庚申(こうしん)さんの行事は朝昼晩とそれぞれに準備があり一日がかりでした。田舎には辻々によく猿田彦大神の石碑があります。道案内の神と言われています。今はコンクリの道路になってしまったので昔あったところから移動されたものが多いようです。田んぼをつくってから去っていった神とも言われ「去る田彦」の音(おん)が猿田彦になったともいわれます。
旧暦で61日おきにくる庚申(かのえさる)という日に祭るので2ヶ月に1回は座元を変わり宴を催します。酒1升を飲んでしまうと終わる地区が多いです。掛け軸に神の姿が描かれ座元の床の間に飾ります。61個の米団子とご飯を供えます。酒を飲み干した後全員くじをひき当たると子宝に恵まれると言い伝えられていますが日曜日に伺った屋椎地区の皆さんが真顔で子宝に恵まれたと話しているのが印象的でした。
今回はわたしも席をいただきました。酒宴を共にしながら撮影したのでブレブレですが女性のほうが多い酒席で男女仲睦まじくほのぼのとした雰囲気で心から楽しめました。掛け軸が入っている木箱には文政2年の書類等が入っていて年代を感じさせます。獅子入れ、お大師様、朔(さく)などの伝統行事がかなり古いままに残っている東峰村では日本人の暮らしの原型、生活の知恵、神様との関係、共同体の基本ルール等がよくわかりテレビやネットの情報とは全く違う日々の暮らしの必要情報が詰まっています。
とうほうTVはその情報を村民みんなで分かち合い、共有し村づくりに役立てていこうとするテレビです。生活を共にする視点がないと伝えきれないし、次に繋がっていかないことがよくわかります。座元の和田米見さんはこの日初めて会ったのですが夜には息子さんが車で送ってくれて父子でわがプリズム長屋に寄っていかれました。シンデレラタイムは越えていました、和田さんは再々わたしを「きしもっちゃん」と呼びます。「岸本ちゃん」の訛りです。
「いちゃりばちょーでぃ」、沖縄の言葉で「会えばみなともだち」、私の得意技はどこでもすぐに溶け込んでしまうので会った日から本音に近い状態で話せることです。村の日々の暮らしは建前になく本音に顕われます。猿田彦大神や不動明王の神仏の前で本音で語り合う屋椎のみなさんの賑やかな会話は豊かな暮らしの象徴でした。