なんだか再会率の高い一ヶ月でした。
「久々に読みたい!」という再読欲求が高かった1ヶ月。
懐かしかったけれど、そして、再読を楽しんだけれど、
やはり初めて読んだときの感性からはどんどん変わって行っているんだ
いつまでも「あの頃」のままではいられないんだということを
肌で実感しました。
66.想い出にならない/堀田あけみ
67.想い出させてあげよう/堀田あけみ
■ストーリ
いつまでも少年ではいられない。いつまでも少女ではいられない。
「高校生」という季節の中で、傷つき、傷つけあい、彼らは自分にとっての
煌きをみつけようとしている。「恋愛」や「友情」に悩みながら、大人への
階段を昇っていく少年と少女を描く。
■感想 想い出にならない ☆☆☆*/想い出させてあげよう ☆☆*
大学時代に好んで読んでいた堀田作品と久々に再会したくなってふらりと
借りた作品。読み返しながら、懐かしさのあまり悶絶していました。
堀田作品は好んで読んでいたわりには苦手、というか、文章は読みやすい
けれど、登場人物たちに共感できないことが多かったのですが、この作品は
登場人物たちも好きだったなー、と懐かしく手に取りました。
内容は由緒正しい青春もの。文化祭実行委員として出会った少年5名と
少女3名がグループで仲良くなって友情を育み、恋愛感情を持ち合い
でも友情との狭間で色々と悩み、傷ついて・・・という青春王道ものです。
漫画化にも映画化にもドラマ化にだって向いていると思う。
それぐらい普遍的なテーマの作品。
自分の高校時代、青春時代も懐かしく思い返しました。
ただね。群像劇の割りには、登場人物に対する作者の好き嫌いが
非常に偏っていて、そこに疑問を感じました。読んでいて、
「あぁ。この子はお気に入りなんだろうな。」とか
「この子の生き方が理想なんだろうな。」とか、「こういう子は苦手
なんだろうな。」とか、そういうのが如実に分かります。
その上、なんとなく忘れ去られているような扱いの子がなきにしも
あらず。だからぜひ、ドラマ化してほしい。ドラマ化して話を膨らまして
私のお気に入りのあの子をもっともっと活躍させてほしい。
そういう衝動にかられました。土曜夜9時とか火曜夜9時のドラマの
テイストにあっていると思うんだけどなー。
68.すっぴん魂/室井滋
69.すっぴん魂6「ロケ隊はヒィーー」/室井滋
■内容
たとえメイクはしていても、心の中はいつもスッピン。大笑いの後で
ホロリと泣ける室井マジック。むかつく日常にムロイを一服!
■感想 ☆☆☆
久々に手に取った三谷さんのエッセイがとても面白かったので、もう少し
読みたいなぁ、あ。奥様のエッセイも読みたいわ!といさんで探したの
ですが、どれも貸し出し中で手に入らず。他のエッセイをつらつら眺めて
いて見つけました。私の中で小林さん、もたいさん、そして室井さんは
永遠に「恩田三姉妹」。小林さんのエッセイが手に入らないのであれば
お姉さんのものを読みましょうか。と手に取りました。
面白かったです。共感できるところも多かったです。さばさばとした
飾らない人柄が文章の随所から見えてきました。そして、女優という
仕事の大変さも切実に迫ってきました。体力勝負、体が資本というのは
本当なんだな。憧れだけではできない職業なんだな、としみじみ思いました。
物事の捉え方や視点、自分自身の評価や自分自身の行動の描き方など
阿川さんに似ているかも・・・と思いました。似ているところが多いけれど、
どこかが違う。その違いをうまく口では言えないけれど、私自身の
好みとしては、阿川さんのほうが好きでした。
70.レ・ミゼラブル4巻/ユゴー
■感想 ☆☆☆☆
ようやく4巻!物語がどんどこ動き始めました。面白い!!
