で授業を受けていた。
いくら無頓着な私でも晴れ着にはちゃんとしたヘアメイクをしたほうがいいくらいわかる。振り袖を着るというだけでこんなにも気分が昂るものか。いつもより少し早く起きいつもより華やかな気持ちで仕度をして電車に乗ってここまでやってきた。
「野上さんたしかオレンジだったよね」
同級生が箱の中から畳んだ振り袖を渡してくれた。家から持ってきた袋帯もオレンジ色だった。
先週、好きな色を生徒が順番に選んでいった。私のところにきた時には青かオレンジが残っていた。
オレンジ色の帯を持っているならば青の振り袖が映えると思う。
しかし、七五三の時の母の一言がよみがえってきた。
「肌の色が白いひとは赤、青、ピンクが似合うのよ。有紀ちゃんは色が黒いから黄色がよく似合うわ」
山吹色の着物に千歳飴を持った自分の姿を思い出した。
「オレンジでお願いします」
思わず口走っていた。

「はい、ふたり一組になってー。それぞれ相手に着せてあげてくださーい」
自分のを着付けてもらう時は鏡は見えない。
でも、いまどうなっているかはわかる。
高い位置で帯を締め、帯揚げをいりく結びにされていくだけで振り袖だぁ、華やかだなぁ・・と思う。
少女の気持ちになってうっとりしていると
「さ、できたよ」
と鏡を向けられた。
「うわっ」
そこには全身オレンジの、やや疲れ気味なミカン星人が立っていた。
ファンデーションはくずれ、目じりにはシワ。
顔全体に脂が浮いていた。それで“大振り袖”という違和感。あまりの似合わなさに呻き声が出た。
体を斜めにして帯を見ると、かわいらしいふくら雀を背負っている。
「・・やっぱりちょっとムリがあるのかなぁ」
がっくり肩を落としていると、あとの四人は「かわいいー♪」を連呼してお互いを褒めあっていた。
よく見ると、けっこうみんな似合っていた。
二十代の人はもちろん、私より年上の人もいたが若く見えるし馴染んでいる。
私に足りないものは何だ。
何で私だけウキウキできないんだろう。
「野上さんもカメラ持ってきたんでしょ?撮ってあげるから貸して」
己を鼓舞できないまま撮影タイムになり、それでも必死にポーズを作って“いかにも成人式”という感じの写真を何枚かは撮った。
「はーい、じゃそろそろ着替えてくださーい」
先生の指示で一斉に帯を解き始めた。
隣で着替えている同級生に話しかけてみた。
「ねぇ私、腐りかけのミカンみたいじゃない?」
「そんなことないってー。いいじゃん似合ってるよ」
「“オレは、オレは、腐ったミカンじゃねぇっ!”」
「・・・?何それ」
「加藤優のマネ」
「かとうまさる?」
「金八先生の」
「え・・」
「松浦悟と同級生の、ほら松浦悟は沖田浩之」
「・・・・」
「加藤優は直江喜一」
「・・ごめん、わかんない」
そのあとは黙って着替えた。

「写真が届いたよ」と母から電話があったのは定休日の昼間だった。
「お父さんがね、“有紀子らしいや”ってウケてたよー」
「私、なんだかミカンのお化けみたいじゃなかった?」
「あははは」
「もしくは売れない演歌歌手」
「まぁそんなこともないけどね・・」
「クラスでみんな盛り上がってたんだけど、私だけテンションあがんなくてさ・・」
と言うと母は言った。
「三十過ぎて振り袖着りゃあんなもんでしょうよ。土台ムリがあるんだから。あなたね、気負い過ぎ」
そうか。
私に足りないものは肩の力を抜くことだった。

明日は『留め袖』です
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1dayアーカイブ2024年~2001年5月10日のおしながき[2024年[2023年][2022年]
キスがそろそろ出回る季節です。
江戸前の寿司ダネとしてだいぶ昔からあったようです。明治初期のにぎりずしを表す絵『両国與兵衛・明治初期のにぎりずし』には白魚や小鯛・鯵・赤貝・いかの印籠詰めなどと並んでキスもラインナップされていました。主人はその絵を見て酢〆だと推測しました。皮が引いていない付いたままの状態だったからです。

それから百年以上の時が経ち、流通がよくなって鮮度のいい魚が手に入るようになりました。全国から選り抜きの魚が毎日築地に集まってきます。キスはおもに愛知や江戸前からが多いです。
当時は酢〆だけだったかもしれませんが今は生のキスもおすすめです。
にぎりでお出しするとき塩を軽く振り、スダチを数滴垂らします。

