じじい日記

日々の雑感と戯言を綴っております

ポカラの街で その2

2014-01-29 13:20:07 | ネパール旅日記 2013

 11月30日 土曜日 快晴

 ドルジはどこに泊まっているのかと思ったら真向かいの小さな宿だった。
5時になっても現れないので外でウロウロしているとあまりきれいではない建物のドアからひょっこりと顔を出した。
この宿はガイド専用でトレッキングルートの宿と同じようにガイドは無料らしかった。

 予約してあったタクシーで「サランコットの丘」と呼ばれる展望台へ向かった。
今更展望台からヒマラヤの山を眺めても絶対に感激しない自信があったが,しかし,マチャプチャレが間近に見えると言うので行ってみた。

 小一時間程市街地から山へ登ると大小のバスやらタクシーが入り乱れて止まっている駐車場に着いた。
そこから少し歩くとサランコットの展望台が有り大勢の観光客が御来光を待っていた。
数日前のプーンヒルの展望台も観光客が多くて嫌だったが,それでもあそこは最低二日は歩いて来なければ成ら無いのでトレッカーとして許せる部分があった。
しかし完全に観光地のサランコットの人の多さには辟易し楽しむ気分にはなれなかった。
土産物屋と茶店が並び,塩梅の良さそうな展望台は土産物屋が100ルピー取っていた。

 標高1600mのサランコットから見るマチャプチャレは確かに近かったが,間にある空気が淀み抜けていなかった。
だから朝焼けもきれいな紅にならず紫にくすんでいて写真も撮る気にならなかった。
自分の後で話しをしていた老人二人連れはかつてヒマラヤの何処かに登った経験者なのか,懐かしそうに山の名前を挙げていた。
歩けなくなっても山を見たい人はここへ来るしかないか,と思う反面,自分はここからの眺めなら見なくても良いと思った。

 ドルジが茶を飲んでいこうと誘ったが,さっさとホテルに戻って朝飯を食おうと促して駐車場に戻った。
沢山の車と人でごった返すこの場所でタクシーの運転手はどうやって我々を見つけたのか、こちらが探すまでもなく現れ、車を持って来るから待っていろと言った。

 ホテルに戻り朝食を食べると、次なるポカラの名所の湖を見に行こうとドルジが言った。
どうせ何の宛も無いし今更金を払ってショートトリップなど行く気もなかったので歩いていける湖畔公園に異存は無かった。

 ネパールには日本には無い素晴らしい山岳景観が有るが、湖や沼や川の美しさでは日本の方が数枚上手だった。
ポカラの街は湖に沿って開けており,ヒマラヤの眺めとともに湖畔の公園や景観も売りにしているのだが残念ながらこの程度の景色では日本人は大して驚かないと思う。
一通り歩いて時間をつぶし少し早い昼飯を食べに日本食屋に向かった。

 数代前にはアフリカ系の血が確実に混じっていると思う彼が「また来てくれましたか,ありがとうございます」と言って茶とメニューを持って来た。
畳み敷きの小上がりで茶をすすりメニューとにらめっこをし、ドルジにチャンポン麺、自分は天丼と迷ったが結局はカツ丼を頼んだ。
ビールを飲みながらのんびりしていると昨日と違って日本人の旅行者が結構入って来た。
三人連れ,単独で二名,そして,あの読書好きの白人女性もまた居た。

 7000m峰で俺に登れそうな山は無いかとドルジに訊ね盛り上がっているとテーブルで焼き肉定食を食べていた白人がこちらを向いて話しかけて来た。
これからトレッキングに出たいのだが雪も多くなる時期に何処へ行ったら良いだろうかとの問いだった。
ドルジが,一週間以内ならプーンヒルからタトパニ,で,二週間あるならアンナプルナベースキャンプだ,と言った。
カナダ人らしかったが,この手の質問をするのに地図を持っていないと言う時点で自分は相手にしたく無かった。

 昼飯を食べた後土産物屋を冷やかしつつホテルに戻った。
カトマンズへ戻るツーリストバスの切符を買って来ると言ってドルジはまた街の通りへ向かって行った。
明後日のバスの切符をもう買うのか,と思ったが何も言わずに見送った。

 ホテルの隣にマッサージ屋があった。
フロントに料金表があったので見ると,いくら観光客価格もここまで馬鹿にしてくれるか?と驚く料金だった。
単なるマッサージでは無くて何か特別なリクエストに応えてくれる料金なのかと一瞬思い尋ねるとそんな事でも無かった。
90分のオイルマッサージが4000円から5000円もするのだ。
ネパールの物価水準から行けば200円か300円が相場だろうと自分は思うが。

 ホテルの向いのティーショップに入りビールを飲みながら店のオヤジと世間話しをした。
先ほどのマッサージの法外な値段の話しをすると,一月に10人も客は居ないだろうがそれでもあの価格だからやって行けるのだとか。
そして、ポカラにはツーリストは行かないマッサージ屋が街中に有るのだと言う。
歩いては行けないからタクシーに乗り,バスターミナルのマッサージへ行ってくれと言えば良いと教えてくれた。
料金をと問うと,相手によって少し違うが大体500ルピーだと言う。
そうか,圧倒的に暇だし,ここは一つ後学のために行かなくてはなるまいか、と腰を上げた。

 ポカラのマッサージは様々有るのかも知れなかったが,自分が体験したそれは別に書く事にしてここでは控えさせて頂きたい。

 マッサージから戻り気怠い夕暮れ時を部屋のベランダで過ごした。
高い事は覚悟してホテルのルームサービスでビールとピーナッツをもらいマチャプチャレとアンナプルナが夕日に染まるのを眺めた。
日本に帰りたくも有り,このまま旅を続けたくも有り、と少し遣る瀬無い思いで眺めるヒマラヤの雪山は心に滲みた。

 この日の夜,晩飯を食べに入ったレストランで日本語のやけに上手いネパール人に遇った。
話す切っ掛けは店の表に停めてあったインド製バイクのエンフィールドを眺めていた事だった。
バーチカルツインのクラシカルなスタイルのエンフィールドはどこから眺めても美しかった。
惚れ惚れする姿態引き込まれるようにしてレストランに入り、表のバイクの傍の席に座った。
それを見ていた彼が「日本人ですか?」と、全く澱みのない日本語で話しかけて来た。
しかも彼の顔はあまりにも日本人的であったから自分はてっきり日本人だと思って話しをしていた。
しかし、何度かの言葉のやりとりの後に少し違和感を感じたので「君,ネパール人?」と言うと「日本人だと思ったの?」と返された。
訊けば,ミュージシャンとして仙台に10年近くも居たのだそうだ。
話しがややこしくなるのを避け自分が仙台から来た事は黙って彼の思い出話しを聞いた。
奇遇って有るもんだな、と感心しつつ,エンフィールドをチョイ乗りさせて貰い感謝してホテルに戻った。

 何だか,やっと自分の旅らしい充実した一日だったと気持ち良くベットに潜り込んだ。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ポカラの街で その1 | トップ | ポカラ 旅情異聞 其の壱 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ネパール旅日記 2013」カテゴリの最新記事