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おかえりのすけBOOK

bookbar4のメインキャラクター、おかえりのすけのページ

小山田二郎展

2005-06-04 | ギャラリー
異形の幻視力『小山田二郎展』5.28-7.3 東京ステーションギャラリー

小山田が大日本印刷勤務時代に休み時間などにかきためたスケッチもあり。水彩画は77点。自らの水彩画について「タワゴト」と題して『美術手帖』にこう記す。「……水彩画は、オートマチズムといってしまえばそれまでだが……しみや線は形らしきものに変わり、スペースの限定は逆に個々の形の支配を始めだす時である。みじめな悔恨が敗北感を伴って私を沈黙させるのである。ここで私は筆をおくのである。」
油彩画は38点。1960年代に描かれたいくつかの《鳥女》が展示された部屋で、圧倒されて足がすくんでしまう。

図録は、本文紙三方をミシン目で切ったようにしたり、テキストページにほんのわずか色柄のついた図版をひいたり、凝ってはいるが好みではない、なにより、写真の再現とテキストの内容がいまひとつで購入にいたらず。

小山田が妻・チカエさんとタケミヤ画廊で出会ったころの話を、岡崎武志さんが書いています(洲之内徹さんの生前を知るチカエさんへのインタビューsumus special 「小山田チカエさんに聞く」)。小山田はある日失踪してしまうが、その朝の会話は「どこ行くの?」「ラーメン食いに」だったそうです。タバコの包み紙に描かれた絵は、チカエさんの手元にまだあるのだろうか。


Variations on a Silence

2005-05-22 | ギャラリー
「Variations on a Silence――リサイクル工場の現代芸術」展へ。
東京湾の人工島、城南島に完成、操業前のリーテム社東京工場が会場。対岸にある羽田空港に着陸せんとする飛行機が頭上をかすめる位置にあり、その轟音に誰もが天をあおぎ見るし、滑走路に着陸した飛行機の逆噴射音っていうんでしょうかごぉーいう音が地響きのように伝ってきて驚きます。この一体は東京スーパーエコタウン事業として選定された企業が続々集結中。頭上行き過ぎる飛行機や遠く行き交う巨大タンカーを見ながら、過剰なものへの嫌悪を育みましょう。

展示のなかでは平倉圭による『テキスト、山、準ー部分』がよかった。正確にいえば、その作品中、リーテム社の水戸工場を撮ったんでしょうか、リサイクルのために金属系粗大ゴミをぶっこわ(破砕)しているモノクロ映像に夢中、昨日みた餌必死ついばむ雀のことや洗濯ばさみのことなど話し居座る楽しい鑑賞ができました、「テキスト」読んでないけど。

リーテム社(社名は Recycle Technology & Managementより)の前身は明治42年に古物商として創業、現在は都市鉱山型リサイクル産業を目指し、新工場には見学のためのスペースも用意、とのこと。設計(坂牛卓)は、その見た目よりも、そこで働くひとたちの目線への思い遣りが感じられることが心地よかった。

岡倉天心展

2005-05-15 | ギャラリー
オンサンデーズに給水塔柄の革バックがしばらく前からあって、給水タンク写真家のわたしとしてはたいへん気になるのだが、どう考えても持ち手が頼りなくて買えない。しかし売れ行きは気になるので、最近何度か立ち寄っている。今日もまだあった。カルバンクラインも給水塔や電線柄のティーシャツ出していますね。
さてワタリウム美術館は、一回料金払えば期間中何度もその展をみられるのがいいです。給水塔バックにつられて岡倉天心展もちょこちょこと。ボストン時代に携帯していたという茶道具一式はみなコンパクトで好ましい。情愛深き天心のプライベートな手紙もあり。その筆跡は当時のマルモジではないの? 磯崎新監修による再現「六角堂」もあり。実際の五浦あたりは日が沈むとじつにたよりなく、六角堂もその狭さと海の間近さに、尾てい骨がざわざわします。
今月末には展覧会図録『岡倉天心・日本文化と世界戦略』が平凡社から刊行、磯崎新の書き下ろし「五浦六角堂」収録、デザインは勝井三雄とか。展覧会初日どころか期間中に発刊ままならないのに「図録です」と言いはるものが増えました。仕上がりがよいことがなによりですけど、展覧会図録って言うのやめたら?へんです。当事者的にはそのことがなににどう影響しているというのでしょう。