私はこのにぎりは主人のすしの特徴を表す代表的なもののひとつだと思っています。
淡いけれどもはっきりと印象に残る、という驚きがあります。

[2021年]*お知らせ*5/31まで休業いたしました

[2020年]休業いたしました
[2019年][2018年][2017年]
[2016年]始めてからしばらく経ちました。
[2015年]


008今、築地
[2014年]ようやく車海老が入りました。009
山形の野生のあさつき、002
酢の物に入ります。006
ピリッとした辛みと湯がいた甘みを自家製ポン酢でおたのしみください。005



 



日本酒、13本入りました。マコ、ニシン、おこぜ、とり貝、スミイカ、あじ、新規入荷です。007012_2
トリ貝、やや大きいものが入りました。いがうに新規です。お通しは由比の生さくらえびです。



004[2012年]



 



ゴールデンウィーク中は芝海老が切れていましたが、ようやく手に入りました。芝海老のおぼろ、完成いたしました。



 



 



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004[2011年]よりぬきのこばしらアンド青柳、



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スズキ、



011 イサキ、



012 メジです。



 



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[2010年]10月1日から5月31日までは青い暖簾、6月1日から9月いっぱいまで白い暖簾になります。



 



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[2009年]ノンアルコールビールテイスト飲料・キリンのフリーを置くことにしました。



採用の一番の理由は



アルコール分が0.00%であるということです。



※2011年5月現在はサントリーオールフリー瓶を採用しています。



 

 

 

 

 

 

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5月9日(金)

2025-05-09 17:04:00 | 5/1~5/31


野上啓三インスタグラムsushi43nogami2←こちらに変更しました。
すべての魚・貝、天然ものです。
◇営業時間について◇火曜~土曜17:30~21:55※ラストオーダー(酒類・酒類以外全て)21:25まで
日曜お子さんデーは11:30~17:30です。※日曜はお子様の日です
店には月曜(+第一日曜日)以外10:30~営業終了+aおりますのでお気軽にご連絡ください!03-3356-0170
※レストラン予約代行サービス『オートリザーブ』でのご予約は日付・時間帯にかかわらず受け付けておりません。
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おかみノート
主人の実家はお寿司屋さん。私はなんにも知らないドシロウト。
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『 足袋 』
きもの教室に持っていく道具を確認しては大きめのカバンに入れていく。
白い熨斗烏賊みたいになっている足袋は二十四cm。
「足袋はね、一度か二度使って洗ったものだけどお稽古なら別に問題は無いでしょ。とりあえず家にある着物関係のものは全部送るから、まぁ勝手におやんなさいな」
実家の母は言った。

「はいっ靴下を脱いで、持ってきた足袋を履いてくださーい」
着物姿の先生が歩きながら声を掛けていく。二十畳ほどの稽古場に横並びで十五人、そして前にも十五人。
初級講座は無料のせいか大盛況だった。
取り出した足袋を見て動きが止まった。
指の入る部分の分かれ目が親指:他の指=1:4のバランスのはずなのに、私の足袋は親指+人差し指+中指:薬指+小指=3:2になっていた。ゴソゴソと履いてみると中指と薬指のあいだに分かれ目がきた。これはおかしい。両隣の人を見ると既に履き終えていた。
「はいっ次いきますよ、立ち上がってー」
まずい、先に進んでしまう。このまま進まれると困るので勇気を出して質問した。
「先生、親指が入る場所に三本くらい指が入っちゃうんですけど・・」
目の前を通り過ぎようとした先生が立ち止まり、私の足を見て言った。
「あなた、ちょっとこれ、左右反対よ!コハゼが外側にきちゃってるじゃない、待っててあげるから急いで履き替えなさい」
寿司屋の女将なんだから着物くらい自分で着られなくちゃと飛び込んだ教室。
足袋は七五三を含めて数回は履いたことがあるのに、まさか自分がそんな簡単な間違いを冒すとは。
横に並んだ人たちがなんとなく顔を出しては引っ込めるという動きを始めた。
前の列の人たちも荷物を捜すふりをしてチラチラ後ろを見ている。
(足袋の右左もわからないアホはどんな顔だろう)
空気がそうこだましているようだった。
体育座りの姿勢で私だけが必死に動いている。
耳が熱い。

