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おかえりのすけBOOK

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『ウィスキー』

2005-05-31 | 映画
『ウィスキー』 2004 ウルグアイ=アルゼンチン=ドイツ=スペイン 
監督:フアン・パブロ・レベージャ、パブロ・ストール
 

撮影時「はい、ウィスキー」って言われて顔がほころぶのかどうか疑わしいところですけど、「はい、チーズ」よりは口が横に開くかも。でもそれなら「はい、ウィスキー飲もうよ」まで言ってくれ。

ふいの申し出にそれなりにわくわくするマルタ。長年いっしょに仕事していながら、きっとハコボには得意の逆さ言葉を言ったこともなかったのだろう。髪を整え、饒舌になってゆく。母親の介護をひとりで負ってきたハコボに、弟のエルマンはわびて金を渡す。性格が全く違う兄弟、それぞれの不器用。そのあいだで、別の種族の不器用マルタが「振れ」、そのわずかな振動が周囲に伝わる。どうでしょう、偽装夫婦なのはとっくにお見通しで、弟はそれほど絶好調ではなくて、マルタは手切金と思い身を引いただけであって、そのすべてにハコボは気づくことなく、マテ茶飲みながらまた古い機械まわして靴下を作り続ける、のか。

兄弟は常に対極にありますか? 親という同一の視点があるから対極がなりたちやすいです。ふたりは互いに自分の商売である靴下をプレゼントするでしょう、兄は、商品自体は安いけど丁寧に包装する、対して弟は、デザインも品質も値段もいいのだろうけれど、値札をはずすことにも気がまわらないといった風。確かに日常は、身近な誰かの態度に触れて、それを糧に逆をいくのは楽。弟妹の苦しみはその先だ。

リゾートホテルで出会った新婚夫婦とのからみがいまひとつわかりません。彼女は金の指輪を、狙っていたの? 

『マシニスト』

2005-03-31 | 映画
監督:ブラッド・アンダーソン スペイン/アメリカ 2004 

トレバー役のクリスチャン・ベイルの痩せっぷり(約28.6kgの減量)はみごとに違いないです。ある事実に向き合うことができなくて逃げたがために、自分の記憶や周囲の事象を、逃げるための理由につくりあげる妄想力。寝てないって言ってますけどうたた寝はしてんですから。最後はしかしトレバーよよかったなと思ったが、これは加害者のこころを救済する映画ですから免許書き替えのときに見せるDVDとして採用されたらいいでしょう。

バルセロナで撮ったんだそうです。撮影時は猛暑であったらしいが色合いは英国のようです。トレバーの自宅で大きな役割を果たす冷蔵庫がきっとGE社の白で、それが映ったところではじめて米国映画?と思ったくらいです。

『マシニスト』公式サイト

『デーモンラヴァー』

2005-03-18 | 映画
監督:オリヴィェ・アサイヤス 音楽:ソニック・ユース 出演:クロエ・セヴィニー、コニー・ニールセン、大森南朋、山崎直子ほか。フランス 2002

3Dポルノグラフィックの先鋭、東京アニメ社の買収を、フランスのヴォルフ・グループが目論んでいる。その一方で、ヴォルフ・グループの新しいWebサイトの独占権獲得を、マンガトロニクス社とデーモンラヴァー社が争う。スパイだらけの物語。冒頭でディアーヌが、東京→パリ飛行機内トイレに、とある証拠をまるまる残すので、宣伝にあった「スタイリッシュ・ノワール」に期待膨らむも、ストーリーは単純に展開し後半は効果音乱発でむむ。通り魔、暴力、ハードコアポルノ……それらに関わる映像は今日もモニタの奥に溢れているだろう。不快な現実に目をふせて、わざわざ映画にそれを観ているとはなにごと。ラストシーンは淡々とそれらの映像を眺めるこどもたち、不快な現実が目に触れる以前の。

日本が第二の舞台。外人接待はお座敷のあとクラブへ。ビールはキリンかエビス、ウィスキーはサントリー、のようです。接待中に座敷のそとで携帯かけてるふたり。男はぺこぺこ、女は文句言ってます。パリの和食レストランではセレブたちが海老天を手づかみし、食後にsakeを飲みます。飲酒運転も車の窓から煙草ポイ捨てもOK! 
グンゼが特別協賛とのことですのでウェブサイトをみたら「ちゃんとした下着を、はこう」と呼びかけられました。

