よしだルーム

吉田政勝の文学的な日々

向田邦子の秘めた恋

2015-06-29 11:09:41 | 日記


「向田邦子の恋文」を読んだ。(向田和子著)。

 文壇の原節子といわれ生涯独身だった向田邦子にN氏という恋人がいたことが明かされた。他人の男女の秘めごとなど関心がないが、脚本家としての恋愛体験が作品などにどのように影響しているか私は興味を覚えた。


 向田邦子は、昭和56年8月22日に台湾で航空機が墜落し、その犠牲者となった。まだ51歳だった。
 N氏と向田の出会いは、彼女が大学を卒業しての就職先でだった。そこは教育映画を作る会社で、出入りのスタッフの中にカメラマンのN氏がいた。交際はその時期から秘密裡に続けられたようだ。日頃「父親みたいなうるさい男とは結婚したくない」と向田はもらしていたが、N氏は穏やかな人柄だった。彼は向田より13歳年上で、妻子がいたが家庭を捨てた男だった。
 二人の長いつきあいで、向田が別れたがっていた時期があった。27歳の時、彼女は週末になると新潟にスキーに出かけてN氏に会おうとしなかった。N氏の生活が乱れて酒に溺れかけて、困り果てた彼の母親が向田に相談に来た。彼が体調を悪くしたとも聞いて心配で別れきれなかった。

 昭和38年11月27日消印で、向田からN氏への手紙が残されている。
「28日は夕方までうちで仕事して、ひさしぶりでいっしょにゴハン食べましょう。邦子の誕生日ですもんね。ガス、ストーブはやくお買いになってね。手足を冷やさないように。バイバイ」
 三日後、電気毛布が届く。贈り主は向田だった。N氏が脳卒中で倒れて働けなくなっていたので、向田が生活費などを支援していた。N氏の分まで稼がないといけなくなって彼女は仕事を増やした。疲れてやつれてきた向田を見てN氏は腑甲斐なさから自ら命を断った。数年後、向田には見合いや、結婚を前提にした相手が現われるが成就にいたらなかった。

 さて向田邦子の作品に視点を移すと彼女の実体験と重なる。
「冬の運動会」の家族の秘密は、祖父が愛人を囲っていた。父は亡き友人の妻に思慕し、よくアパートに通っていた。
 「幸福」という連続ドラマでも元校長の倉田という老人と30代半ばの多江という愛人が出てくる。「阿修羅のごとく」でも竹沢家の父は愛人のアパートに通っていて、妻のふじが探しあてるというドラマだった。

 向田邦子の家庭も最悪な状態の時期があった。
父の浮気発覚で「父が家を出る」と思い込み母は不安定な日々を送っていた。向田邦子は母親の苦しみを思い出させることを避け、家族に心配かけさせないために自らの不倫を秘密にした。

 彼女は愛することの悦びや葛藤を体験し、男女の機微を描ききる作品をうみだしていった。建て前の生活に本音の爆弾を破裂させて高揚感が生じる向田ドラマを再び見たくなった。

(資料参考「向田邦子恋のすべて」小林竜雄著/文中敬称略)


先住民族とともに~大川宇八郎

2015-06-26 09:16:04 | 日記

音更町発祥の地の碑


明治15年に依田勉三と鈴木銃太郎が、下帯広の開拓地選定で7月15日に案内したのが、大川宇八郎です。彼は3年前から日高を越えてこの地にやってきた。「半農半商」の開拓者で交易あるアイヌの人々に信頼され、嫁もアイヌ娘であった。



妻のオイカサンは唇にアイヌ女性の既婚者の印である「刺青」をしていた。
 彼女は娘とお祭りで歩くときに「私と離れて歩きなさい」と言った。
娘は「どうして、私は気にしない。大好きなお母さんだもの・・・」と応えた。


 大川牧場で馬を育てたが、アイヌに無償でわけ与えたり、飢えた彼らの食用になった。
晩年の大川宇八郎は、他人の保証人になり、担保の土地が奪われて、貧乏な生活をしたという。依田勉三ほど十勝では有名ではないが、詳しく調べたい偉人です。

戦争の遺跡

2015-06-21 09:36:30 | 日記

トーチカは、軍事的に重要な地点を守るため、コンクリートなどで造った小型の防衛陣地。中には2~3人程度が入って軽機関銃で「銃眼」から敵を迎え撃つ。敵側の砲撃の雨降ればそこが兵隊の棺おけになる。


訪れた豊頃町豊北海岸のトーチカは、海岸から離れて地盤がよいせいか、現在もまっすぐに立っていた。郷土史家の松本尚志さんは「トーチカは気休めにすぎない・・・」と述べていた。日本は、明治以降、近代化を急ぎ、日露、日清、日米と無茶な戦争をつづけてきた。敗戦の過程で、北海道の北半分がロシアに奪われるところだった。(ヤルタ会談で出た話)。


トーチカの周りには、ハマナスの花が咲いていた。

小さな仕事の完成を積み上げる

2015-06-17 23:15:18 | 日記


以前、接客業を1年ほどやったことがある。フロントに立ち、金の売上に関係していた。帰りまぎわに集計するが、その前に途中で計算し、小さな完成を積み上げておく。そうすれば、安心して最後の集計が一気にできる。

どんな仕事も小さな仕事の完成を積み上げる。
私が1冊の本を作る場合も、小さな部分の積み重ねで、最後は編集し、デザイン化してゆく。校正も「誤字がないかと疑りながら」辞書や文献を比べてみる。小さな仕事の堆積が「大きな仕事」なのである。

大きな仕事のあとで苦労を自分でねぎらう。
たとえば、親しい友とごちそうを食べにゆく。じっくり話し込みたいのであれば、会話のできる店を選ぶ。和食や寿司店などが最適だ。仕事のゴールをめざすための馬の口先に「にんじん」である。大きな仕事をなす人物は、けっして小さな仕事を疎(おろそ)かにしない。そして些細なミスも決して見逃さない「繊細な注意力」が必要だ。

握り寿司も、完成までのステップが大事だ。
友人がねぎらってくれながら食べる寿司の味は格別だ。自分は微力な人間だが、誠実に人との絆を築いてきたから、いざとなったら、多くの友人が助けてくれる。ありがたい~

6月14日の空

2015-06-15 21:46:21 | 日記


『それでも夜は明ける』という映画を観た。2013年のイギリス・アメリカの歴史ドラマ映画。第86回アカデミー賞の作品賞をはじめ、様々な映画賞を受賞した。

1841年に誘拐され奴隷として売られた自由黒人ソロモン・ノーサップによる奴隷体験記である。彼は解放されるまで12年間ルイジアナ州の綿花畑で「人権を奪われた」黒人労働者として酷使されていた。



初夏の空をみながら、雲の形が人間の顔に見えてきた。
「労働者派遣法」が改悪される・・・。人権が奪われ、労働格差を増長する。

青い空だが、心には暗雲ただようばかり。安保法制案も・・・。

人間的であるために、人類は「理想の旗」をかかげて進化してきた~
そうじゃなければ、この世は野獣が支配する社会になる。