夏原 想の少数異見 ーすべてを疑えー

混迷する世界で「真実はこの一点にあるとまでは断定できないが、おぼろげながらこの辺にありそうだ」を自分自身の言葉で追求する

分かりやすい悪党トランプ

2025-02-08 13:30:46 | 社会


 トランプは、1月20日に2期目の大統領を就任して以来、やりたい放題の政策を乱発している。その政策は、バイデンの分かりづらい悪行と比べ、トランプの悪行の数々は実に分かりやすい。

 トランプの悪行を挙げれば、枚挙にいとまがないが、それは、メキシコ・カナダに高関税で脅したことで明らかなように、高率の追加関税で世界中を脅し、意のままにすることから始まり、グリーンランドやパナマ運河の領有権を主張したのは、あたかも、世界はアメリカの所有物とでもするかのような振舞いである。
 トランプはSNSで、カナダを「51番目の州」と表現し、ジャスティン・ トルドーを首相ではなく「知事」と呼んだ。それには、当のトルドーは、トランプが「カナダ併合し、膨大な資源を欲しがっている」と警戒を呼び掛けた。
 さらには、地球温暖化を否定し、パリ協定離脱、WHO脱退等、国連中止で勧められた人類の危機対策をすべて破壊しようとしている。
 
 アメリカ国内でも、多様性尊重政策のDEIを否定し、性別は男と女以外はないと、現に存在している性的マイノリティの存在を否定するなど、人権軽視は甚だしい。性的マイノリティは存在してはならない、と言うに等しい方針は、彼らに与える精神的苦痛は計り知れない。

 その中でも、何といっても世界を驚かせたのは、アメリカによる「ガザの所有」である。ガザからパレスチナ人を消滅させることを目的にし、「イスラエルの邪魔者を皆殺しにして、生き残った者は、追い出してしまえ」と言っているに等しい。これには、国連アントニオ・グテーレス事務総長は、即座にethnic cleansing民族浄化という言葉を用いて非難した。民族浄化とは、特定の民族集団が武力を用いて他の民族集団を虐殺・迫害・追放して排除 することだが、まさにイスラエルが実行し、トランプのアメリカがそれを支援するということである。
 それは勿論、イスラエルとパレスチナの2国家共存を否定しているが、永久に平和の芽を摘み取るばかりか、その周辺地域にも、とてつもない混乱を巻き起こすものだからだ。 ガーディアンは、「最悪の悪夢」として、エジプトとヨルダンの受け止め方を報じているが、周辺国は猛反対しているので、実現の見込みはない。
 さらには、民族浄化を進めるイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフに逮捕状を出したICC国際刑事裁判所を制裁対象とする大統領令に署名した。これにも、一部の極右指導者を除き、ヨーロッパ諸国首脳を始め、世界中から非難の嵐が巻き起こっている。

アメリカに追随する日本政府は、世界の極右指導者並み
 世界中の首脳が批判するトランプの言動を日本政府は、一切の批判を封印している。「ガザの所有」にも、林芳正官房長官は「発言の真意は分かりかねる」と曖昧に語るだけでである。このことは、 トランプを崇拝する一部の極右指導者の立場に近く、他の政府とは際立った違いを見せている。
 2月6日、アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領は、トランプに習いWHO脱退を表明した。ミレイは、トランプを崇拝する極右・新自由主義信奉者として名高いが、ネタニヤフも含め、ハンガリーのオルバン・ヴィクトル、イタリアのジョルジャ・メローニ など続々とトランプに秋波を送っている。これらの政治指導者側に日本政府は立っていると批判されても、何ら抗弁できないだろう。
 
 2月7日、ネタニヤフの次に首脳会談を行った石破茂は、「神様から選ばれたとトランプ大統領は確信したに違いない」と銃撃写真で発言するなどトランプに忖度、称賛を繰り返した。共同声明では、中国を名指しで非難し、「日米関係の新たな黄金時代を追求する」と、かねてからの米日の一体化を確認したに過ぎない。
 脅しの手段の関税につては、「米財政赤字の縮小に寄与する」「相互関税 」を発表する計画とし、先送りされただけで、何ら解決してはいない。
 要するに、中国敵視を掲げ、米日安保体制を称賛し、さらなる軍事同盟の強化を約束しただけなのである。
 結局石破茂は、アメリカの「黄金時代」に日本は貢献します、と頭を下げにいっただけである。