CODE 46

2004-10-08 | 映画
監督:マイケル・ウィンターボトム イギリス 2003

この監督の劇場用長篇デビュー作『バタフライ・キス』1995は、やくざ映画みて肩いからして劇場を出るおっさんよろしく、爽快な気分で銀座シネ・ラ・セットの階段を降りたものです。内容はレズ・パンク・ロードムービーなんだけど。その後『ウェルカム・トゥ・サラエボ』1997、『ひかりのまち』1999あたりが印象深く、そして今回の初SFものの中心舞台は上海。徹底した管理社会のなかで、中国語、英語、スペイン語……いくつもの魅力的な言語を入り交えて会話するひとたち。性別国籍に続けて自然分娩か体外受精かをきかれる「内」社会。「内」と「外」の社会を越境する描きかたはあまりにベタ、でも、目覚ましや携帯電話、アルバムなど想像しうる無理のない近未来の描きかたがいい。

二人が法をやぶってまで追求する愛、あるいは遺伝子操作という「知」だかなんだかでこれまた追求する愛の賛美か。見どころはそれよりもまずサマンサ・モートンとティム・ロビンスの肌理具合が似てるなーということであります。二人はいっしょにいた時間の記憶を消されるが、それぞれ当人の頭のなかの記憶が消されるだけ。ところがここ「内」では、散在してある共通の記憶が集まって再生されることがないので、本人が知らないと言うのなら、それはなかったことになるのです。「記憶にない」がまかりとおる。ティム・ロビンスの妻もみごとに知らんぷりして、自分が思い描く旦那の腕のなかで恍惚の表情。これほどの管理社会なら、サマンサ・モートンのアルバムに残された映像だってとたんに消えてしかるべきだろとも思うけど。いったん「外」に出たひとの記憶は放っておかれて渦巻いて、荒涼とした台地にしみつく。
音楽がいい。担当したジ・フリー・アソシエイションは、デヴィッド・ホルムズとスティーブン・ヒルトンによるユニット。「ステイ・オア・ゴー」(クラッシュ)、「ウォーニング・サイン」(コールドプレイ)、「ノー・ウーマン・ノー・クライ」(ボブ・マーリィ)といった選曲も。

街頭遺伝子検査所みたいな場面が出てきてこのときの二重螺旋照合図には笑うが、二重螺旋構造解明のワトソンさんとクリックさんといっしょに1962年ノーベル医学生理学賞を受賞したモーリス・ウィルキンスさんは今月5日、87歳で亡くなったそうです。

『CODE 46』公式サイト
・梶浦秀麿さんによるウィンターボトム監督

父、帰る

2004-10-02 | 映画
監督:アンドレイ・ズビヤギンツェフ ロシア 2003

12年ぶりに「帰って」きた父。いつものように戯れて家に戻った兄弟に母が、静かにしなさい、なかでパパが寝ているんだから、と、煙草プカー。寝室のドアをあけると、ブルーのシルクのシーツをまとい、足裏をみせてベットに横たわる男。あれはほんとうのパパなの? 屋根裏にしまってある12年前の家族写真を探しにいくふたりの息子、イワンとアンドレイ。旧約聖書の「アブラハムのイザクの犠牲」の場面にはさまれた写真をみて、たしかにパパだ、とふたり。そして翌日から三人の「一週間」がはじまる……。

聖書をしらないと謎おおすぎ。と感じさせるところがこの作品の弱さ。ポップコーンくいながら映画みるひとはどうでもいいって監督言っていて、それはまよわず同意するけど、聖書とポップコーンを両極に置かれても困る。
これは、ごくふつうの兄弟(姉妹)を描く映画とみればよい。誰がみても歳が異なることだけを役割として与えられた兄弟(姉妹)という関係の、陳腐さと貴重さ、ゆるぎなさ。とにかく父といったらおとうさんであって、神ではないよわたしにとっては。兄弟が戯れて、弟のわがままを兄がきき、父との約束をやぶってしまった、父は兄を叱る、弟が名乗り出る、それでも父は兄を責める、弟は兄が好き、その兄が慕う父が兄を責めるのが許せない、そうしてないがしろにされた自分が哀しい、兄も逆の意味で哀しい、父もまたそれは誤解なんだと断末魔で無防備に告白する。みなそれぞれ哀しい。映画ですから最後は劇的なんですが、場面転換は驚くほど淡々。聖書抜き父性抜きとして、水と木と雑草と火と兄弟と車と船と、魚と灯台と飛び込みとカメラと双眼鏡、個々の日記に記されることがら。
アンドレイのカメラにおさめられたモノクロ写真がいいです。おとうさん、撮らなかったの?映んなかったんじゃない?

