ビデオ編集やDVDにするということが本当に簡単な作業になったということがひとつ。それにもかかわらず、最終的な商品にすることの大変さは作業の簡便さとは別に昔も今も何も変わらないということでした。
私がテレビ局でばりばりやっていた頃はカメラが一台700万円、編集機となると一部屋数千万もする代物でした。当然、機械を触るだけで専門のカメラマンや編集オペレーターが必要でした。それが今では10万円未満のビデオカメラと同じく10万円余りのパソコン編集機があれば同じようなことができてしまいます。今はパソコンのボタンを1回押すと自然とできてしまうディゾルブ、オーバーラップという映像処理は別府にいたフィルム時代には1箇所に4万円の費用がかかっていました。
さてその簡単でコストが「超」安くなった今、確かに作業は考えながらほとんど自分でできますのでこんなに便利なことはありません。しかし、30分番組を制作すると仕上げには必ずこの30分をじっとどの瞬間をも見逃さずに見つめていなければいけません。ちょっとよそ見をするとアウトです。
例えばカットとカットの間に30分の1秒の1枚の静止画が残っていても商品としてはNGなのです。またこの作業の合間にワンカットワンカットの長さに無駄が無いか、文字に誤りは無いか、音楽の終わり方がおかしくないか、音声のバランスは大丈夫か・・・、と30分の全ての瞬間に耳をそばだて、目を見張らなければいけません。
住民ディレクターは番組はオマケですからこんな細かいことはしません。少々文字のバランスが悪かろうが音楽が無くてもこの映像を使って本来伝えたいことをいかに伝えるか、に頭を使うのです。しかし、作品や商品となると同じような作業でも全く違ってきます。テレビ局の人や制作会社の人が口うるさいのはここのところです。
しかし、ここが難しいところです。
この作業は最初に言ったように昔のテレビ局と同じく、素人がすぐにできるものではありません。しかもこんなことに気遣っていたら肝心の伝えたいこと以外の作業にばかり神経が集中してしまってまず伝えたいことは吹っ飛んでしまいます。
こういうところはきちっとプロがサポートしてくれる仕組みが住民ディレクターのコンテンツを商品化するときには必要です。時間をかければ十分育てられます。が、即効を求めるところでは性格のいいプロの方と信頼関係を築き、伝えるべき中身を潰さずにカタチにしていけるような工夫が必要です。
ここはプロの方にとっても大事なところです。
地域密着の掛け声が高まり、デジタル化が進めば進むほどプロの出番は減るはずです。どんどん素人でできる環境がすすんでいくからです。しかし商品化をするとなるとどのプロセスでもいいプロが求められます。はっきりいってまちづくりや地域のことを自らが経験してないとここの協働作業は無理でしょう。最近つくづく感じます。番組や映像はもともと伝えたいことがあって作ってきたもののはずが作る作業にあまりにも力が入りすぎます。テレビ局にいるとき次々と賞をとるディレクターがいました。極端な場合、こんなテーマでこういう素材とこんな人を用意すれば○○賞は獲れる、というものでした。
呆れ果ててよくケンカしました。彼の理屈はこうです。「賞を獲ると仕事がしやすくなる。」私は本当かなあーとずっと疑問を持っていました。今でもそうですが物をつくるということは直前まで創っては壊し、また創っては壊すことを延々と繰り返します。締め切りのぎりぎりまで壊せるものは壊します。一度創ったから勿体ない、なんてけち臭いことをいってたら物は創れないはずです。
住民ディレクターは作品ではなくてもフィールドに描き、創造することがいっぱいあります。創っては壊しのプロセスが大事なことは言うまでもありません。
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