ハンス・アルプ展

2005-05-04 | ギャラリー
『ハンス・アルプ展』(川村記念美術館 6.26まで)へ。8部構成中第3部「おとぎ話の世界」の展示スペースの壁が同展チケット及びチラシの地の色にあわせた落ち着いた桃色に塗られており北国の子供部屋のようである。DICカラーチップでいうと何番ですか。クルト・シュビッターズ編集の『メルツ』5号のためにつくった「7アルパーデン:アルプ・アルバム」シリーズ(1932)がやはりいい。あんなに美しい「8」はどううまれてきたのだろう。よしわたしは「4」を描く。《確固とした歩み》(1965)などのブロンズ像のいくつかは舐めるようにしてみるうちに触感が手にあふれてきた。
図録は2500円、表紙に《へそのある瓶》、見返しに《へそ》を配した丸背糸かがりの装丁。編集:アルプ美術館バーンホフ・ローランズエック/神奈川県立近代美術館(山梨俊夫、籾山昌夫)/川村記念美術館(前田希世子)/岡崎市美術博物館(千葉真智子)/群馬県立館林美術館(徳江庸行、中田宏明)/東京新聞(森要造、田中玲子、井鍋雄介) 翻訳:ジェレミー・ゲインズ/ステファン・リーダー/千葉真智子/籾山昌夫 デザイン:笠原香苗 制作:コギト 発行:東京新聞

TAKEO PAPER SHOW/青山銀蠅

2005-04-17 | ギャラリー
「TAKEO PAPER SHOW 2005」は、「COLOR IN LIVE」展と「COLOR + S(プラス・スキル)」展の二部構成。
「COLOR IN LIVE」では銀 担当の HAKUHODO DESIGN(永井一史、佐野研二郎)による「青山銀蠅」が圧倒的。眼=オフメタルLP銀、脚・胴体=オフメタルLP・銀、オフメタルUR・銀、オフメタル・銀、サンダースメタリック・シルバー、羽根=オフメタル・銀、オフメタルLP・銀、ハイピカE2F・シルバー、ニューメタルカラー・シルバー使用。ときにエンボスをかけ、型を抜いて脚を折り曲げ、五種類くらいの蠅がいたんじゃないでしょうか、全部で1000匹くらいとか。これ、商品化してください、欲しいです。
「COLOR + S」では古平正義+凸版印刷による「BLACK AND BLUE」がよかった。ついこのまえまでスパイラルで、バウハウス校舎を撮った写真展「BAUHAUS DESSAU ∴ MIKIYA TAKIMOTO」を開いていた瀧本幹也がファインペーパーを撮影した写真を素材とし、色のついた用紙にオフセット印刷して展示。ちょっとレイアウトに懲りすぎてわかりにくかったけど。

竹尾/TAKEO PAPER SHOW 2005 

DOCOMOMO100に寒河江市庁舎

2005-04-03 | ギャラリー
文化遺産としてのモダニズム建築DOCOMOMO100展(松下電工汐留ミュージアム 2005.3.12-5.8)。1989年、オランダで設立されたDOCOMOMO(Documentation and Conservation of buildings, sites and neighbourhoods of the Modern Movement)の趣旨に合わせて、日本建築学会が国内から100件をリストアップし、写真や図面を展示、解説している。選定にあたり、DOCOMOMO Japan 代表の鈴木博之は「選定という限定していく行為を通して……一連の対象が間違って、絶対的な選択であるかのような印象を与えてしまうかもしれない」ことをして、「選ぶことのジレンマ」と表したそうです(同展図録より)。
全体に、みための好ましさから無条件に保存や修復に賛成したくなるものばかりですが、竣工当時の写真をみると、周囲とのギャップにゾッとするものもあり。そういう役割を担わされてもいたのでしょう。

黒川紀章設計による寒河江市庁舎も。こどものころは市役所の向かいにあるヤマザワというスーパーで、サンリオグッズやソフトクリームを買うことに夢中だったので、この建物の印象は「ちょっとへん」というくらい。コンクリートの色あいのせいか古びた印象を持っていたが、1967年竣工とのことだから新しかったんだ。吹き抜けにぶらさがっていた岡本太郎のオブジェの回りに、寒河江市章と大江公の家紋が彫られていたようだ。
選ばれた理由としては「メタボリズムは日本初の建築思想としてはじめて海外で注目されたもので、生命体の適応性を建築のモデルとし、新陳代謝を機能の変更への対応になぞらえた」「メタボリズムのコンセプトをよく示す作品のひとつ」(同展図録より)だそうです。なんだろな。