参照:公式サイト
   No hay banda/「父、帰る」

『マエストロ』

2004-09-12 | 映画
監督:ジョセル・ラモン/2003/アメリカ 公式サイト
"パラダイス・ガラージ"のラリー・レヴァン(1992年没)、"ロフト"のデヴィッド・マンキューソ、"ギャラリー"のニッキー・シアーノらを中心にして、70年代のクラブカルチャー起源を記録したドキュメンタリー。ほかにフランシス・グラッソ、フランキー・ナックルズ、デリック・メイ、フランソワ・Kなどのインタビューも。
本邦初公開という“ロフト”や“ガラージ”の映像はすばらしい、ラリー・レヴァンのプレイ、キース・ヘリングの姿もあった、しかし短い、その短さが活きればよい、だがこの作品はそうではなかった。尺をうめるためにいたずらに演出したような処理、肝心なことを聞かずに感想にとどまっているようなインタビュー、そして最後に流された、「いまこの精神を継いで世界で活躍するDJたち」!??を羅列した部分にはうんざり。愛がないよ愛が。どんないきさつで撮られたのだろう。
デヴィッド・マンキューソ「金のあるやつらだけが来れる場所ではだめ。いろんなやつらが集まらないと、新しいものはうまれない」
フランキー・ナックルズ「ジャングル、ドラムンベース……、結局ロフト=ガラージ・ハウスに戻ってくる」

ムービーネット

ロスト・イン・トランスレーション

2004-08-14 | 映画
2003 ソフィア・コッポラ 米
Lost In Translation
冒頭うす桃色の柔らかい素材のショーツから透けて見えるお尻。うす水色のタンクトップ、真っ白なシーツ。
その後はしばしお笑いの連打。慇懃無礼なパークハイアットホテルで巻きおこる数々。その後CM撮影現場でのかいつまみ通訳。こんな具合に。ハリウッド俳優ボブは、日本のCMディレクターの身ぶり手ぶりのようすから訳される言葉以上のものを感じているが、逐一正確に知る必要はこの際ない。なんとなく知らんぷり、なんとなく化かしあい。仕事ならこれくらいが良い加減。初対面なら気のきいた遊びになるが、夫婦間だと気まずくなるか。異国の病院ではさすがに困るだろうと思いきやまぁそれもほどほどでなんとか。そもそもひとりずつの頭と身体で知らんぷりや化かしあいをしてるからな。
母親に電話したあと嗚咽している横顔、それから最後にボブに抱きしめられて眉間に寄せた皺、シャルロットの表情がいい。

サントラは「ヴァージン・スーサイズ」と同じくブライアン・レイツェルが担当。コーネリアス推薦の日本の曲のなかから、はっぴぃえんどの「風をあつめて」をピックアップ。途中カラオケのシーンでアイゴンが熱唱。他にもHIROMIXや藤原ヒロシらがカメオ出演。藤井隆、林文浩、田所豊はそれぞれぴったりの役どころ。イケスカナサを満身にたたえた通訳女は、元・夢の遊眠社の竹下明子さんというひとだそうです、みごと。
公式サイトで「最後にボブ・ハリスは何を囁いたか?」ごっこしてました。「生まれ変わったら一緒になろう(神奈川県・男性)」がいいんじゃないですか。

ボブとシャルロットが最初に会ったエレベーターの中にいた女の子はトイレを我慢していたのか。隣の母親の着物が左前なのはおかしいと配給元に文句言ったひとは何人いるの?/病院でボブに話しかけてきたおっさんは素人ではないだろう/しゃぶしゃぶ店、あんなに無口な店員はいまどきいないと思うけど/サントリーと虎やの関係/ボブの部屋に一度だけ直接ファクスが入ったのはなぜ/窓辺に体育座りのシャルロット。眼下に拡がる関東平野/ゲーセンで夢中少年たちの異様、その隣でうっとり見つめるカノジョのもっと異様/京都ロケは必要だったのか/水色の襟巻きはあれで完成?スカーレット・ヨハンソンが少女役を演じた『真珠の耳飾りの少女』は別名「青いターバンの少女」。水色の似合う女優だ。