しっかし、この壮大な物語をどうやったらミュージカルにできるんだろう。
ミュージカルなんて、2時間から2時間半、長くても3時間ぐらいなのに。
ただ、波乱万丈でドラマチックな展開は間違いなくミュージカル向き。
早くすべて読み終えたいです。
71.麦ふみクーツェ/いしいしんじ
■ストーリ
音楽にとりつかれた祖父と、素数にとりつかれた父、とびぬけて大きな
からだをもつぼくとの慎ましい三人暮らし。ある真夏の夜、ひとりぼっちで
目覚めたぼくは、とん、たたん、とん、という不思議な音を聞く。
それが麦ふみクーツェの足音を初めて聞いた晩だった。音楽家をめざす
少年の身にふりかかる人生のでたらめな悲喜劇。悲しみのなか鳴り響く、
圧倒的祝福の音楽。
■感想 ☆☆☆☆☆
いしいしんじらしい平易な文章と国籍を排除したかのような童話的世界観。
文章がやわらかく優しく、まるでパステルカラーのような印象を与える。
けれど、そういったやわらかい文章で描かれる物語の筋は暗く、辛く
悲しいものばかり。これが一体、どういうふうに「圧倒的祝福」に
たどり着くのだろう、と半信半疑で読み進めました。
読み進めて、最終章に味わえる喜びの大きさ、クライマックスによって
与えられた幸福感の大きさにくらくらしました。テイストも味わう感動も
「博士の愛した数式」に似ているかもしれません。
72.図書館の神様/瀬尾まいこ
■ストーリ
思い描いていた未来をあきらめて赴任した高校で、文芸部の顧問を
任された「私」。「垣内君って、どうして文芸部なの?」
「文学が好きだからです」「まさか!!」清く正しくまっすぐな青春を
送ってきた「私」には思いがけないことばかりの文学部。
不思議な出会いから、傷ついた心を回復していく再生の物語。
■感想 ☆☆☆
文学と向き合う少年に出会い、文章と向き合うことを覚えたヒロイン。
文学と向き合う時間の中で、少しずつ少しずつ、逃げていたものとも
正面から対峙するようになります。その静かな過程が、静かなのに
力強く、力強いうえに優しくて好きでした。
73.ホルモー六景/万城目学
■内容
このごろ都にはやるもの、恋文、凡ちゃん、二人静。四神見える学舎の、
威信を賭けます若人ら、負けて雄叫びなるものかと、今日も京にて狂になり、
励むは御存知、是れ「ホルモー」。負けたら御存知、其れ「ホルモー」。
このごろ都にはやるもの。元カレ、合コン、古長持。祗園祭の宵山に、
浴衣で駆けます若人ら、オニと戯れ空騒ぎ、友と戯れ阿呆踊り。
四神見える王城の地に、今宵も干戈の響きあり。挑むは御存知、
是れ「ホルモー」。負けたら御存知、其れ「ホルモー」。
古今東西入り乱れ、神出鬼没の法螺試合、若者たちは恋謳い、魑魅魍魎は
天翔る。京都の街に咲き誇る、百花繚乱恋模様。都大路に鳴り渡る、
伝説復古の大号令。変幻自在の第二幕、その名も堂々「ホルモー六景」、
ここに推参!
