ポカラの街は小さい。
元々左程人口の多く無い国だからネパール第二の都市と言っても規模は知れており20万人に満たない。
しかし,だからと言って観光客が歩く湖畔の界隈だけがポカラではない。
言わば観光客は湖畔の一角に集められ体よく管理されていると言っても良かった。
だから地元民が生活する街は別に有り、そこには観光客が見る事の無い純粋なポカラの人の暮らしが有るのだった。
今度の旅は自分の中では神聖な位置づけだったからこの手の情報は遠ざけて来たのだが,どう言う訳か向うから飛び込んで来るのだからどうしようも無い。
茶店のオヤジが教えてくれたバスターミナルをタクシー運転手に告げると何やらにやけた笑みを浮かべた。
ああ,ひょっとしてこれは、あの手の感覚へ向かう事になるのか、と思ったが,見ない事には事実は分らないし,旅とはそう言うものなのだから,と心を決めた。
ここから先の話しは一部の人にとっては不愉快な話しになる可能性もあるので注意して頂きたい事を断わっておきます。
バスターミナルの位置は,簡単に説明すると,どこからかの幹線道路を辿ってポカラに来て観光客の定位置の湖畔のホテル街を目指す時に通る,だだっ広い広場のようなところにポンコツバスが数台所在無さげに停まっているあそこである。
ポカラへ行った事が有る人がすぐに思い浮かべるツーリストバスのターミナルでは無い。
バスターミナルの広場を背に奥へ進むと路地が二本見えるが,それの左手の方が目指す通りになっている。
通りの奥行きは左程ではなく,急ぎ足で歩いてしまったら2~3分で突き抜けてしまう。
見た目は、あまりきれいではない飲食店が並んでいるように見えるかも知れない。
しかし,その手の事に詳しい人であれば店の雰囲気と,それらの店の前に決まって佇んでいる少し濃いめの化粧の女性に目が行くはずだ。
タクシーの料金交渉は往復500ルピーで、彼はマッサージが終わるまで待つことになっていた。
そんな彼はこちらの様子が気になるのかタクシーから降り路地に向かってやって来た。
そして,路地の入り口で躊躇っている自分に「とにかくじろじろ見ないでさり気なく,そしてゆっくり歩いて品定めをし,奥まで行って戻って来るのがコツだ」と言った。
さらに「店の中に引っ込んでしまう時には拒否していると思え」と教えてくれた。
「よし分った、相場は幾らだ」と聞くと「俺が交渉してやるから1000ルピー寄越せ」と言い出した。
お前にピンハネされるんなら騙される方を選ぶ、と言って路地へ進んだ。
通りの向うまで両側に並ぶ店を、右目と左目が別々に動けば良いのにと思いながらもしっかりと見定めつつ歩いて行ったが,ネパール人の尺度にはギャップを感じ困ってしまった。
そうか,茶店スタイルを取っている訳だからお茶を飲みに入ったりビールを飲んでも良いのではないかと思い立ち,見るからに汚い中華料理屋風の店に入った。
その店の表に女性は居なくてどこから見ても茶店に見えたので入ったのだが,中には,派手なレザーの上着を羽織った若い女性が居た。
英語で話しかけたがまるで分らないらしく椅子を指差し,ゼスチャーでそこに座って待っていろと言った感じで飛び出して行った。
1分もせずに彼女は若い男を伴って戻って来た。
彼は英語が話せるのかと思い「ここは茶が飲めるのか?ビールは?」と訊ねたが、答えは「一時間500ルピー」と、それしか言わなかった。
そうか、そう言う事か,図らずもこの娘に決まってしまったのか,と意気は下がったが,マッサージは上手いかも知れないと思い直し「彼女はマッサージは上手いのか?」と問うと「1時間500ルピーだ」と言って手を出すばかりだった。
仕方が無い,これも後学のためだと意を決して,不本意ではあったが500ルピーを彼に渡した。
彼は500ルピーを受け取ると新聞紙を千切りそれにコンドームを包んで彼女に渡した。
ああ,そう言う気遣いは要らないんだがと思ったが言葉が通じないのだから黙って見ていた。
さらに部屋の鍵らしい物を受け取ると奥へと案内された。
そこは店の裏口から別の建物の入り口につながり、彼女は階段を昇って行った。
三階まで上がると鉄格子の扉を開け中へ入るように促され,彼女も中に入るとまた南京錠を締めた。
ああ,この状況は何か有っても逃げられないから拙いかも知れないと思ったが既に後の祭りだった。
仕方が無い,有り金全部でも2万円も持っていないから大した事にはならないと腹を括った。
八畳程の広さの部屋にはキングサイズのベットが一つ置かれているだけだった。
良く見れば部屋の隅に段ボールの箱が一つあり,そこに恐らく彼女の私物であろうと思われる物と、僅かな衣類が収まっていた。
彼女は自らの上着を脱ぎながら手振り身振りで服を脱いでベットに横になれと言って来た。
言われるままにパンツ一丁になりうつ伏せに寝転んだ。
見た目にはあまり清潔そうとは思えなかったシーツは意外にも異臭は無く,古くてくすんでいるがしっかり洗濯されている事が伺えた。
彼女はベットの下からニベアのボトルを取り出しマッサージのような事をし始めた。
陽当たりが良く無いのであまり暖かくは無い部屋で殆ど裸になった上に冷たいニベアの乳液を垂らされるのは決して心地良くは無かった。
彼女のマッサージは,首から肩,そして背中を,揉むとか押すと言うよりは乳液を塗りたくって撫で回すような感じだった。
とてもマッサージとは言い難いそれが終わると,うつ伏せから仰向けになるようにと身振りで指示した。
とりあえず 続く
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