『 浴衣 』
通い始めて三ヶ月。
そこのきもの教室はすべての教材を一斉に買わせるのではなく手持ちのものがあればそれをどうぞお使い下さい無ければ購入もできますよという方針だったから、お金が無くてやる気だけ満々の私としてはなんとか母から送って貰った着物関係のダンボール箱の中から間に合わせようと必死だった。
自分が持っていく帯や長襦袢は教室認定のワンタッチで開閉できる洗濯ばさみのようなものが付いているものとは違っていた。
それらを欲しいとは思わなかったけれど自分だけが教室認定のものをひとつも持っていない状態がずっと続くとイヤでも目立ってくる。
もちろん何も買わなくても責められることはない。
ただ何というか、例えばヤクルトの外野席で皆がビニール傘を振っている横でジャビット人形を抱きながら読売新聞を読みふけるみたいな居心地の悪さがそこにはあった。
教室が勧めるものをほとんど全部買って先生と和気藹々な雰囲気で授業を受けている人たちが羨ましかった。
次の授業は “浴衣の着付け” だった。 
前日にまたダンボール箱に手を突っ込んだ。
すると、きちんと畳まれた白地に紺のチェック柄の浴衣が出てきた。
「お祖母ちゃんが縫った浴衣も入ってるからね」と母が言っていたのを思い出した。
拡げてしまうときちんと畳めないのでそぉーっと持ちながら柄を見ると、チェックの線が竹になっていて節々がポップな感じに切れている。
ひょっとしたら江戸紋様のなんとかいうものなのかもしれないが、見ようによってはエルメスだかセリーヌだかのスカーフに縁取られている柄に似ている気がした。海外のブランドがもし浴衣を作ったらこんな柄になるのかもね、なんて思いながらカバンに詰めた。

「浴衣はね、裏に力布が付いているのといないのがあるのよ。はい、自分の持ってきた裏地をよく見てくださいねー。背中の上のほうには“肩当て”。お尻全体の座ったり立ったりに負担がかかるところには“居敷当て”。補強のための生地が付いてますか?はい、見てー。そう、ほら、ね。これは付いてる」
先生がひとりずつチェックを始めた。
いつもの日曜午前中クラスのメンバーが五人、色とりどりの浴衣を並べていた。
「あれ、野上さんの、シブーい」
同級生が私の浴衣を見て言った。
「なんか、古臭いでしょ。祖母が縫ったものらしいんだけど」
「え、いいじゃん。かえって新しいってカンジだよ。いいよ、いいよ!」
「そ、そうかな~」
ちょっと嬉しかった。
「はい、ほら、野上さん。見せてごらん拡げて。え、手縫い?おばあちゃんの?あらま、いいじゃない。どれ、裏はどうなって・・ん?」
全員が裏地に釘付けになった。
他の人のものはほとんどがサラシの無地だった。でも、これは明らかに違う。同級生が肩当てのほうを読み上げた。
「・・善光寺、参拝記念」
お尻の部分をまた別の人が読み上げた。
「牛に・・引かれて・・善光寺、詣り・・?」
オリジナルにもほどがある。
祖母は善光寺土産の手拭いを分断して当て布にしていた。お尻の部分には“牛に・引かれて・・”の四行の文章の下に、善光寺と松の風景が茶と紺と緑色でデカデカと描かれていた。
「・・あ、あらぁ、なんだか縁起がいいじゃない?」
先生が言った。同級生たちは固まっていた。
「そ、そうですねえ!わはははは~!!私のおばあちゃん、面白いっすねぇっ、いやぁ~まいった!!」
私がひとりではしゃぎ、笑った。
皆が困っているのが何ともいたたまれなかった。
『善光寺詣り』をお尻に持ってきた祖母。
こんなシュールな浴衣を作る人だったなんて。
あまり接点がないと思い込んでいた祖母のことを亡くなって二十年近く経ってから考えるとは思わなかった。
「寿司屋の女将なのに何かヘンじゃない?どことは言えないけどさ」
とお客様から言われ続けて数年。
もしかしたら私は祖母の“善光寺センス”を受け継いでいるのかもしれない。

明日は『振り袖』です
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1dayアーカイブ2024年~2001年5月9日のおしながき[2024年][2023年][2022年]
一番奥のお席に座られた方のお荷物置き場を設置いたしました。
[2021年]*お知らせ*5/31まで休業いたしました
[2020年]休業いたしました
[2019年]
[2018年][2017年]
[2016年]野上啓三が見ている築地の風景 寿司屋の七十二候 4/25~4/29[穀雨・第十七候・霜止出苗しもやんでなえいずる]4/30~5/4[穀雨・第十八候・牡丹華ぼたんはなさく ]
左上から横に
・あまてカレイ(淡路)・小肌(長崎)・初カツオ(千葉勝浦)・ミンククジラ1.6tの畝須(うねす)(石川七尾)・活じめのアジ(千葉勝山)・生トリガイ(愛知)[2015年]010
001_2[2014年]お通しは静岡・由比の生サクラエビです。ヒゲ・アタマなどお口にさわるものを一尾ずつ取り除きます。


