「たっだいまーーーっ!!」
”キム・チョルをからかってやろう”、ファン・ミエの頭の中はそのことでいっぱいだ。
「ちょっとあんた!さっき文房具屋で見たぞ!あんたが私を、愛してるってー!!」
想像するだけでもワクワクが止まらない。
ミエは待ちきれずに、まだ塾の始業まで大分あるというのに家を出た。
「めっちゃ面白そう!塾行ってきまーす!!」
後ろで母の「ミエ!あんた外出禁止・・」という声が聞こえたような気がするが、
それどころではない!
そして道に出るやいなや、キム・チョルと出くわした。
「あっ!ここで会ったが100年目!」
「ちょっと!さっき・・」
ミエがそう言おうとすると、チョルは急にハンドルを切って、
ミエの前にキッと自転車を止めた。
「名札あったか?」
「え?」
突然真正面からそう聞かれ、ミエは普通にその問いに答える。
「ううん、まだ・・」
はっ
しかしすぐに本来の目的を思い出した。
「じゃなくて、あんたさっきさ、」
チョルは一瞬ギクッとしたが、
すぐに気になっていたことを話し出した。
「つーか・・さっきこの辺でバカ笑いしてたのはお前か?」
「え?そうだけど?」
「はぁ?!お前一体なんなんだよ!」「へっ!?何が?!」
「何がってお前・・!」
首を傾げて目を丸くするミエに、チョルは何も言えなかった。
ミエを前にすると、いつもこんな感じになる。
「お前、一日中心ここにあらずでぼーっとしてたよな。
特に何かあったわけでもねぇのに、一体なんなんだ?」
ミエはチョルの言っていることがよく分からなかったが、とにかく今はチョルをからかうことで頭がいっぱいだ。
「いやそれよりさ!さっきあんたが・・」「さっきの毛虫の話じゃなくて!」
「え、それはさぁ!」
「そんなことしてなきゃ、ぶつかることもなかっただろ?」
「さっきもそうだよ。なんで他のことばっか考えんだ?
「いや・・・」
ミエはよく分からないけれど、チョルの顔が見れなかった。
「痛くねーのか?倒れながら頭ぶつけでもしたんじゃねーの?」
「もし後からでも痛くなったら、絶対お前の親に言えよ。
「分かったな?」
そう言ってミエを見つめるチョルの目を、ようやく見ることが出来た。
肩越しにだけれど。
「あ・・」
「つーかさ、」
「お前何か忘れてない?」
「えっ?」
その突然のチョルの一言に、ミエは頭を悩ませる。
「何?何を?私何か忘れてる?」「・・・もういい」
「しゃんとしろよ」
最後にチョルはそう言って、そのまま自転車で走り去って行った。
ビュンッ
ポカンと口を開けて固まるミエ。
はっ
「ちょ・・!ねぇ!話聞いてよ!ねぇーっ!待ってよーっ!」
我に返ってそう叫んだものの、もうすでにチョルの姿は見えなくなっていたのだった・・・。
第六十八話③でした。
えーーっと。。。チョルの言う「何か忘れてる」ってのは、チョルとミエが一緒に遊ぶ約束のこと・・で合ってますかね?!
チョル、読者も忘れてたよ! いつか実現するのかな?!
第六十八話④に続きます