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物語シリーズ 終物語 第一話 おうぎフォーミュラ(別冊少年マガジン10月号掲載)

2013-09-07 20:53:33 | 本、小説、漫画、動画、映画、音楽等
物語シリーズは、拙ブログでも何度か取り上げ、現在TVアニメでも、セカンドシーズンが放送中とのことで、結構新しい情報、コンテンツにも接しているのですが、標題のシリーズ最終ターンの第一話を読みましたので、臆面もなく感想などを書きます。ネタバレを多分に含み、過去に西尾維新≒新井素子などいう酩言を吐いたワタクシのことですから、お気に障りましたら、なにとぞご容赦を。

今回の話はタイトルにあるように、忍野扇(おしの・おうぎ♀)が神原駿河(かんばる・するが)に紹介されて、阿良々木暦(あららぎ・こよみ)に会い、面妖な一室に閉じ込められるところから始まります。その教室(?)は、シリーズを通しての主人公阿良々木暦が、高校に入学して、吸血鬼譚に堕ち嵌っていくまえまでは、”友達をつくると人間強度が下がる”という信条とともに、ぼっち学生生活を送っていた、そのきっかけとなった事件の日時のままの教室でした。扇に促されるまま、その事件を回想し、そこで起こった出来事の悲惨な結果と、暦自身も無意識下では認識していた、さらにえげつない真相が、ぼっちの暦を形作った、という内容です。
第三者に事件を回想して語りながら、真実を暴き出すというプロットで、忍野扇はいわばアームチェアディティクティブの役割を果たし、阿良々木暦に自分自身の本当の心の動きを認識させるのです。
途中、ジャンル違いのコミック雑誌という掲載場所なのもあってなのか、作者は”読者への挑戦”を突きつけます。「戯れ言使いシリーズ」などでも、作者のミステリへの傾倒はよく知られているのですが、この物語シリーズで、明快な”フーダニット”を表に出したのは、珍しいことです。答えは、文章中に誤解の余地無く明示されていますので、特に作者自身による作中解説を読めば、解りやすいようになっています。ただ、事件を引き起こした動機、心理、直接の証拠から、正解が導き出されるのでなく、傍証めいた帳尻あわせから、答えが詳らかになるのは、この物語シリーズの制限範囲でもあり、また扇と暦の関係を明確にするうえでの作法でもあるのでしょうが、ちょっと消化不良気味です。
今後、この「おうぎフォーミュラ」で再浮上した主人公暦と深い業、因縁のある老倉育(おいくら・そだち)を主軸にしたエピソードが続くようです。前作の暦物語までで、主人公と既登場人物の掛け合いは大量に語り尽くされていますので、終焉に向かって、過去の因縁と、いまの主人公が紡ぎ合っていくお話になるのかな、と思っています。
また、今回のおうぎフォーミュラは登場人物が多いだけでなく、作風でもありますが、皆、良く喋ります。三十名ほどが行間なく勝手にしゃべくりまくるシーンは西尾維新の本骨頂なのかもしれませんが、ちょっと現実離れしてますし、読みづらいです。

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