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004005006付け合せには菜の花とうぐいす菜のお浸しを。生のサクラエビには塩をほんの少しだけしのばせます。初鰹、赤イカ、いがウニ、蝦蛄、ヒラマサ、あおやぎ、ヒイカ、縞海老、生とり貝(富津)、生とり貝(南知多)、新規入荷です。今日は佐島のタコを煮ます。(足のみ)

5月9日築地風景011001_2[2013年] 小柱、いままで仕入れた中で一番の大きさ、特選品とのことです。真鯛はどちらも3kg、昨日活け締め、今日活け締めの食べ比べをしてみてください。平政は食感が勝っているところからようやく味の熟成が始まる感じとのことです。初鰹、しまえび、あじ、槍イカ、いがうに、好評につき新規入荷です。

 

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001_3 [2012年]一昨日、エアコンの風の直撃を避ける器具を取り付けました。うまく冷気が分散するといいのですが‥。 001 [2011年]赤いネタ白いネタ、といろいろありますが、当店の特徴のひとつとして、“青魚=ヒカリモノの充実”というのが欠かせません!

 

一見地味で華やかさには欠けますが、おいしいものが揃ってます。

 

 

 

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今日は佐島のタコを煮ます。(足のみ)

 

 

 

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[2009年]春子鯛(かすごだい)より小さい真鯛が初めて入りました。言うなれば真鯛のシンコ(新子)です。001_2

 

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一貫三枚(三尾)付けにて握ります。

 

日本酒はおしながきのほかに三種、002

 

そして岐阜・房島屋(ぼうじまや)のお酒を仕込むための水=仕込み水 を手に入れることができました。

 

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5月8日(木)

2025-05-08 16:44:00 | 5/1~5/31


野上啓三インスタグラムsushi43nogami2←こちらに変更しました。
すべての魚・貝、天然ものです。
◇営業時間について◇火曜~土曜17:30~21:55※ラストオーダー(酒類・酒類以外全て)21:25まで
日曜お子さんデーは11:30~17:30です。※日曜はお子様の日です
店には月曜(+第一日曜日)以外10:30~営業終了+aおりますのでお気軽にご連絡ください!03-3356-0170
※レストラン予約代行サービス『オートリザーブ』でのご予約は日付・時間帯にかかわらず受け付けておりません。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
おかみノート
主人の実家はお寿司屋さん。私はなんにも知らないドシロウト。
今まで見たり聞いたり体験した 寿司屋のいろんなことを書いておきたいと思います。

『自宅の引越し3』
築二十五年というアパート。
二階の階段を上がったすぐの角部屋、扉を開けると玄関、トイレ、お風呂、そして八畳間が二つあった。
「ひゃーっ、広い、広い、ひろ――い!」
叫びながら飛び回っていると
「広いでしょう?昔の大きさの畳で八畳だから。古いけどね、いいところもあるのよ。この近くに美術系の専門学校があるでしょ。そこの生徒さんが二人で部屋を借りて共同生活したりするところなのよ。ほんとは生徒さんじゃないとダメなんだけど、あなたたち若いし、一生ここに住むわけじゃないだろうし、いつかは出るわよね?それで大家さんにお話したら、いいって言うから。私もね、ここがいいんじゃないかなーと思うのよ」
Kさんの言葉に頷きながら
「ここ、もと押入れですよね?」
と、ガランとした板のスペースを指で撫でた。
「そうよぉ。襖、どこかに置いてあると思うけど・・」
「いーです、いーです。もしかしてベッドにしてたのかもしれないし。わー、ドラえもんみたい!私もやろ!」
「柱とか、壁とか、どれだけ釘打ってもいいから。ここから引越しをするときもね、DIYみたいなのやりっぱなしで出ちゃっていいから。改造オッケー」
「えー、いいじゃん、いいじゃん、ここにしよう」
主人は私の問いかけを無視して天井の方ばかり見ていた。
「オレは、ダメだね」
「へっ?」
「梁が傾いている」
「えー?」
「よく見てみ。ほら左が下がってる」
言われてみればそうかもしれない、という感じだった。
「そうかなぁ・・」
「たしかに少し下がってるわね。年数経ってるから気になる人は気になるかもね」
Kさんは言った。すると携帯電話の呼び出し音が部屋中に響き渡った。
手で“ゴメン”のポーズをするとKさんは玄関の辺りまで行き、かなり大きな声で話し始めた。
「どうする?」
「オレはイヤだ」
「えー、そんなに気になる?」
「すっごい気になる」
「あ、そう・・。私、そんなに気になんないんだけど変なのかな・・」
「ごめんなさい、ちょっと用事が出来ちゃったから。あなたたちにね、見せたいのもう一軒あるから、はいこれ。私が立ち会わなくてもいいところだから二人で行ってきてちょうだい」
地図と間取り図と鍵を手渡され、そのアパートの前でKさんと別れた。

