アルハンブラ宮殿の背後にそそり立つ山並み、それがシエラ・ネバダ山脈です。
その中腹にある街がカピレイラ。白い家に青い空、吹き抜ける涼風。さらに生ハムと水が最高に美味しいときたら、これはもう最高の避暑地です。
しかし今から500年以上も前の真冬、この地へ暑さでは無く敵から逃れるために落ち延びてきた王がいました。
彼こそがスペイン イスラム王朝最後の王ボアブデルです。
シエラ・ネバダの地まで落ち延びた王は、激しい政権争いや異教徒との戦争から逃れこの地で穏やかな生活を過ごせたのでしょうか?
残念ながら答えはNOです。
落ち延びる途中涙を流した王を、母は、
「女のように泣くがいい、男のように闘わなかったからだ」
と叱ったそうです。
そうです。その時代は闘いが必然の時代だったのです。
結局王はモロッコ王に服従させられた挙句、戦死してしまいました。
白い家に、青い空、そして吹き抜ける風。
けっして当たり前じゃない、長閑な平和を満喫するために、
僕は岩に寝転び、悲しき王の分まで大きな大きな深呼吸をするのでした。
追伸:カピレイラまではカーブの多い山道、往復のバスの中、僕は乗り物酔いで死にそうになり、落人の辛さを少しだけ味わうことが出来ました。