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パレスチナ支援の「ハーグ・グループ」の設立 欧米に都合が悪いニュースの一つ

2025-02-04 13:52:40 | 社会


ハーグ・グループ
 グローバル・サウスの代表9ヶ国が、1月31日、パレスチナ人を守るため、オランダのハーグで、グループを設立した。その名もハーグ・グループである。その目的は、国際司法裁判所(ICJ)と国際刑事裁判所(ICC)の判決を擁護し支持する ことである。
 それらの国は、ベリーズ、ボリビア、コロンビア、キューバ、ホンジュラス、マレーシア、ナミビア、セネガル及び南アフリカで、アフリカ4か国、中・南米4か国、アジア1か国からなる。かねてから、欧米に異を唱えてきたアフリカや中・南米の国々に加え、全方位外交を主軸とするASEANの中で、成長著しいマレーシアが加わったことの意義は大きい。
 
 ハーグ・グループの共同声明は「国際連合憲章に定められた目的及び原則、並びに国際連合憲章が全ての人々に保障する自己決定権を含む不可侵の権利を擁護する全ての国の責任に基づき、イスラエル、占領国によるガザ及びパレスチナ占領地の残りの地域におけるパレスチナ人に対する大量虐殺行為により失われた生命、生計、コミュニティ及び文化遺産を深く悲しみ、このような国際犯罪を前にして受動的であり続けることを拒否し、イスラエルによるパレスチナ国家の占領を終わらせる義務を遵守することを決意し、パレスチナの独立国家パレスチナの権利を含む、パレスチナ人民の奪うことのできない自己決定権の実現を支持する」としている。
 
 言うまでもなく、この9ヶ国は、西側の二重基準を批判したもので、西側にとって「都合の悪い」ものに属する。したがって、ほとんどの西側メディアは、これが設立されたこと自体をニュースにせず、例外的に報じたのは英紙ガーディアンぐらいである。

崩壊寸前の国際秩序
 第二次世界大戦後、戦勝国である欧米とソ連は、国連を軸とした国際秩序を形成してきた。国際法の概念も、欧米で作られたと言ってもいい。国連本部がアメリカのニューヨークにあり、スイスのジュネーブに国連貿易開発会議(UNCTAD)、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などの多くの国連機関が置かれているのも、それを明らかにしている。
 しかし、パレスチナ問題に関する限り、その後の欧米の国連と国際法への無視・違反は目に余る。
 アントニオ・グテーレス国連事務総長は、パレスチナ人民連帯国際デー(11月29日)にメッセージを寄せ、「国際司法裁判所と総会で確認されたように、パレスチナ領域の違法な占領に終止符を打つこと。そして、国際法と関連する国連決議に沿って、イスラエルとパレスチナが平和と安全の内に共存し、エルサレムを両国家の首都とする2国家共存による解決に向けた不可逆的な前進」を、加盟各国に求めた。 
 ネタニヤフのイスラエル政府は、2国家共存を拒否し、パレスチナ人へのジェノサイドを続け、この地でのパレスチナ人を退去させ、イスラエル国家のみの繁栄を目指している。 グレーテスは、上記のメッセージで、「1年余りが経過する中でガザは廃墟と化し、4万3,000人を超えるパレスチナ人が死亡したと伝えられ、その大半が女性や子どもたちです。そして人道危機が日増しに悪化しています。これは恐ろしいことであり、許しがたいことです。一方で、東エルサレムを含むヨルダン川西岸被占領地区では、イスラエルによる軍事作戦、入植地の拡大、立ち退き、建物破壊、入植者による暴力や併合の脅しが、さらなる苦痛と不公正をもたらしている。」と述べている
 