陽が落ちはじめていた。
壁の高い位置に “○○荘”と、浮き出すように作られた名前のところが斜めに影になっている。
○○の二番目の文字が “昇” だった。
「お義父さんの名前が入ってるね」
「おう」
もう一度地図と間取り図を確認してみる。ここだ。
「えっと四階ね。あれ、エレベーター無いの?」
「五階建てだと、たしかエレベーター無しでもいいんだよ」
「あ、そうなの。ま、しょうがないよね。行こうか」
コンクリートのしっかりした造りの階段を上っていく。
二階を越えた辺りで先を行く主人に声を掛けた。
「ちょ、ちょっと待ってよ」
「もう時間無いから早くしないと」
「でもこの階段、一段一段が高くない?腿が胸にくっ付く位引き上げないと一段上がれないんだよ。踏み台昇降でもこんな高いの無いよ。だって前にある階段に手ぇついてよじ登ったほうがラクなんだもん、急すぎない?これ!」
「狭いスペースに無理やり階段作ると急勾配になるんじゃねぇのか?」
「あぁ、そうか。さっきの三階のところもさー、階段の一段ずつは低めなんだけどグルグルグルグル回って…頭ぶつけそうだったし、あれも狭いスペースに作ったからなのかな。それにしても毎日仕事終わってここに帰って来て、また山登りみたいなことは・・できない!!」
文句を言いながら四階まで行くと、すでに主人がドアを開けて待っていた。無言で中を見ている。
主人の身体のすき間から覗くと、フローリングのだだっ広いスペースが見えた。
「おわっ、ワンフロアーだよ!ダンス教室?事務所?」
私は叫ぶとすぐ靴を脱ぎ、中に入った。歩くと靴下の湿気が足跡になって床に残っていく。
コップをひとつふたつ辛うじて洗えそうなシンクが隅っこにあった。
「・・まぁ、“寝るだけですから何もなくていいです”とは言ったけど、この何も無さ感は何?どうやって暮らせっていうの・・」
壁をずーっとなめるように眺めていくと、扉が二つあった。
「あ、トイレだ。ね、そうだ。もうひとつは・・と、シャワールーム?」
二つ折りになるアコーディオン式の扉の中はユニットバスの素材で覆われており、シャワーを浴びるように出来ていた。
「入ってみなよ」
主人を促すと、なんとかその空間に身体はおさまった。でも身体を洗ったりできる余裕はない。少し向きを変えたりしていたが、こちらに背を向けたまままったく動かなくなった。
「ちょっと、どうしたの?もう出てくれば?」
「・・!・・・!!」
「どうしたの?」
後頭部に問いかけてみても首を細かく振っているだけで肩すら動かない。何かわめいているようだが、扉がピッタリ閉まっていて声がこもって聞き取れない。こちらから扉を開けると
「そっちから引っ張って!!出られなくなっちゃったから!」
と怒鳴っていた。
「ウソ!!大丈夫?大丈夫!?」
急いで引っ張り出した。
「まったく、シャレになんないよ!コート着てるならまだしも薄着だぜ?しかも一応身体は入るけど、洗えないっつーの!コインシャワーの方が広いぜ、きっと」
顔を紅潮させながら主人はそそくさと靴を履いた。
鍵を閉めフロアから近所の風景を眺めていると風がひゅううと吹いた。四月の終わりだというのに夕方はまだかなり寒い。

不動産屋さんまで歩きながら話した。
「梁は斜めかもしれないけど、私はあの広いところだな。いろいろいじれるし」
「オレは・・どこもイヤだ。いま見てきたところではないね」
「あ、そう。でもさ、今日決めないと引越しできないよ」
「アップしよう」
「え?」
「もう少し家賃高くてもいいから、明日への活力が出るような、住み心地のいいところを紹介してくださいって言おう」
「えー、アップするの?」
「いい環境で、そのぶん店を元気にがんばる!そのほうがいいでしょう?」
「うー・・・ん」
私は身の丈のことをするのが自然だと思っていた。主人の提案は間違いなく私たちの出来る範囲を逸脱している。
「ムリだよ。払えなくなるよ」
「ムリじゃないかもしれないじゃん。じゃあさ、半年か一年、更新の時まででもいいや。ダメならそのとき考えようよ。とりあえずもう少しいいところに住もう」
「・・・・・・」