■感想 ☆☆☆☆
「鴨川ホルモー」の続編。続編ではありますが、今作品から読み始めても
十分に楽しめます。楽しめますが、前作「鴨川ホルモー」から読み始めると
十二分、どころか、十七分ぐらい楽しめます。前作から張り巡らされた
伏線が色々なところにびっしりと。それらを見つけるのもまた楽しい。
前作が「恋愛」をスパイスにした愉快痛快爽快な冒険活劇だったのに
対して、今作品は「ホルモー」という少し変わった味付けを施した
「恋愛小説」です。多くの人が幸せになるところを見ることができ、
大満足で本を閉じることができました。
74.蛙の子は蛙の子・父とムスメの往復書簡/阿川佐和子・阿川弘之
■内容
当代一の作家阿川弘之。エッセイやインタビューで活躍する阿川佐和子。
この父娘が、仕事・愛・笑い・旅・友達・恥・老いなど、時代をこえる
15の主題をめぐってユーモアあふれるやりとりが展開する。
■感想 ☆☆☆☆*
やはり阿川さんが好きだなぁ・・・としみじみ。彼女のものの考え方も
勿論、好きですが、それ以上に彼女の「伝え方」が好きなのだと気が
つきました。押し付けがましくなく、やさしい言葉で誰にでも分かるように
自分の気持ちや考え、主張をまとめています。「父」「娘」での
往復書簡だけあって、お互いに気恥ずかしさが大きく、流れる空気感が
少しぎこちない。そのぎこちなさも新鮮で面白いです。
75.クローバー/島木理生
■ストーリ
ワガママで思いこみが激しい、女子力全開の華子。双子の弟で、
やや人生不完全燃焼気味の理科系男子冬冶。新しい恋に邁進せんと動く
華子にいろんな意味で強力な求愛者、熊野が出現。冬冶も微妙に
挙動不審な才女、雪村さんの捨て身アタックを受けて・・・。
■感想 ☆☆☆☆
恋愛小説の形をとりつつも、これはひとりのオトコノコの
そして、彼を見守るオンナノコタチの成長小説だと思った。
進路について悩み、決意を二度三度と翻す主人公、冬治。
そうだな・・・と思った。「恋愛」も「就職」も自分の人生を決定的に
左右させる大きなもので、それを20歳前後で決めてしまうというのは
やはりとても怖い。怖いけれど、確実に決断は必要で、その決断に
伴って、「さようなら」と「こんにちは」が発生する。
それって切ないけれど、素敵だな、と思った。
登場人物ひとりひとりがとても魅力的な小説だった。
76.猫になる日まで/新井素子
77.結婚物語(上)(中)(下)/新井素子
・眠たい瞳のお嬢さん
・正彦君のお引越し
・大忙しの二日間
80.新婚物語1、2、3/新井素子
・新婚旅行は命がけ
・引越し貧乏
・傍若無人の冷蔵庫
■感想 猫になる日まで ☆☆☆
結婚物語 ☆☆☆*
新婚物語 ☆☆☆
これまた久々に「そうだ!新井さんに会いたいぞ!」と思い立ち、
持っていた文庫を引っ張り出しました。高校時代にはまっていた
新井さんでしたが、大学時代後半には、いつの間にか抜けていて
たまに読み返す程度。「グリーン・レクイエム」は未だに好きですが
今回読んだ作品はどれも久々で非常に懐かしい気持ちになりました。
あの頃、あんなにも読みやすいと思っていた彼女独特の文体は、
今、読み返すと、なんとも読みにくいというか、少し気恥ずかしい。
気恥ずかしいのは、今の私の文体が確実に彼女の影響を受けている
からだと思われます。句読点の使い方など顕著に影響を受けていました。
それにしてもバブル真っ只中に書かれた「結婚物語」と「新婚物語」。
この頃はいい時代だったんだなぁということを痛感させられました。
時代が明るい。そして牧歌的。結婚披露宴についての事情も
この頃と今とでは激変したんだな、と感じました。あと10年後ぐらいに
読み返すと、その感覚的なズレが更に大きくなって、もっと面白く
感じるところが増えるんじゃないかな。
83.星々の船/唯川恵
■ストーリ
禁断の恋に悩む兄妹。他人の男ばかり好きになる末っ子。
