おかえりのすけBOOK

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『ウィスキー』

2005-05-31 | 映画
『ウィスキー』 2004 ウルグアイ=アルゼンチン=ドイツ=スペイン 
監督:フアン・パブロ・レベージャ、パブロ・ストール
 

撮影時「はい、ウィスキー」って言われて顔がほころぶのかどうか疑わしいところですけど、「はい、チーズ」よりは口が横に開くかも。でもそれなら「はい、ウィスキー飲もうよ」まで言ってくれ。

ふいの申し出にそれなりにわくわくするマルタ。長年いっしょに仕事していながら、きっとハコボには得意の逆さ言葉を言ったこともなかったのだろう。髪を整え、饒舌になってゆく。母親の介護をひとりで負ってきたハコボに、弟のエルマンはわびて金を渡す。性格が全く違う兄弟、それぞれの不器用。そのあいだで、別の種族の不器用マルタが「振れ」、そのわずかな振動が周囲に伝わる。どうでしょう、偽装夫婦なのはとっくにお見通しで、弟はそれほど絶好調ではなくて、マルタは手切金と思い身を引いただけであって、そのすべてにハコボは気づくことなく、マテ茶飲みながらまた古い機械まわして靴下を作り続ける、のか。

兄弟は常に対極にありますか? 親という同一の視点があるから対極がなりたちやすいです。ふたりは互いに自分の商売である靴下をプレゼントするでしょう、兄は、商品自体は安いけど丁寧に包装する、対して弟は、デザインも品質も値段もいいのだろうけれど、値札をはずすことにも気がまわらないといった風。確かに日常は、身近な誰かの態度に触れて、それを糧に逆をいくのは楽。弟妹の苦しみはその先だ。

リゾートホテルで出会った新婚夫婦とのからみがいまひとつわかりません。彼女は金の指輪を、狙っていたの? 

『無意味の原像』

2005-05-28 | 
奥成達氏の新詩集『無意味の原像』が出ました。表紙挿画は合田佐和子氏、発行はジョン・ソルト氏のhighmoonoon社、製作はbookbar4、くわしくは奥成達資料室からご覧下さい。

 虹の
 梱包を
 解
 くと
 跳ね
 る
 想
 いが
 身
 を
 よじ
 ら
 せ
 る暗

 い
 緑
 の
 魚
 の
 群れ
 の
 覆われ
 て
 いた
 泡
 を吹く
 風
 の味

 「風味」より一部抜粋

都市で青いウンコ

2005-05-27 | 
「都市」創刊号(1969 ) 田村隆一編集 詩を中心とする文学・芸術季刊誌

吉本隆明、金子国義、種村季弘、西脇順三郎、飯島耕一、加藤郁乎、吉岡実、入沢康夫、中村稔、吉増剛造、金子美恵子、高橋睦郎、萩原葉子、塚本邦雄、唐十郎ほか。詩作品の多くには自他注釈がほどこされている。堀内誠一の構成によるアジェやブレッソンらの写真、「底」と題された吉岡康弘によるお尻写真も。巻末には原稿募集のよびかけが。テーマは、汚物としての人間、または、何よりもだめな日本。

表紙:絵=野中ユリ、構成=神田昭夫
編集:田村隆一、守谷耀子
製作:矢牧一宏(矢牧一宏年譜/ふくろう叢書/皓星社参照)
発行所:株式会社都市出版社
グラビア・オフセット印刷:麹町美術印刷
活版印刷:光明社
製本:栄久堂製本

吉岡実の詩の世界の吉岡実詩集《神秘的な時代の詩》評釈1969年の項によると、同年、田村隆一の命名により都市出版社開業、「都市」創刊するも本号四冊と別冊一冊で廃刊。このころ田村は思潮社より第三詩集『緑の思想』を刊行しているが、その数カ月前吉岡に「おれは今度『青いウンコ』という詩集を出す」と言ったそうです。

