昔ぁ~し、あったどな。
爺様と婆様と、山の古い家に二人で住んでいたったと。
山の家の事だもんで、屋敷内に馬だの猫だの犬だの、そんなのも一緒に寝てるんだっけ。
ある日の事、雨が降り続く晩げの事であったど。
爺様や、漏りが酷くて困ったもんですなぁ~ これは怖くて怖くて、狼なんかより余程怖いもんでやすなぁ~、と、言ったっけ。
ンだな、漏りが酷くなってぼたぼたと来たらば囲炉裏の火でさえ消えてしまうもんだでなぁ~そりゃぁ怖いもんだ、と、爺様は答えた、と。
そん時、納屋の中には狼が隠れていだったんだね・・・爺様と婆様を喰おうと思って忍び込んだんだね。
そんでも、狼は聞き慣れない名前を耳にして、もりってなんだべや?
狼よりもおっかねぇって、そんなものはここの山では出合った事も無いもんだが・・・もりが居るんだが、ここに? と、今まさに爺様か婆様かどっちか喰おうとしていたのに、躊躇っちまったんだと。
あぁ~婆様、あそこ、梁のところ、漏りが酷いんで、雨がやんだら一仕事してやっつけておくかね? と、天上を眺めて爺様が語ったと。
なぁ~にぃ~爺様は狼よりもおっかねぇもりをやっつけるってか?
いやぁ~、これは、迂闊に爺様に飛びかかったら危なかったな。
んじゃぁ婆様こと喰ってやんべかなぁ、と、思ったんだげっとも、もりが気になるなぁ~もりは天上にいるんだかや? と、狼はまた躊躇したと。
そん時、納屋の天井には馬泥棒が隠れていたったんだね。
爺様んちの馬は評判の馬だで、盗んで売り飛ばしてくれようって、潜んでいたんだね。
昔の家の事だし、古屋なもんで明かりもろくに無くて囲炉裏端はなんぼか明るいんだが、辺りは殆ど真っ暗さ。
泥棒はさっさと馬の見当をつけて飛び乗って逃げるべとしていた時に、下の方でごそごそと動くものがあったんだね。
それは狼だったんだげっとも、泥棒は暗くて見えないもんで、馬の背だと思って飛び乗ったんだと。
びっくりしたのは狼だね・・・うわぁ~もりが天上から落ちて来たぁ~と、驚いて納屋から飛び出したと。
狼は背中に取り付いたもりを振り払わなくちゃと焦って、ざんざんと暴れて山中を走り回ったんだげんとも、泥棒も落ちたら狼に喰われちまうと思って、こっちも必死でしがみついて放さねぇし。
狼は狂ったように走り回利、泥棒も振り払われてはならじと必死で、どうにもなんなかったと。
そん時、狼がでかい穴を見つけてどーんと飛んだと。
それは大きな落とし穴で、さすがの泥棒も力尽きて深い落とし穴に落ち込んだと。
狼は山に戻ると狸だの狐だの猿だの兎だの集めて、古屋のもりがどんだけ恐ろしいものか、とくとくと話したと。
すると、山の皆は、いっぺん古屋のもりと言うものば見て見たいもんだ、皆して行けば怖くもねぇべ、と言い出して、狼の案内で見に行く事になった。
落とし穴はとても深くて誰が覗いても何も見えねぇで、もりはよぉ~おっ死んじまったんじゃねぇかぁ? と、言い合ったと。
そん時、お調子ものの狸が、俺の金玉袋は伸び縮みすっから下さ垂らしてみっぺぇ~よ。
そんでもりがしがみついたら引っ張り上げちまうべぇよ、と言って金弾袋を垂らしたと。
泥棒は真っ暗な穴ん中でどーしたら出られっかなぁ、と、思案していた所になんかが降りて来たもんで、これ幸いと掴んで引っ張ったと。
すると、狸ぴっくりして、もりが食いついたぁ~皆して引っ張ってくれろぉ~と叫んだもんで、皆して引っ張ってみたと。
すると、狸の金弾袋はびろーんと伸びて引っ張られちまってずんずん伸びたと。
そん時、狸と仲良しだった猿が、狸どん、今助けてやっからな、と、穴の中に長い尻尾ば垂らしたと。
そん時、泥棒は掴みどころの無い狸の金弾に往生していたもんで縄のような猿の尻尾を見て飛びついたと。
狸は突然金弾袋を放されてどでんしてひっくり返り、猿は尻尾を引っ掴まれて大慌てで、皆して引っ張ってくれろぉ~と、叫んだと。
すると、泥棒がびょ~んと飛び出したと思ったら、猿の尻尾はぶっつりと千切れたんだと。
そして、息んだ猿の顔は真っ赤になっちまって、長くて自慢の尻尾は千切れて短くなっちまったと。
そんで、猿は自慢の尻尾が無くなっておしょすくて、ケツば赤くしてしまったんだと。
ああ、お調子者の狸は、あれ以来、金玉袋が百畳敷きに伸びっちまって難儀してるんだとさ。
とんぴんからりん ど~んとはぁ~れ。
いや、落ちがおもしろく無い・・・異聞になってないなぁ。
爺様と婆様と、山の古い家に二人で住んでいたったと。
山の家の事だもんで、屋敷内に馬だの猫だの犬だの、そんなのも一緒に寝てるんだっけ。
ある日の事、雨が降り続く晩げの事であったど。
爺様や、漏りが酷くて困ったもんですなぁ~ これは怖くて怖くて、狼なんかより余程怖いもんでやすなぁ~、と、言ったっけ。
ンだな、漏りが酷くなってぼたぼたと来たらば囲炉裏の火でさえ消えてしまうもんだでなぁ~そりゃぁ怖いもんだ、と、爺様は答えた、と。
そん時、納屋の中には狼が隠れていだったんだね・・・爺様と婆様を喰おうと思って忍び込んだんだね。
そんでも、狼は聞き慣れない名前を耳にして、もりってなんだべや?