居場所を探す団塊世代の長兄。そして父は戦争の傷痕を抱いていて。
愛とは何か、家族とは何かを描いた心震える物語。
■感想 ☆☆☆☆
ぽこりんからお勧めされたこの作品。2年越しでようやく読めました。
ありがとう!ぽこりん!食わず嫌いだった作家さんなので、お勧めして
くれなかったら、一生出会えなかった作品だったと思う。
出会えてよかったです。でも、少し辛かったです。読み終えてずしんと
きました。あぁ!だから!ともやもやしました。
人生でたったひとつの恋に出会ってしまうのは怖い。ずっとその恋に
捉えられてしまうから。その恋の前には何もかもが色あせてしまう。
大きな喜びと出会えるけれど、その分、失うものも多く、私はそんな
激しい心の動きには耐えられない、そう思った。誰かの存在が
そこまで大きくなってしまうことは私にとって大きな恐怖で、それと
同時に大きな大きな憧れだと気付かされた。たぶん、私が追い求めて
いるのは、こういった大きな感情の動きで、だから、ちょっとした
心の揺れ動きや、少しの「いいな」には鈍感であり続けるのだと思う。
それにしても。あのなんともいえないラストはすごい。
私はハッピーエンド至上主義者として、私の中だけのサイドストーリー
を作り上げました。誰がなんと言おうと、(それが作者であっても)
この作品には「5年後」とか「10年後」があって、そこでは、
世間体も禁断の恋も気にしないふたりの姿があるのだと信じたい。
84.クジラの彼/有川浩
■ストーリ
「沈む」んじゃなくて「潜る」。潜水艦とクジラと同じだから。
人数あわせのために合コンに呼ばれた聡子。そこで出会った冬原は
潜水艦乗りだった。いつ出かけてしまうか、いつ帰ってくるのかわからない。
そんな彼とのレンアイには、いつも大きな海が横たわる。
自衛隊員たちを巡る恋愛事情を描く連作短編集。
■感想 ☆☆☆☆☆☆
あとがきに書かれていた作者の言葉を引用しましょう。
「いい年してラブロマ好きで何が悪い!」
悪くない!絶対に悪くないはず!私もラブロマ大好きです。
ハッピーエンド大好きです。幸せな話の連続で、読み終えたと同時に
思わず2回ほど読み返しました。
「空の中」「海の中」のサイドストーリーだそうです。
これは、この2作品も見つけ出さなくては。
85.お縫い子テルミー/栗田有起
■ストーリ
依頼主の家に住み込み、服を仕立てる「流しのお縫い子」として生きる
テルミーこと照美。生まれ育った島をあとにして歌舞伎町を目指したのは
十五歳のとき。彼女はそこで、女装の歌手・シナイちゃんに恋をする。
■感想 ☆☆☆☆☆
何度読み返しても、テルミーの生き様にしびれます。私もテルミーのように
自信を持って渡せるような仕事を見つけたい。テルミーのように自分の
仕事への取り組みを潔く言葉で表して、自信を持って掲げたい。
とにかくかっこいいオンナノコとの久々の再会にしびれました。
そして、テルミーのおばあちゃんの家訓のかっこよさ、潔さにも、
毎回のことながらしびれます。
「命短し恋せよ乙女」「たわむれに恋はすまじ」は、全国の永遠のオトメ
永遠の思春期女子たち全員と共有したい。この家訓について語り合いたい。
「久々に読みたい!」という再読欲求が高かった1ヶ月。
懐かしかったけれど、そして、再読を楽しんだけれど、
やはり初めて読んだときの感性からはどんどん変わって行っているんだ
いつまでも「あの頃」のままではいられないんだということを
肌で実感しました。
66.想い出にならない/堀田あけみ
67.想い出させてあげよう/堀田あけみ
■ストーリ
いつまでも少年ではいられない。いつまでも少女ではいられない。
「高校生」という季節の中で、傷つき、傷つけあい、彼らは自分にとっての
煌きをみつけようとしている。「恋愛」や「友情」に悩みながら、大人への
階段を昇っていく少年と少女を描く。