 この国際法も国連決議も無視し続けるイスラエルを、欧米諸国の政府、多くの主要マスメディア、一部の左派(フランス「不服従のフランス」、ドイツ左派党、英国元労働党党首ジェルミー・コービンを中心とした労働党を除名された左派、アメリカ民主党左派・民主社会党など)を除いた極右から中道左派勢力のすべてが無条件に擁護しているのである。欧米政府は、イスラエルの蛮行を黙認するどころか、軍事支援によって虐殺に使用される兵器を未だに供与し続けているのである。
 イスラエル政府を批判すれば、反ユダヤ主義と非難される。現に、欧米では若者、左派系労組を中心に大規模な親パレスチナデモがたびたび行われるが、それらは禁止され、警察権力によって弾圧される。ホロコーストを行ったドイツでは、イスラエル政府によるジェノサイドは見てみないふりをし、それはフランスでも英国でも同様で、、かつてのユダヤ人への迫害から、イスラエル政府が何をしようとイスラエル政府への批判はタブーであり、一切封印されている。アメリカにいたっては、バイデン政権ですら、イスラエル擁護を基本としていたが、共和党のトランプ政権は、国連パレスチナ救援機関UNRWAへの資金を停止し、  アメリカ議会下院は9日、国際刑事裁判所 ICCに制裁を科す法案を可決した(1月30日に、民主党左派が多い上院で否決)ほどである。

 多くの欧米人にとっては、極右勢力を除き、移民への人権は、最大限重視されるが、パレスチナ人の人権は、まったくないに等しい。

 このような状況の中で、9ヶ国は国連中心の国際秩序の維持を訴えたのである。それは、ソ連なきロシアや資本主義システムを導入した中国が極めて恣意的な国際法の運用を行う状況で、国連中心の国際秩序を築き上げてきた欧米自らが、その秩序を破壊しようとしているからである。

 愚かにも、アメリカ追随の外交方針しか持たない自公政権の首相の石破茂が、イスラエルのネタニヤフの次にトランプと首脳会談を行い、その会談を自慢げに発表する姿は、あたかも尻尾を振って小躍りする犬のようである。日本がアジアの一員としての認識が少しでもあれば、マレーシア政府のように行動すべきであるのは、当然の論理なのだが。

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2025年も悲劇は続く、パレスチナでもウクライナでも

2025-02-02 10:26:29 | 社会

破壊されたガザ。この下に、未だにイスラエル軍に殺された何万人ものパレスチナ人が眠る


ロシアによるミサイル攻撃の穴を修復するウクライナ人。毎日のように、民間人がロシア軍に殺されている。

 1月20日大統領に就任したトランプは、「戦争を終わらせる」と言い続けてきた。パレスチナでもウクライナでも戦争はーーパレスチナの場合は、戦争というよりも、パレスチナ人の絶滅、放逐を目的としたジェノサイド行為だがーー終わっていない。トランプが「終わらせる」と言うのは、それが大言壮語だとしても、欧米、特にアメリカが、実際に行われている戦争の継続の決定権を握っていることを、トランプ自身が理解しているからである。それは、イスラエルもウクライナも、主にアメリカ、ドイツ、英国などの国々の供給した武器で戦っているということでも明らかである。イスラエルもウクライナも、NATO諸国からの武器供給と財政支援が止まれば、戦争継続は困難になる。そのことをトランプは理解しているのである。

 イスラエルとパレスチナの抵抗組織ハマスと停戦が期限つきで実現した。しかし、イスラエルは停戦後もガザ地区でも西岸地区でもレバノンでも、テロリストを殲滅させると言って、パレスチナ人、アラブ人を殺害し続けている。
 トランプは、大量のパレスチナ人がガザ地区を離れ、ガザ地区全体を「一掃する」べきだという主旨の提案をした。パレスチナ人をエジプトとヨルダンに強制移住させろ、ということである。これには、パレスチナ人権団体アダラの代表ハッサン・ジャバリーン氏は「戦争直後にガザを『浄化』することは、パレスチナ人の民族浄化を通じて、事実上戦争を継続することになるだろう」と語った。当然のように、エジプトとヨルダン政府はこの提案を拒否したが、トランプは「われわれは彼らのために多くのことをしている。だから彼らはやるだろう」と、トランプは自説を繰り返している。イスラエルは、パレスチナ難民の支援と保護を目的として国連が設立したUNRWAの活動を禁止したが、トランプ政権をそれを指示している。また、バイデン政権が供給を停止していたMK84という大型爆弾をイスラエル軍への供与を再開した.
  