人間学研究所/田村隆一詩集『緑の思想』

豆腐はジョニーで番長で

2005-05-25 | 料理
豆腐好きですからよく食べます。素材やパッケージに凝ったものはエスカレートしてどつぼはまってますし、コンビニの日持ちどうふは研究進みすぎてすでにエサ、その振れのなかならもう時と場合によってどれだってよいのですが、見つけたら買うのはやはり男前豆腐店シリーズ
「風に吹かれて豆腐屋ジョニー」はパッケージの曲線がスプーンでしゃくるによろしく、器にうつさず薬味と醤油でぺろりと食べます。「喧嘩上等やっこ野郎」は、かかってこいよ、上等だぜ!って言われるんですけどいや別にかかっていきたくないですと言いながらさきっぽつまんでやはり器にうつすこさないで食べたいわけです。「厚揚げ番長」なんかはここらじゃ顔の……って言うんですけど、はっきり言ってここらじゃ顔じゃないし、がんも番長にゃ負けないぜ!って言うけどあんたらこの売り場で隣あうだけよね、など、夜のスーパーで豆腐らと黙会話しながら30円引きシール貼られたジョニーや番長を連れ帰って一杯やるのがよい。食品もペット化か、いやでもうまいから。いやでもかわいいからと一緒か。

この男前豆腐をいちはやくとりあげたのはライターの奥山貴宏氏とのこと。ゆっくり眠れジョニー・豆腐、in 山形。

和光の製本家たち

2005-05-25 | 製本
和光大学表現学部イメージ文化学科津野ゼミナールによる「製本展」が、同大学図書館梅根記念室にて開催中(5/23-27)。東アジアに焦点をあてて本と紙の研究をおこなった昨年度は、和綴じ製本の基本を学んだり和紙の手漉きも体験したゼミ生+αが、最後にそれぞれがイメージする和綴じ本を、内容から素材の選択や装丁まで各自おこない、その提出作品が展示されている。

このゼミにわたしは製本相談員的にときどき行くのだけれど、ここ三年で基本的な洋綴じと和綴じを一回ずつ教えただけ。あとはゼミ生たちが勝手にしっかりやっていて、無謀な発想を時間をいとわず力づくででもかたちにしていくようすは、驚きであり心強くもある。木やビニールを使うにしても、本として開きがよくて丈夫であるためにはどうすればいいのか、苦心がみえる。いいぞ、和光の製本家たち。パチパチ。

昨年度の展示のようす

福井良之助孔版画展図録

2005-05-24 | 本、雑誌
現在確認しうる全作品を収録したという福井良之助展の図録がようやく到着。印刷も美しく、とくに鉛筆で描かれた作品の、堅さと粉末感までが呼び起こされるのはすばらしい。装丁は角背ハードカバー、背の部分だけ茶色の布、表紙は冬枯れの木立を描く孔版画の一部、裏表紙はまさにその作品を彫っているところだろうか福井のすらりとした手の写真。抜群の選択。今年一番の図録となりましょう。はて値段はいくらだったかなと思い出してみるになんと2000円!!!!
佐倉市立美術館で観たときに気になってしょうがなかった一枚の下絵もありました。それは《小さな世界》(1957)の下絵で、その空きスペースに、やがて《小花の少女》(1957)に結実したのであろう、いたずら描きのような最初の瞬間をとらえた走り描き。

福井良之助孔版画展図録
2005.3.8発行
学芸担当:黒川公二、柴田純江、住田常生、吉田尊子
編集:黒川公二
企画協力:株式会社アート・ベンチャー・オフィスショウ
海外作品調査:南平妙子、スティーブ・マロニー
翻訳:南平妙子
デザイン:梯耕治
印刷:光村印刷株式会社
発行:岩手県立美術館、佐倉市立美術館、高崎市美術館

Variations on a Silence

2005-05-22 | ギャラリー
「Variations on a Silence――リサイクル工場の現代芸術」展へ。
東京湾の人工島、城南島に完成、操業前のリーテム社東京工場が会場。対岸にある羽田空港に着陸せんとする飛行機が頭上をかすめる位置にあり、その轟音に誰もが天をあおぎ見るし、滑走路に着陸した飛行機の逆噴射音っていうんでしょうかごぉーいう音が地響きのように伝ってきて驚きます。この一体は東京スーパーエコタウン事業として選定された企業が続々集結中。頭上行き過ぎる飛行機や遠く行き交う巨大タンカーを見ながら、過剰なものへの嫌悪を育みましょう。

