地域で使える500円の飲食券が町民に配布された。
コロナ感染自粛で外食産業を支援する趣旨と思いつつ、券を使用できる店舗名を見ると「Aパン屋」さんがあった。500円券と150円を持ってAパン屋さんに入った。
「あれと、これと・・」と店員に伝えた。
600円を目標に頼んだが。680円になっていた。(あれ、どこで単価を間違えたのか?)と私はあわてた。
「ひとつパンを戻せますか?」と訊いた。(いつもなら、サイフ持参でAパン屋に来て買い物をしていたのに~)と私はあわてた。すると、横にいる20代半ば過ぎのお兄さんが、
「せっかく頼んだパンなのに、戻さないで。これカンパ!」
そういうと彼は笑顔で100円硬貨を差し出した。
「えっ、いいの。こんな展開になるなんて恥ずかしい」と私。
「いや、いいんです」と彼は笑顔を見せた。
「善意の寄付に感謝します」と私はお礼を言い、その100円硬貨を混ぜて700円を店員に渡し、50円硬貨を彼に戻した。パンをトートバックに入れて、
「ありがとうございます」と私は彼にお辞儀をしていた。
帰宅して、妻にパンを渡しながら
「30円足りなかったので、自分の小銭を加えた」と言った。
「単価を計算して買ったのではないの?」と妻はいぶかった。
「え、まあ・・・」
妻との間に摩擦が生じないように私は真実を隠したのだった。