 これらのことは、トランプ政権が、イスラエル・パレスチナの2国家共存を拒否し、パレスチナのジェノサイド民族浄化を狙うイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相 の極右政権をさらに強力に支援するこを示す一部である。その前のバイデン政権も、ヨーロッパ諸国も、何万人にもパレスチナ人が殺害されようとイスラエルへの軍事支援を継続することで、ジェノサイドを黙認していたのだが、トランプは、さらに進んで全面的なイスラエル支援を強化しようとしている。しかしそれでも、あるいはそれ故に、パレスチナ人の抵抗は終わることはない。抵抗と弾圧という図式で表される戦争は決して終わることはないのである。
  

 ウクライナがロシア軍を領土全域から排撃するという勝利は、完全になくなっている。その中でウクライナでは、脱走兵が後を絶たず、新兵の供給は、極めて困難になっている。アメリカは徴兵年齢を下げるよう要求しているが、若者たちは、徴兵から逃れようと必死になっている。これらの記事で明らかなように、前線で負傷した兵士が病院から脱走する者も多く、彼らは再度前線への命令を受けることになるが、勝てる見込みがまったくない戦闘に疲れ切っているのである。
 ロシアの進攻以降、ウクライナの人口は、50万人が死亡し、50万万人が国を脱出したという報道があったが、これはウクライナ国立銀行の公表したもので、実際に人口減は遥かに多く、国連は侵攻後、800万人減少したと報告している。
 西側メディア、特に日本の新聞・テレビは、ウクライナ政府や英国国防省などの、ロシア側の負傷者を過大に見積もった数字や、北朝鮮兵の動向(ウクライナ軍と韓国軍情報機関の真偽不明の情報)を過剰に報道しているが、それは、NATO側の「大本営発表」であり、ウクライナへの軍事支援を強化させるための情報操作と言うべきだろう。
 どんなにNATOの軍事支援で武器弾薬が増加しても、戦う兵士が不足しているウクライナ軍が、ロシア軍を排撃できる見通しは、もはや完全にないという認識をゼレンシキー政権も持ちつつある。だから、最近は度々、和平交渉という言葉を口にするのである。
 
 トランプは、1月23日、ロシアに停戦という取引dealに応じなければ、「高水準の関税と制裁を課す」と脅したが、ロシア大統領府のペスコフ報道官は即座に「特に目新しさはない」と一蹴した。 ロシア側は、既に高関税も制裁も受けている中で、戦争経済が確立している。その状況で有利に進軍を続けているので、「脅し」に屈する必要性はないのである。
 
 このまま進めば、ウクライナは国家として壊滅しかねない。それでも、2024年10月にNATOの事務総長に就任したマルク・ルッテは、「米国にウクライナ向け兵器供与を継続するよう求め、その費用は欧州が支払う」と述べ、NATOは軍事支援をやめようとしない。それは、ヨーロッパ諸国首脳とメディアに登場する「専門家」が、誇大妄想のように、ロシアは、ウクライナの次は、ヨーロッパ諸国全体を侵略してくるので、これはNATOとロシアの戦争だと見做しているからである。しかし、そのように見做せば、ウクライナの敗北は座視できず、軍事支援だけでロシアの敗北が不可能ならば、NATOの直接参戦しか手段はなくなる。確かに、NATOが参戦し、派兵すれば、ロシア軍を排撃できるだろう。しかしそれは、言うまでもなく、第三次世界大戦の始まりとなる。
 
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フジテレビ会見 商業メディアは、利益優先の資本の論理で動く

2025-01-28 13:57:10 | 社会


 中居正広のセックススキャンダルは、中居自身の問題から、むしろテレビ局の責任追及のへと発展し、フジテレビは1度目の会見を「失敗し」、10時間以上費やされた2度目の会見を余儀なくされた。
 この会見の翌日、テレビ朝日の放送で弁護士の亀井正貴は、「(フジテレビに)コンプライアンス体制も、(雁首を並べた)フジテレビ役員もコンプライアンスの知見も意思もないことが明らかになった」と明確に指摘したが、まさに人権を重視するコンプライアンスよりも、会社利益が優先する体質と役員たちの無能ぶりを世界にさらしたのである。