展示のなかでは平倉圭による『テキスト、山、準ー部分』がよかった。正確にいえば、その作品中、リーテム社の水戸工場を撮ったんでしょうか、リサイクルのために金属系粗大ゴミをぶっこわ(破砕)しているモノクロ映像に夢中、昨日みた餌必死ついばむ雀のことや洗濯ばさみのことなど話し居座る楽しい鑑賞ができました、「テキスト」読んでないけど。

リーテム社(社名は Recycle Technology & Managementより)の前身は明治42年に古物商として創業、現在は都市鉱山型リサイクル産業を目指し、新工場には見学のためのスペースも用意、とのこと。設計(坂牛卓)は、その見た目よりも、そこで働くひとたちの目線への思い遣りが感じられることが心地よかった。

こらたばこ吸うな

2005-05-20 | 金魚部
たばこ吸わないので喫煙者が減るほどうれしいんですけど、さすがに怖いね、あの全世界的たばこパッケージおどし文句合戦。ちょっと煙たいからやめてくんない?って言う気持ちを萎えさせるもの。そういうことなのよね規律って。
金魚部にその象徴、ローリィ・うたかた・ヴィアンさん入部。ご担当は、肺気腫防止を祈りながら過ごすうたかたの日々。


『植田実の編集現場』

2005-05-20 | 本、雑誌
『植田実の編集現場――建築を伝えるということ』

『都市住宅』編集長(~1976)、「住まい学大系」編集長(1987-1999)を経て現在もフリーで活躍する編集者・植田実氏が、2003年度日本建築学会賞文化賞を受賞したのをきっかけに企画され、花田佳明氏によってまとめられた本。「植田は批評そのものを扱うのではなく、自らの『夢』を巧みに編集することにより、雑誌や本そのものに別のかたちの『批評』力をもたせることに成功したといえるだろう」。植田さんを追った著者の「夢」が紙面に溢れる。

冒頭で著者が「植田実像が揺らぐ事件」としてあげた『真夜中の家』の読書体験と似たことが、わたしにもあった。「揺らぐ」ほど植田さんを知らないけれど、北園克衛をめぐる研究誌「kit.kat +」第2号(2003)での<還元的イメージと生のつぶやき>や、故・森原智子さんの個人誌「TOUCH」no.6(1988)での<傷>をお書きになっている植田実というひとが、あの植田さんなのだろうかと。その後「TOUCH」を持ってご本人にお会いする機会があった。なつかしい!森原さん、お元気ですかと聞かれた。亡くなったことを伝えた。
あとがきに森原さんはこう記した。「建築が芸術的要素の頂きにあるということは、植田実さんのあらゆる事物へのフレキシブルな接近が、どの様に大きな環をもっていられるのか知るのと同じことだ。」

この本のデザイン・装幀も手掛けた山口信博さんが、「住まい学大系」のブックデザインについて寄せた文章も貴重。「ハーフ・ジャケット」の誕生、製本屋さん泣かせの背タイトルのデザイン、それを記した表紙やカバーの指定書も収録。なお、前見返しは赤、後見返しはピンクです。

発行元はラトルズ社で、シェアード出版による。制作に関わるひととラトルズ社の株主から制作費を募り、売上に応じて利益分配するという仕組み。パソコン関係書籍が多いとのことだが、他分野から参加する機会を広める一冊にもなるだろう。

ラトルズ/シェアード出版について

戦争と万博

2005-05-18 | 製本
装幀がいやすぎて、中味は読みたいけど買えないというほどの本はそうそうない。そうそうないけどたまにある。
椹木野衣の『戦争と万博』。連載時は立ち読みしていましたけれど、単行本になってタイトルが「戦争と万博」の「と」部分を首として砂時計的に組まれているのにえもいわれぬ不快感を覚える。