不動産屋さんに戻り、主人が言った。
「ここらへんの相場というものがよくわかりました!数万アップしてもいいので、もう少し違うところを紹介してください!!」
「そう。・・わかった。じゃ、この裏にね、とっておきのマンションがあるから。そこ紹介してあげる。敷金が五ヶ月、更新料と管理費は無しだけどね、その分月々のお家賃はちょっと高いわよ。でも更新料とか別だと考えたら、そう高くないと思うのよ」
そう言いながらすぐ大家さんとの連絡を取り、Kさんは私たちを案内した。
重厚な造りのマンションの一階。玄関は広く、靴収納もある。お風呂もユニットバスではなく普通の広さがあり、脱衣所と洗面所と洗濯機置き場が一緒になっていていままで見たところとは明らかに違っていた。
四畳半のダイニングキッチンもきれいだ。そして六畳間は畳のところに家具を置かなくてもいいように床の間ではないが両側板が張り出していて実質八畳間のようだった。窓は二重ロック。上にもうひとつ鍵がある。
ベランダは程よい広さで布団も干せそうだ。
「決めます。お願いします」
主人は言った。ちゃんとした契約をする日取りを決めて、不動産屋さんをあとにした。
「・・まぁ、よかったね」
私が言うと
「エレベーターがあるところがよかったんだけどさ、見てきたところ全部なかったじゃん。やっぱり値段的に無理があったんだよな。決めたところはエレベーターあるけど一階だから使わないけどね。でも、一階でホッとしてる。だって親父、階段ムリだもん。特に最後の四階のとこ。歩くのだってゆっくりにしかできないんだぜ?梁が曲がってるところ気に入ってたみたいだから、二階でもいいかなーって一瞬思ったけど一ヶ月くらいの滞在中もつかどうかわからないからね」
(あぁそうか) と思った。
お義父さんが滞在することを常に考えながら物件を見ていたんだ。
私は自分のことばかりに夢中になり、そんなこと考えてもいなかった。
家賃が高くて立ち行かなくなったら、その時考えよう。
とりあえず店をオープンしてしばらくはあのマンションで暮らそう。
そう思ったら、踏ん切りがついた。

明日は『足袋』『浴衣』です
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1dayアーカイブ2023年~2001年5月8日のおしながき[2024年]
冬の暖房器具、そろそろ撤収となります。
[2023年] 野上啓三が見ている豊洲市場の風景 寿司屋の七十二候
[穀雨・第十八候・牡丹華ぼたんはなさく ]4/30~5/5
・まな板、きれいに削っていただきました。今、店
・ギリシャ 生 本マグロ 今、店
・江戸前 千葉富津 キス コハダ  今、店
・兵庫淡路 0.8kg 目板鰈(メイタガレイ)今、店 
山口仙崎のヒラマサ 10.2kg 皮をひくところ【動画】
・ニュージーランド 生インドマグロ 今、店
・上 千葉勝山 活け〆アジ 中 大分佐賀関 アジ 下 島根浜田 どんちっちアジ 今、店
・青森八戸イガウニ(キタムラサキウニ)今、豊洲
・鹿児島 串木野 イサキ 今、店[2022年][2021年]*お知らせ*5/31まで休業いたしました[2020年][2019年][2018年] [2017年]黄柚子が終わりました。5月より青柚子になりました。
青ゆず・黄ゆず

002 築地のツマモノ屋さんから「そろそろ黄柚子が終わりだよ」と声が掛かるのはゴールデンウィークが明ける頃。

そして梅雨も終わりに近づくともう店頭は青柚子だけになります。

夏、太ったアナゴがどんどん出回り、煮詰めをつけたアナゴもいいけれど脂ののった感じを煮詰め以外で愉しみたいと思う時、にぎりの上には青いおろした柚子と塩がちりばめられます。

他に青柚子を使う場面で印象的なのは鱸のアラを潮汁に仕立てた時、包丁で柚子の表面を少し掻いてお椀に落とすところです。

写真は去年、九月下旬の撮影です。このあとしばらくして黄柚子が入ってきた…という記憶があります。

6/1の夏の暖簾を出す少し前には青い柚子があり、10/1の冬の暖簾に替えた少し後に黄色い柚子が登場する、そんなサイクルです。
[2016年]
[2015年]
014Mini_140508_0846_2


今、築地[2014年]春トビ(=飛び魚)はタタキでさっぱりと。サルボウ=猿頬(さるぼお)貝は実山椒・酒・醤油・砂糖・生姜汁で炊きました。002
008江戸前・羽田沖の穴子が入りました。身が薄っすら飴色、脂があります。

011
愛知のキュウリが入りました。かっぱ巻がおすすめです。5月8日築地風景017
今日は佐島のタコを煮ます。(足のみ)006[2013年]蝦蛄は茹でてあります。ご注文をいただいてから殻から剥いて出汁醤油であたためるか、網で炙って煮詰めをつけるか、どちらかにいたします。

 

002

 

[2012年]夏トビ、今シーズン初登場です。

お通しは宮城・七ヶ浜の白魚です。

 


