よしだルーム

吉田政勝の文学的な日々

絶対の宣伝・草森紳一

2015-07-08 13:59:52 | 日記
絶対の宣伝 ナチス・プロパガンダ1 

宣伝的人間の研究 ゲッベルス
草森紳一著 定価2,700円+税判型・造本四六判、412頁。

著者がナチスを論じていることは、
今日も世界のあちこちで繰り返されていることです。 

歴史上類を見ない戦禍をもたらしたナチスが、
人々の圧倒的な支持を集めて政権を掌握し、
独裁政権を樹立したのは、強力な宣伝(プロパガンダ)の技術と実践がありました。
不幸な歴史を繰り返さないために、その大衆洗脳の手口を知らなければなりません。
今もメディアでは日々ナチス手法の「大衆洗脳」が行われているからです。

左草森氏。右吉田。

「暗い日曜日」というDVDを観た。

これは私にとって五つ星の感動作だった。
 その物語は三人の人物を軸に展開される。舞台は1930年代のブタペストで、ユダヤ人のラズロが経営するレストラン。彼には若く美しい恋人イロナがいる。開店間もない店でピアニストを募集する。そこに現れたのが、無名ながらも才能豊かな若い男、アラディ。
 アラディはイロナの誕生日に曲を作ってピアノを弾いた。それが甘美で切ない『暗い日曜日』だった。アラディとイロナは恋に落ちる。複雑な心境なのはラズロ。だがラズロはアラディと敵対するわけでなく「恋人を失うのならせめて半分は所有していたい」とアラディとで、イロナの愛を共有する事を決める。自分と付き合ってる人が、別の相手と恋仲になれば「この浮気者」と憤慨し別れたくなる。恋の本質は相手を独占することだから。『三人とも好きだから三人で付き合おう』などは普通では信じ難い。しかし、ラズロの許容度、アラディの純粋さが三角関係を可能にした。

 この映画は実際にあった事を元に脚本しているからリアルだ。

原作はニック・バルコウの小説。「暗い日曜日」の歌を聴きながら自殺する人が実際につづいたので英国のBBCはこの歌を放送禁止にした。曲のせいよりも時代の気分が影響している気がする。第二次世界大戦当時の不況と戦争の重苦しい雰囲気だ。この時代、ハンガリーにドイツ軍が進攻して激しいユダヤ人狩りがあったという歴史。戦争が始まる直前にレストランにやって来て、店を出た直後に川に飛び込んだドイツ人ハンスをラズロは偶然に助ける。数年後、ハンスはナチス将校としてブダペストに舞い戻って来る。かつて折り目ただしかった青年ハンスが時代と己の立場によって醜くなっていく。アラディはハンスの前で自殺し、ラズロはユダヤ人収容所行の列車に乗せられた。それを助けようとイロナは嫌な男ハンスと寝るが救出は叶わなかった。

「暗い日曜日」はシャンソン歌手ダミアが歌って大ヒットした。

米国ではビリー・ホリデイ、日本では越路吹雪、美輪明宏が持ち歌にしている。
 この曲は、ハンガリーの作曲家シェレッシュが失恋のときに作ったものだった。六九歳の誕生日を迎えたばかりのシェレッシュは、自宅アパートの窓から飛び降り自殺したという。
 ダミアのかすれた声で「暗い日曜日」を聴いていると、この映画のシーンが浮かんでくる。

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