方向音痴は地図みるな

2005-05-17 | ぶらり
地図大好きなのに方向音痴です。半年間隔くらいで何度も訪れているところに今日もいきましたがやはり迷いました。遅れてはならないと思うほど、地図をプリントアウトして予習などするわけですが、それが逆効果になることもわかってる。悔しい。あそこを出てこんなかんじの角をまがるとこんなかんじの通りが続いていてその先です、という程度の記憶をたよりに、途中地図と見比べることなく誰かに尋ねることもなくゆっくり歩くとわりと問題なく着くんだけどね。
ぶらり歩いたあと地図をみて足跡を確かめるのは楽しい。今日迷い歩いた道をたどったら、目的地の一角を取り囲むように一周していることがわかりました。見事です。これが次回のための学習にならないというのは、方向音痴とはまた別の問題でしょう。

岡倉天心展

2005-05-15 | ギャラリー
オンサンデーズに給水塔柄の革バックがしばらく前からあって、給水タンク写真家のわたしとしてはたいへん気になるのだが、どう考えても持ち手が頼りなくて買えない。しかし売れ行きは気になるので、最近何度か立ち寄っている。今日もまだあった。カルバンクラインも給水塔や電線柄のティーシャツ出していますね。
さてワタリウム美術館は、一回料金払えば期間中何度もその展をみられるのがいいです。給水塔バックにつられて岡倉天心展もちょこちょこと。ボストン時代に携帯していたという茶道具一式はみなコンパクトで好ましい。情愛深き天心のプライベートな手紙もあり。その筆跡は当時のマルモジではないの? 磯崎新監修による再現「六角堂」もあり。実際の五浦あたりは日が沈むとじつにたよりなく、六角堂もその狭さと海の間近さに、尾てい骨がざわざわします。
今月末には展覧会図録『岡倉天心・日本文化と世界戦略』が平凡社から刊行、磯崎新の書き下ろし「五浦六角堂」収録、デザインは勝井三雄とか。展覧会初日どころか期間中に発刊ままならないのに「図録です」と言いはるものが増えました。仕上がりがよいことがなによりですけど、展覧会図録って言うのやめたら?へんです。当事者的にはそのことがなににどう影響しているというのでしょう。

眠る本、装う本

2005-05-12 | 製本
第3回 東京製本倶楽部展「眠る本、装う本」
 日時:2005年5月31日(火)-6月5日(日)10:00-18:00 (31日14:00から、5日17:00まで)
 場所:目黒区美術館 区民ギャラリー

美しくルリユールされた「装う本」と、それを待つ「眠る本」をテーマに、ルリユールされることを前提にした「未綴じ」や「仮綴じ」で出版された「ブロシュール」のシンプルな美しさも紹介。関連イベントもあり。詳しくは東京製本倶楽部サイトからどうぞ。

・写真は第2回東京製本倶楽部展<-つくる本、みつめる本-> 2003.4.8-4.13のようす。東京製本倶楽部ウェブサイトより。

サッちゃん元気ですか

2005-05-07 | 
「サッちゃん」の作詞でも知られる阪田寛夫さんが亡くなりましたが、「サッちゃん」は好きだったなぁ。《ちっちゃいか~ら》のところがほんとうにちっちゃいから~らしょうがないよみたいなメロディでね。《犬の~おまわりさ~ん、こまってしまってわんわんわわーん》的に。それで遠くにいっちゃったサッちゃんは元気でいるのかと思っているひとは多いだろう。だってなにもかも思い当たる。こんな作詞こそ魅力的。

「サッちゃん」 阪田寛夫作詞・大中恩作曲

サッちゃんはね サチコっていうんだほんとはね だけどちっちゃいから じぶんのことサッちゃんって呼ぶんだよ おかしいな サッちゃん

サッちゃんはね バナナが大好きほんとだよ だけどちっちゃいから バナナをはんぶんしかたべられないの かわいそうね サッちゃん

サッちゃんがね 遠くへ行っちゃうってほんとかな だけどちっちゃいからぼくのことわすれてしまうだろ さびしいな サッちゃん