5月7日(水)

2025-05-07 17:56:00 | 5/1~5/31


野上啓三インスタグラムsushi43nogami2←こちらに変更しました。
すべての魚・貝、天然ものです。
◇営業時間について◇火曜~土曜17:30~21:55※ラストオーダー(酒類・酒類以外全て)21:25まで
日曜お子さんデーは11:30~17:30です。※日曜はお子様の日です
店には月曜(+第一日曜日)以外10:30~営業終了+aおりますのでお気軽にご連絡ください!03-3356-0170
※レストラン予約代行サービス『オートリザーブ』でのご予約は日付・時間帯にかかわらず受け付けておりません。
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おかみノート
主人の実家はお寿司屋さん。私はなんにも知らないドシロウト。
今まで見たり聞いたり体験した 寿司屋のいろんなことを書いておきたいと思います。

『自宅の引越し2』
自動ドアの前に立つとKさんの姿が見えた。
立ったまま机の上を整理している。私たちに気付くと書類を置いてこちらに向き合った。
「どうだった?」
「風呂がちょっと・・」
「お風呂?」
「換気がちょっと」
主人が少し強い口調で言った。
「そう。まだあるからいろいろ見て。さぁ、ここからは一緒に行きましょう」
書類と鍵をいくつか持ってKさんは私たちを促し外に出た。
「四谷三丁目というより四谷だわね。ここは」
高台に建つ築年数の浅いその物件は一階と二階に1Kの部屋が八戸ずつ並ぶ学生さんのためのマンションだった。
「先に言っておくけど予算より五千円高いから。でもすごく新しいの」
「あぁ、きれいですねー」
建物を見上げながら思わず言った。さきほどの記憶が残っているからかものすごくいい感じだと思った。
「エレベーターは無いのよぅ、はーい、ついてきてー」
Kさんはどんどん階段を上っていく。慌ててその後ろについていった。
「三階がね、物件よぅ」
「はい」
「もともとは大家さんが住もうと思ってね」
「はい」
「作ったんだけど」
「・・はい、」
「違う所に住むことになったんでね」
「・・・はい、」
「空いちゃったのよ」
「・・・はい、あの、Kさん」
「なぁに?」
「ぜんぜんキツそうじゃないんですけど」
「なにが?」
「か、階段」
「んー、ワタシ、山登りが趣味だからねぇ」
「あ・・そうなんですか」
息が切れて、唾を飲み込もうとしてもヒリついて喉が痛い。三階なのになぜ。自分が情けなかった。
「さ、着いた。ここが入り口」
“スタンッ”と鍵が開く音がした。洒落た木の扉だった。
Kさんが手招きをしている。
靴を脱ぎ、左に曲がると細い廊下があった。
右にトイレ、お風呂、左に寝室がひとつ。
奥に四畳半ほどのダイニングキッチンがあった。
「ほうら、見て御覧なさい。東南の向きにバッチリ窓よぅ。バルコニーに出られるわよぅ」
ガラス戸を開けると、四谷から市ヶ谷の景色が広がっていた。
「どうぞ、サンダルがあるでしょ。出てみて。洗濯物ここに干すんだから。バルコニー全部使っていいんだから」
促されて木が敷き詰められたバルコニーに出ると突風が吹いていた。
色あせたピンクのイボイボサンダルに片足を入れたら小さすぎて足が途中までしか入らない。よろけながらつま先で歩くと吹き上げる風がこめかみに当たり汗がどんどん冷えていった。
「バーベキューなんかもね、お友達を呼んで。そうねぇ、三十人くらい入るわよぅ」
Kさんは明るい。
語尾の“~なのよぅ”の“よぅ”は、鼓を打つ前の“よぉーぅっ”の掛け声の軽い版が最後にくっ付いた感じだ。
聞いているうちに(楽しいことが起こるかも)と思えてくる。
吹き荒れる風の中でバルコニーをもう一度眺めた。この感じ、洗剤のコマーシャルで見たことがある。
白いシーツを十枚くらい干して集団でミュージカルみたいに踊っているシーン。ひょっとしたらここで撮影したのかも?んなわけないか。
ダイニングキッチンに戻るとテーブルと椅子が置いてあることに気付いた。
「これ、大家さんが置いていったから。使っていいのよ。朝なんかね、パァーっと太陽の光が入って。最高の朝食じゃない?」
Kさんの言葉に黙って頷きながら寝室に向かった。
「なんかこの部屋、狭くないですか」
寝室を覗きながら言うと、Kさんは
「え、そう?四畳半と同じよ」
と言った。
琉球畳なので普通の畳との比較が出来ない。でもあきらかに奥のダイニングキッチンと同じ大きさには感じられない。
「いや、狭いんじゃないですか」
「大家さんがね、趣味でお茶をやってたのよね、ここで」
真ん中に琉球畳より小さい畳がはめ込んである。布団を二枚敷いたらもうビッチビチじゃないのか。
すぐお風呂場に向かった。
アコーディオン式の扉を開けると正方形に近い形の風呂桶があった。
「うわっ入れる?これ」
主人に洋服を着たまま入ってもらうと圧縮した体育座りでギリギリだった。
もう一度ダイニングキッチンに戻ってKさんにあらためて訊かれた。
「どうする?ここにする?」
ちょっと迷った。新しいのが何より魅力だ。
でも・・。
素敵な朝食タイムは作れそうにないし、バーベキューもたぶんやらない。やったとしてもせいぜい年に一回だろう。しかも三十人も集まらない。
洗濯物もどんなに溜めてしまっても、ここの十分の一くらいのスペースで干しきれるだろう。もうちょっとバルコニーを狭くしてその分部屋とお風呂を広くしてくれたらよかったのに、と思った。
「次、見せてください」
まだ見ぬ物件に賭けてみようと思った。