狼よりもおっかねぇって、そんなものはここの山では出合った事も無いもんだが・・・もりが居るんだが、ここに? と、今まさに爺様か婆様かどっちか喰おうとしていたのに、躊躇っちまったんだと。
あぁ~婆様、あそこ、梁のところ、漏りが酷いんで、雨がやんだら一仕事してやっつけておくかね? と、天上を眺めて爺様が語ったと。
なぁ~にぃ~爺様は狼よりもおっかねぇもりをやっつけるってか?
いやぁ~、これは、迂闊に爺様に飛びかかったら危なかったな。
んじゃぁ婆様こと喰ってやんべかなぁ、と、思ったんだげっとも、もりが気になるなぁ~もりは天上にいるんだかや? と、狼はまた躊躇したと。
そん時、納屋の天井には馬泥棒が隠れていたったんだね。
爺様んちの馬は評判の馬だで、盗んで売り飛ばしてくれようって、潜んでいたんだね。
昔の家の事だし、古屋なもんで明かりもろくに無くて囲炉裏端はなんぼか明るいんだが、辺りは殆ど真っ暗さ。
泥棒はさっさと馬の見当をつけて飛び乗って逃げるべとしていた時に、下の方でごそごそと動くものがあったんだね。
それは狼だったんだげっとも、泥棒は暗くて見えないもんで、馬の背だと思って飛び乗ったんだと。
びっくりしたのは狼だね・・・うわぁ~もりが天上から落ちて来たぁ~と、驚いて納屋から飛び出したと。
狼は背中に取り付いたもりを振り払わなくちゃと焦って、ざんざんと暴れて山中を走り回ったんだげんとも、泥棒も落ちたら狼に喰われちまうと思って、こっちも必死でしがみついて放さねぇし。
狼は狂ったように走り回利、泥棒も振り払われてはならじと必死で、どうにもなんなかったと。
そん時、狼がでかい穴を見つけてどーんと飛んだと。
それは大きな落とし穴で、さすがの泥棒も力尽きて深い落とし穴に落ち込んだと。
狼は山に戻ると狸だの狐だの猿だの兎だの集めて、古屋のもりがどんだけ恐ろしいものか、とくとくと話したと。
すると、山の皆は、いっぺん古屋のもりと言うものば見て見たいもんだ、皆して行けば怖くもねぇべ、と言い出して、狼の案内で見に行く事になった。
落とし穴はとても深くて誰が覗いても何も見えねぇで、もりはよぉ~おっ死んじまったんじゃねぇかぁ? と、言い合ったと。
そん時、お調子ものの狸が、俺の金玉袋は伸び縮みすっから下さ垂らしてみっぺぇ~よ。
そんでもりがしがみついたら引っ張り上げちまうべぇよ、と言って金弾袋を垂らしたと。
泥棒は真っ暗な穴ん中でどーしたら出られっかなぁ、と、思案していた所になんかが降りて来たもんで、これ幸いと掴んで引っ張ったと。
すると、狸ぴっくりして、もりが食いついたぁ~皆して引っ張ってくれろぉ~と叫んだもんで、皆して引っ張ってみたと。
すると、狸の金弾袋はびろーんと伸びて引っ張られちまってずんずん伸びたと。
そん時、狸と仲良しだった猿が、狸どん、今助けてやっからな、と、穴の中に長い尻尾ば垂らしたと。
そん時、泥棒は掴みどころの無い狸の金弾に往生していたもんで縄のような猿の尻尾を見て飛びついたと。
狸は突然金弾袋を放されてどでんしてひっくり返り、猿は尻尾を引っ掴まれて大慌てで、皆して引っ張ってくれろぉ~と、叫んだと。
すると、泥棒がびょ~んと飛び出したと思ったら、猿の尻尾はぶっつりと千切れたんだと。
そして、息んだ猿の顔は真っ赤になっちまって、長くて自慢の尻尾は千切れて短くなっちまったと。
そんで、猿は自慢の尻尾が無くなっておしょすくて、ケツば赤くしてしまったんだと。
ああ、お調子者の狸は、あれ以来、金玉袋が百畳敷きに伸びっちまって難儀してるんだとさ。
とんぴんからりん ど~んとはぁ~れ。
いや、落ちがおもしろく無い・・・異聞になってないなぁ。