よしだルーム

吉田政勝の文学的な日々

打算のない心・・・

2016-04-06 08:21:08 | 日記


帰還・作者プラトーノフ~短編小説


夫は久しぶりで帰還した。(戦時中か。留守中にセミョーンという男が親切に子どもたちにプレゼントしている、と夫は小耳にはさんだ。それは下心があるからだと思う夫)

「あの人、立派な心なのかもしれない。だから、ああなんだわ」と妻。

「ばかだな、おまえは。わるいけどな。打算なしには何事もありゃしないよ」

「でも、セミョーンは、しじゅう子どもたちに何かしら持ってきてくれたのよ。でも、当人はあたしたちに何も求めないのよ」

「・・・・・・・」夫は、疑いの目を向ける。

「でも、あの人に言わせると、他人のことを心配していると、気持ちが楽になるし、そうすれば死んだ家族のことを、ひどく悲しまなくていいんだって。会ってみれば、あなたが思っているのと違うわ」

「くだらんたわごとだ。おれをごまかそうとするな」と夫は言った。

「あの人はもう2度と家に来ない。これ以上来ないように、あたし言うから・・・」



↑この小説を読んで感動した私は備忘録に記した。
人の親切には「下心や見返りを期待する偽善が隠されている」
だが、人に親切にするだけで下心のない人も稀にいる。
それこそピュアな愛なのだろうと思う・・・


2016年の春に~
M,Y