明日は『自宅の引っ越し3』です
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1dayアーカイブ2024年~2001年5月7日のおしながき[2024年]
煮切り醤油を注ぐうつわ、左から初代⇒二代目⇒現在。※醬油差し新しくなりました[2023年][2022年][2021年]*お知らせ*4/26~5/12まで休業いたしました[2020年][2019年]
[2018年]野上啓三が見ている築地の風景 寿司屋の七十二候
[穀雨・第十七候・霜止出苗しもやんでなえいずる]4/25~4/29
[穀雨・第十八候・牡丹華ぼたんはなさく]    4/30~5/4
・大島 トコブシ     今、店
・5/4(木)築地 開市です 今、築地
・常磐 ほうぼう     今、店
・大分 佐伯(さいき)キス 今、築地
・神津島 赤イカ 右 佐島 スミイカ 今、店
・明石 アマテカレイ 今、築地
・新湊 白エビ   今、店
・明石 アズキハタ 今、店
・明石 虎魚(オコゼ)今、築地 

[2017年]
5月~6月上旬に出回るもの その5 赤イカ・白イカ左  赤イカ(神津島) 右 白イカ(山口・萩)
[2016年][2015年]

001
002

 

今、築地[2014年]真サバ、ひさびさ入荷です。初鰹、赤イカ、ぼたん海老、〆サバ、いがウニ、瓶ウニ、小樽の蝦蛄(シャコ)、蝦蛄の爪、小のどぐろ、鯒(コチ)、活けじめ あじ、中羽いわし、生とり貝、新規入荷です。5月7日築地風景006[2013年] ヒラマサ14kg、背上(せかみ)の部分1/8を仕入れました。埼玉の花陽浴(はなあび)、入りました。005_2

 

005

 

[2012年]五月上旬のネタケースその2です。

 

出始めのアワビ、ピークに達しているトリ貝、そろそろ終わりの赤貝。

 

一月下旬から始まった貝満載の雰囲気も徐々に変わっていきます。

 

 

 

 

 

 

 

005 [2011年]

今日は佐島のタコを煮ます。(足のみ)

 

 

 

 

 

 

 

006 [2010年]くじらのベーコンは燻製にはしておらず、塩茹での状態です。和辛子を添えてお出しいたします。テンパは本マグロの赤身です。

 

金曜日の新連載スタートです 

何か新連載を始めようと思いまして‥。 

とりあえず金曜日に季節の魚へんの漢字をひとつテーマにして、自分なりに感じたことを書いていきます。

おしながきをアップするまでの前座です。よろしくお願いします!それではレッツラゴー

わたしの魚(ウォ)キペディア 第1回 すし

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鮓という字を初めて見たのはおとなりの八竹さん。ビルの上のほうに『大阪鮓』と味のある字体の看板が出ていて、上方のおすしは“鮨”ではなく、酢みたいな字の“鮓”を使うのかなぁ‥と漠然と感じたのでした。

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[2009年]先日の『またがい』と並んで『めかい』も火を入れると抜群においしいアワビです。アワビは大きく四つの種類に分かれ、クロ・エゾ・メカイ・マダカとあります。またがいというのはマダカを縮めてマダと呼び、アワビを“生貝(なまがい)”と呼ぶところから来ているようです。今日のめかい鮑は千倉です。千葉の千倉や大原からのめかいはもう完全にブランドです。鮑・鯛・烏賊・鰹・平政・蛤・鯵と千葉産が揃いました。瓶詰めのうには殻からはずして詰めただけの無添加です。008_3

 

 

 

 

 

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