よしだルーム

吉田政勝の文学的な日々

ゲッベルスの愛人

2015-07-10 11:33:17 | 日記
1979年に刊行なった草森紳一著「絶対の宣伝」。
装いも新たに『絶対の宣伝ナチス・プロパガンダ』が文遊社から出版されました。草森紳一氏が亡くなった直後から、今こそ出すべきと言う声が多く、大部の著、しかも4巻本とあってなかなか難しかったようです。絶対読むべし!?。


左はヒットラー、中央はゲッベルスの妻、右はゲッベルス。


左はゲッベルスの愛人(女優リダ)
ゲッベルスは彼女と結婚し、宣伝大臣の職を返上し「日本大使になりたい」と願い出た。
もちろん反対したヒットラーは権力と脅しで二人の間を割いた。


絶対を疑う
 
 高校時代、私が学んだ、政治思想史学者の丸山真男氏は、
戦後の民主主義思想を主導した人物ですが、戦前の日本の
政治構造や精神風土を分析し、「日本人には戦争すら認める
状況肯定主義がある」と述べています。

 ナチスドイツのヒットラーも、今では否定される人物ですが、
当時、選挙などでドイツ国民はヒットラーに熱狂しました。
悪の独裁者も選挙では信任を得てきているのです。
 その戦前の日本の政治構造ですが、調べてゆくうちに、これ
また驚く関係性を再認識しました。

 田中智学は宗教家で、国家主義をとりこんだ在家仏教運動を
始め「国柱会」を創始しました。会員に宮沢賢治、石原莞爾。
影響を受けた牧口常三郎(創価学会を創設した人物)などが
いました。
 国柱(こくちゅう)会は、日蓮宗と国家主義をブレンドした
宗教団体として発足。戦前戦中においては日本の満州・中国・
東南アジア地域への侵略を支持したことで有名です。
創始者の田中智学は、日本が世界を征服し、法華宗化すると
いう遠大な目標をもっていました。その一環として田中智学は
「八紘一宇」という造語を創作し、これはのちに軍部のスロー
ガンとして利用されました

 八紘一宇とは、全世界を天皇を頂点とした一つの国家に統一
するという意味。日本の軍部は八紘一宇の第一歩として
「大東亜共栄圏」を標榜し、近隣各国を侵略していきました。
田中智学の唱えた国家主義的思想は今では危険思想として認識
されますが、当時はこのような思想がトレンドでした。

 国柱会の信者として知られていたのが宮沢賢治です。

 彼の墓が国柱会本部にあるそうです。
「世界が幸福でなければ個人の幸せはない…」という賢治の思想は、
「銀河鉄道の夜」や「よだかの星」の作品に反映されています。
エゴを捨てる、というのは、私利・私情を捨て去る「滅私奉公」の
精神です。
 宮沢賢治はいい人物だが、理想を掲げて神に帰依する「疑いの
ない自分」もまた危ういと思います。

 亡くなった作家の向田邦子さんは、妹に「絶対という言葉は
つかわないほうがいい」と述べていました。向田さんのドラマは、
あれも、これも、どっちも本当、がいっぱい出てくるドラマです。
向田さんは軍国主義が一夜に崩れたことを体験した世代でした。

 私は「迷い、悩み、考え」生きてきた。
人間に完璧はないから、絶対を疑う。





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