新建築57号サイト

福井良之助孔版画展

2005-03-29 | ギャラリー
佐倉市立美術館(2005.3.8-4.10)にて。
福井良之助(1923-1986)の孔版画120点に、未発表の素描や下絵約60点を加えた回顧展。構図に凝ったものよりも、よりシンプルな静物画がいい。謄写版に興味を持つきっかけになったという「ひまわりダンス研究所」の案内、母親・福井すま美容研究所の案内、日本橋画廊のカタログ(デザイン:勝井三雄)なども。
展のカタログができてなかった。いけませんね。どうしても気になる作品があったので予約。今回の展示品だけでなく海外にあるものも含めて、現在確認しうる全作品を収録するとのこと。2000円(送料は美術館負担)。
この美術館は、旧川崎銀行佐倉支店(千葉県指定有形文化財)の一部をエントランスホールとし、それをエル字に五階建ての建物(坂倉建築研究所大阪事務所 1994)が囲う。京成佐倉駅からまっすぐな坂道をのぼれば徒歩8分。写真は、福井良之助の「けし(2)」1959。同美術館ウェブサイトより。

ついでに、駅前から出ている送迎バスに乗り、川村記念美術館へ。大日本インキ化学工業の総合研究所敷地内にあり、広大な庭園のあちこちにメンテナンスするひとの姿が。海老原一郎設計(1990)の建物は、展示室がゆったりしていて気持ちいい。新規収蔵作品として、中西夏之の「R.R.W - チツの始まり - lll」2002、「チツの始まり - 2001・ll」2001が目をひく。白、黄緑、紫、灰、それと肌色。

なお、売店で『駄菓子屋図鑑』(文:奥成達 絵:ながたはるみ ちくま文庫 2003)が購入できます

川村記念美術館で「ハンス・アルプ展」」が4月5日からはじまるようですから、4/5~10が佐倉はねらい目。その頃には福井良之助展のカタログもできているかも。桜もね。

参考:中西夏之「カルテット 着陸と着水X」展中西夏之退官記念「二箇所 - 絵画場から絵画衝動へ - 」展(いずれも終了)

松江泰治 CC gazetteer

2005-03-23 | ギャラリー
『Hysteric 松江泰治』(2001 編集:大田通貴+綿谷修 装幀:塚本明彦 評論:楠本亜紀 協力:TARO NASU GALLERY 発行:ヒステリック・グラマー)
などの作品で第27回木村伊兵衛写真賞を受賞した松江泰治。受賞後、TARO NASU GALLERYで開かれた個展(2002.5.11-6.8)で、今、NADiffで開かれている個展「CC gazetteer」(2005.3.11-4.17)の都市シリーズを初めて発表したのではなかったでしょうか。新種の松江泰治菌(*以下参照)がみごとプレスされ、イヴ・タンギーの「弧の増殖(Multiplication of the Arts 1954)をモノクロで観ているような圧倒的な感触。

* 僕にとって松江君の写真はね、とっても肉体的なものに見えるんだよね。
皆、どっかで一種アカデミックにとらえている。松江君の写真に僕が一番
思うこととして、スパッとはなかなか切りにくいイメージの排除をあっさ
りやっちゃったからね。たとえば、一見コンセプチュアルに見える写真っ
て、結局イメージを相対的に消そうとしているつまならさがあるよね。そ
れがスケて見えちゃう。松江君の写真にはそこが見えないんだよね。……
松江君は本当にすべての面でヤマイ(病)だからね。病がここ(写真)に
出ているわけだからさ、アートだとかそんなのじゃなくて、この写真1枚1
枚がヤマイなんだ。松江泰治という病気。だって、これ粒子じゃなくて病
原菌がびっしりプレスされているわけだからさ。これ半分本気で言ってい
るんだけど。
(「STUDIO VOICE」2002.6 VOL.318 で松江泰治と対談した森山大道のことば)

なお今回の展にあわせて写真集二冊が同時刊行。写真をできるだけ美しく再現させつつコンパクトに冊子としてまとめることが追求されたようです(Days of Books,Films & Jazz/2005.3.13参照)。それが似合う写真もある。でもこれは、買えなかった。似合わないと思う。