■感想 想い出にならない ☆☆☆*/想い出させてあげよう ☆☆*
大学時代に好んで読んでいた堀田作品と久々に再会したくなってふらりと
借りた作品。読み返しながら、懐かしさのあまり悶絶していました。
堀田作品は好んで読んでいたわりには苦手、というか、文章は読みやすい
けれど、登場人物たちに共感できないことが多かったのですが、この作品は
登場人物たちも好きだったなー、と懐かしく手に取りました。
内容は由緒正しい青春もの。文化祭実行委員として出会った少年5名と
少女3名がグループで仲良くなって友情を育み、恋愛感情を持ち合い
でも友情との狭間で色々と悩み、傷ついて・・・という青春王道ものです。
漫画化にも映画化にもドラマ化にだって向いていると思う。
それぐらい普遍的なテーマの作品。
自分の高校時代、青春時代も懐かしく思い返しました。
ただね。群像劇の割りには、登場人物に対する作者の好き嫌いが
非常に偏っていて、そこに疑問を感じました。読んでいて、
「あぁ。この子はお気に入りなんだろうな。」とか
「この子の生き方が理想なんだろうな。」とか、「こういう子は苦手
なんだろうな。」とか、そういうのが如実に分かります。
その上、なんとなく忘れ去られているような扱いの子がなきにしも
あらず。だからぜひ、ドラマ化してほしい。ドラマ化して話を膨らまして
私のお気に入りのあの子をもっともっと活躍させてほしい。
そういう衝動にかられました。土曜夜9時とか火曜夜9時のドラマの
テイストにあっていると思うんだけどなー。
68.すっぴん魂/室井滋
69.すっぴん魂6「ロケ隊はヒィーー」/室井滋
■内容
たとえメイクはしていても、心の中はいつもスッピン。大笑いの後で
ホロリと泣ける室井マジック。むかつく日常にムロイを一服!
■感想 ☆☆☆
久々に手に取った三谷さんのエッセイがとても面白かったので、もう少し
読みたいなぁ、あ。奥様のエッセイも読みたいわ!といさんで探したの
ですが、どれも貸し出し中で手に入らず。他のエッセイをつらつら眺めて
いて見つけました。私の中で小林さん、もたいさん、そして室井さんは
永遠に「恩田三姉妹」。小林さんのエッセイが手に入らないのであれば
お姉さんのものを読みましょうか。と手に取りました。
面白かったです。共感できるところも多かったです。さばさばとした
飾らない人柄が文章の随所から見えてきました。そして、女優という
仕事の大変さも切実に迫ってきました。体力勝負、体が資本というのは
本当なんだな。憧れだけではできない職業なんだな、としみじみ思いました。
物事の捉え方や視点、自分自身の評価や自分自身の行動の描き方など
阿川さんに似ているかも・・・と思いました。似ているところが多いけれど、
どこかが違う。その違いをうまく口では言えないけれど、私自身の
好みとしては、阿川さんのほうが好きでした。
70.レ・ミゼラブル4巻/ユゴー
■感想 ☆☆☆☆
ようやく4巻!物語がどんどこ動き始めました。面白い!!
しっかし、この壮大な物語をどうやったらミュージカルにできるんだろう。
ミュージカルなんて、2時間から2時間半、長くても3時間ぐらいなのに。
ただ、波乱万丈でドラマチックな展開は間違いなくミュージカル向き。
早くすべて読み終えたいです。
71.麦ふみクーツェ/いしいしんじ
■ストーリ
音楽にとりつかれた祖父と、素数にとりつかれた父、とびぬけて大きな
からだをもつぼくとの慎ましい三人暮らし。ある真夏の夜、ひとりぼっちで
目覚めたぼくは、とん、たたん、とん、という不思議な音を聞く。
それが麦ふみクーツェの足音を初めて聞いた晩だった。音楽家をめざす
少年の身にふりかかる人生のでたらめな悲喜劇。悲しみのなか鳴り響く、
圧倒的祝福の音楽。
■感想 ☆☆☆☆☆
いしいしんじらしい平易な文章と国籍を排除したかのような童話的世界観。
文章がやわらかく優しく、まるでパステルカラーのような印象を与える。