 会見冒頭から、41年もフジテレビの君臨する取締相談役の日枝久が欠席していることが問題視された。副会長の遠藤龍之介は、日枝に「ただやはり影響力があることは間違いない」と言ったが、「怖くて誰も(意見が)言えない」(朝日新聞1.27)事実上トップの日枝がいないのは、なぜか、と問われたのである。
 法的には、ただの「相談役」に過ぎない人物を恐れるのは、一種の権威主義的支配力を日枝が持ち続けていることの表れだが、実際、多くの日本の会社では、事実上の支配権を維持するために、「相談役」という肩書で役員に残るという手法が使われる。フジテレビでも、その手法が使われたということである。そこには、会社の内部は、法も民主主義も人権も建前に過ぎない治外法権の世界がある。
 そこにあるのは、会社利益がすべてに優先するという論理である。フジテレビは1982年以降年間視聴率3冠を獲得し、営業収入を大きく伸ばしたが、その最大の功労者は日枝なのである。その日枝に取り入って、今の座を得た役員たちが「「怖くて(意見が)言えない」のは、その「威光」に逆らえないからである。
 
 フジテレビは、檀上の役員たちが中居のスキャンダルを認識した後も、中居の出演する番組を放送し続けた。そのことを上記の亀井正貴は「視聴率を優先したと思われる」と言ったが、中居の出演させることで視聴率を稼ぐことが、会社利益に結びつくからである。

 そもそもフジテレビが、2度の会見に追い込まれたのも、1度目の「失敗した」会見後、スポンサー企業が続々とCM差し替えを要望したからである。スポンサー企業が新年度4月以降、スポンサーを降りたら、会社利益は激減する。そのことから、フジテレビは慌てて対策を講じ、第三者委員会の調査と「オープンな」会見を実施することを決めたのである。スポンサー企業の動きがなかったら、このような対策はしなかっただろう。決して、今までのコンプライアンス違反を反省したから、このような対策を講じたわけではないのである。

 フジサンケイグループは、産経新聞で分かるとおり、その論調は、右派であり、自民党に近い。それも、政権党に近い方が会社利益に貢献すると考えているのかもしれない。しかし、もともと商業メディアであれ、何であれ、会社組織は、利益優先の資本の論理で動くのである。今回のフジテレビの騒動は、そのことを如実に明らかにしたのである。

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トランプ2.0は、どうなるか分からないが、「黄金時代」が来ないことだけは、確か

2025-01-25 11:39:43 | 社会

「黄金時代」を約束し、聴衆にペンを投げる(ロイター)

 「偉大なアメリカを再び」と何度も繰り返していたトランプは、大統領就任演説では、「黄金時代が今から始まる」と言った。しかし、その言葉とは裏腹に、「何をしですか分からない」「予想困難な」トランプが、アメリカに「黄金時代」をもたらすことができないことだけは、確かだ。

トランプの政策は、アメリカの「悪あがき」に過ぎない
 トランプの言う「黄金時代」が何を意味するのかは、必ずしも明白ではないが、トランプは次のことをやろうとしている。それは主に、移民の排斥、人種的、性的マイノリティを認めないなどの多様性・公平性の否定、パリ協定の離脱など環境・エネルギー政策の逆行、そして外交では、WHO脱退といった国連軽視、国際協調の拒否、そして高関税を武器に、敵視する中国に止まらず、今までの友好国に対しても脅しをかけ、貿易などの「アメリカファースト」の条件を強要するというものである。しかし、これらの政策を実施したところで、アメリカ国民の半分に相当するトランプ支持者の生活が向上するわけでもなく、アメリカ社会が悪くなることはあっても、良くなることは、決してならない。
 