飯田竜太「story line」

2005-03-15 | ギャラリー
ガーディアン・ガーデンにて2005.3.14-3.24。第22回『ひとつぼ展』のグラフィック部門でグランプリを受賞、そのあと一年の制作期間を経て開かれた個展。「book ornament」「book rack」「目に見える見えない」「H」「inside of book」と、小さな作品がいくつか。
「目に見える見えない」がいい。文庫本を、あるページで完全に開ききった状態で、ものすごい急勾配をあらわす等高線が、「切る」ことで描かれている。そんななか、本の背タイトルは切り刻むことなく在るので、思わずそれを読んでしまう。

 『本』=『読むもの』=『身近にあるモノ』を『普通』と違った尺度によって
 解釈し、情報を昇華(消化)する行為として『切る』という行為を重ねてみた。
 ……飯田竜太

「瀧口修造 夢の漂流物」

2005-03-14 | ギャラリー
世田谷美術館(2005.2.5-4.10)にて。「同時代・前衛美術家たちの贈物」という副題どおりそれらの展示がメインですが、瀧口による手作り本もいくつか。また、後年住んだ西落合の家をどなたかが記憶を辿って手書きした見取り図あり。この展一番の収穫。たてながの「コ」型、そのくぼみ部分にかのオリーブの木。
『物質のまなざし』(詩:瀧口修造 画:アントニ・タピエス 1975)もあり。実物は
多摩美術大学図書館/「書くこと / 描くこと - 瀧口文庫の詩画集から」展(2001)からご覧になれます。

 壁は空気のよき友、
 澄むは
 物質のまなざし
 --『物質のまなざし』より

なお世田谷美術館ではこの展の図録を製作中とか。束見本と展示品のカラー図版ページ数枚の「サンプル」をぶらさげて、会場で予約受付けしてましたよ。どんな内容になるのでしょう。

「瀧口修造の造形的実験」展(富山県立近代美術館 渋谷区立松濤美術館 2001) 図録
 編集:杉野秀樹、光田由里 翻訳:小川紀久子、ギャヴィン・フルー 
 デザイン:桑畑吉伸 制作:コギト
「多摩美術大学図書館瀧口修造文庫」サイト
・巖谷國士『封印された星』(平凡社 2004)


永津広空「closing doors」

2005-02-28 | ギャラリー
ゴールド自動車免許証書き換えの帰りに、カメラマニアおっさん溢れるエプソンカラーイメージングギャラリーで、今年一番となりましょう写真展に遭遇しました。永津広空初写真展「closing doors」。展に向けたご本人のお話を是非。
永津さんはグラフィック・デザイナーで、たとえば第7回モリサワ賞タイプフェイスコンテスト(2002)で銅賞入賞されている。それはともかくとして、エプソンのプリンタを使った公募作品から選んだグランプリ祝展、ということですが、技術と、作家の記憶と感性の歩みが合致したとき、こんな作品がうまれるのだなぁと、いてもたってもいられず会場を退散。いいなぁと思う写真展ほどじぃとみつめることができない。

森山新宿荒木展

2005-02-08 | ギャラリー
新宿オペラシティアートギャラリーの森山新宿荒木展へ。じっくり見入ったり撮られた街やものを語るでもなく、まして写真家本人のキャラや機材に入れ込むでもなく、ただ、大きくプリントされた写真の前を淡々と行き過ぎることが、森山大道をみる極上の喜びです。毎度悔しいくらいだ。だからして、パソコン出力した紙は時とともに表面に陰影をつくり、それをはりつめた空間は無惨と思った。
第132回芥川賞受賞作品『グランド・フィナーレ』(阿部和重 講談社)には、「コヨーテ no.1」に森山大道の写真とともに掲載された「新宿ヨドバシカメラ」も収録。写真と別々に考えて読むのがいい。《陸這記》 crawlin’on the ground/「新宿ヨドバシカメラ」参照。

野村レイ子の草木染め木箱

2005-01-23 | ギャラリー
スパイラルマーケットで1月31日まで、spiral market selection vol.63 野村レイ子+さくらいろ「草木染めと草盆栽」。野村さん、いいですね。楠の木箱のほのかな香り、それに、野に咲く草花をろうけつで染めた作品。楊子や葉書入れから文箱などさまざまあり。もう少し絵柄の種類をみたい。全て古典柄なんだろうか。ひとそれぞれにあわせて柄を選んでプレゼントしたい、どうぞますます。

写真は、右:野村レイ子「六寸箱桜」 左:さくらいろ「石付南天玉竜」