 アメリカ国内には、既に人口の13.6%、4000万人の移民が居住し、毎年100万人も流入している(財務省広報誌「ファイナンス」 )。不法といっても、現にアメリカに居住し、雇用されている「不法移民」は、数百万人に上る。その人びとに強権で臨めば、反発されるだけであり、それを取り締まる軍・警察の人員・経費は莫大になる。また、その人びとが生計を保つための合法的手段を失えば、犯罪以外に生計は不可能となり、治安悪化は目に見えている。
 
 トランプは「性別は男と女だけ」と言い、 「多様性・公平性・包括性DEI:Diversity, Equity & Inclusion 」の推進を停止する意向も表明したが、現に性的であれ、人種的であれさまざまな人々が共存する社会で、それを否定しても、さらなる分断の亀裂を深めるだけであり、異なるカテゴリーに属する人々の間の対立を加速させ、分断から敵対関係へと進まざるを得ない。それは、人がどのカテゴリーに属していようと、例え多数派に属していたとしても、生きづらさはますます増大するだけである。

 トランプは、就任演説で相手国や関税率などに関する具体的な言及はなかった ものの、「自国民を富ませるために他国に課税する」 と述べた。トランプは、高関税を武器に相手国を脅し、アメリカに輸出したければ、アメリカ製品をもっと輸入しろとディール(取引)を行おうとしている。
 トランプは、課した関税を通じてアメリカは「中国から数千億ドルを受け取った」と述べたが、 そもそも関税は、相手国が負担するものではなく、ほとんどがアメリカ企業である輸入業者が負担するものである。正確には、「数千憶ドル」は、中国でなく、アメリカ企業が支払ったのである。
 トランプの1期目の2016年から2020年でも、関税を上げ、全輸入品に対する米国の関税率はを加重平均で1.4%から3.0%へと上昇させた。しかし、それでも貿易収支の年ごとの赤字の上昇は解消されていない。
 CEIEグローバル市場経済統計データによれば、個人消費のGDPに占める割合は、アメリカ67~68%、EU53%、日本55%、中国39%と、アメリカが著しく高い。アメリカは世界的には異常な消費大国であり、それが経済成長とアメリカの「豊かさ」を実現させてきたのである。それは、第二次世界大戦以降、アメリカが自由貿易体制を推進し、旺盛な輸入政策を採り、アメリカ資本の対外直接投資と生産拠点の海外シフトを進めてきたことによる。
 この政策は、資本活動に対する規制を最小限にする自由経済体制を基本としている。それは、弱肉強食であり、経済の不平等を加速させ、弱い産業は当然衰退する。その対外的には相対的に弱い産業がラストベルトに代表される工業生産なのである。
 アメリカは、軍事産業とIT関連産業を除いた工業生産力は、資本力、技術力で日本も含めた一定の経済力のある国に、特に、中国に太刀打ちできない。
 中国を含めて、貿易相手国は多少の譲歩はするだろう。アメリカからの輸入を少しは増やすかもしれない。しかし、それは大きく遅れた技術力を取り戻すことにはならず、相手国は輸入を拡大しようにも、価格と品質で魅力のあるアメリカ製工業製品は少ないのである。
 アメリカで売りたければ、アメリカ国内で作れと言われても、外国企業はアメリカの高賃金に見合う製品は、IT関連と軍事物資しかない。土台、無理な要求なのである。
 高関税によって輸入品価格が上昇すれば、消費者であるアメリカ国民は、物価高に悩むだけである。

 国際協調を拒否する姿勢は、今までの友好国も敵に回す。尻尾を振ってくるのは、イタリアやハンガリー、アルゼンチンなどの極右政治家だけである。大統領就任式で、閣僚任命候補のイーロン・マスクは、手のひらを下向きにするしぐさをすると、すぐさまマスメディアは、「ナチス式敬礼」と報道したが、これも、世界的にトランプが差別主義者、民主主義の否定者と見做され、そのファッショ的傾向を警戒していることの表れである。そこには、友好国からも軽蔑されるアメリカがある。
 
 熱烈なトランプ支持者は、嫌悪する性的マイノリティや貧しい移民をやっつけてやった、と喜ぶのかもしれない。しかし、生活の向上などは期待すべくもなく、衰退しつつあるアメリカそのものであり、「黄金時代」などとはほど遠い時代がやってくるだけなのである。
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