けれど、そういったやわらかい文章で描かれる物語の筋は暗く、辛く
悲しいものばかり。これが一体、どういうふうに「圧倒的祝福」に
たどり着くのだろう、と半信半疑で読み進めました。
読み進めて、最終章に味わえる喜びの大きさ、クライマックスによって
与えられた幸福感の大きさにくらくらしました。テイストも味わう感動も
「博士の愛した数式」に似ているかもしれません。
72.図書館の神様/瀬尾まいこ
■ストーリ
思い描いていた未来をあきらめて赴任した高校で、文芸部の顧問を
任された「私」。「垣内君って、どうして文芸部なの?」
「文学が好きだからです」「まさか!!」清く正しくまっすぐな青春を
送ってきた「私」には思いがけないことばかりの文学部。
不思議な出会いから、傷ついた心を回復していく再生の物語。
■感想 ☆☆☆
文学と向き合う少年に出会い、文章と向き合うことを覚えたヒロイン。
文学と向き合う時間の中で、少しずつ少しずつ、逃げていたものとも
正面から対峙するようになります。その静かな過程が、静かなのに
力強く、力強いうえに優しくて好きでした。
73.ホルモー六景/万城目学
■内容
このごろ都にはやるもの、恋文、凡ちゃん、二人静。四神見える学舎の、
威信を賭けます若人ら、負けて雄叫びなるものかと、今日も京にて狂になり、
励むは御存知、是れ「ホルモー」。負けたら御存知、其れ「ホルモー」。
このごろ都にはやるもの。元カレ、合コン、古長持。祗園祭の宵山に、
浴衣で駆けます若人ら、オニと戯れ空騒ぎ、友と戯れ阿呆踊り。
四神見える王城の地に、今宵も干戈の響きあり。挑むは御存知、
是れ「ホルモー」。負けたら御存知、其れ「ホルモー」。
古今東西入り乱れ、神出鬼没の法螺試合、若者たちは恋謳い、魑魅魍魎は
天翔る。京都の街に咲き誇る、百花繚乱恋模様。都大路に鳴り渡る、
伝説復古の大号令。変幻自在の第二幕、その名も堂々「ホルモー六景」、
ここに推参!
■感想 ☆☆☆☆
「鴨川ホルモー」の続編。続編ではありますが、今作品から読み始めても
十分に楽しめます。楽しめますが、前作「鴨川ホルモー」から読み始めると
十二分、どころか、十七分ぐらい楽しめます。前作から張り巡らされた
伏線が色々なところにびっしりと。それらを見つけるのもまた楽しい。
前作が「恋愛」をスパイスにした愉快痛快爽快な冒険活劇だったのに
対して、今作品は「ホルモー」という少し変わった味付けを施した
「恋愛小説」です。多くの人が幸せになるところを見ることができ、
大満足で本を閉じることができました。
74.蛙の子は蛙の子・父とムスメの往復書簡/阿川佐和子・阿川弘之
■内容
当代一の作家阿川弘之。エッセイやインタビューで活躍する阿川佐和子。
この父娘が、仕事・愛・笑い・旅・友達・恥・老いなど、時代をこえる
15の主題をめぐってユーモアあふれるやりとりが展開する。
■感想 ☆☆☆☆*
やはり阿川さんが好きだなぁ・・・としみじみ。彼女のものの考え方も
勿論、好きですが、それ以上に彼女の「伝え方」が好きなのだと気が
つきました。押し付けがましくなく、やさしい言葉で誰にでも分かるように
自分の気持ちや考え、主張をまとめています。「父」「娘」での
往復書簡だけあって、お互いに気恥ずかしさが大きく、流れる空気感が
少しぎこちない。そのぎこちなさも新鮮で面白いです。
75.クローバー/島木理生
■ストーリ
ワガママで思いこみが激しい、女子力全開の華子。双子の弟で、
やや人生不完全燃焼気味の理科系男子冬冶。新しい恋に邁進せんと動く
華子にいろんな意味で強力な求愛者、熊野が出現。冬冶も微妙に
挙動不審な才女、雪村さんの捨て身アタックを受けて・・・。
■感想 ☆☆☆☆
恋愛小説の形をとりつつも、これはひとりのオトコノコの
そして、彼を見守るオンナノコタチの成長小説だと思った。
進路について悩み、決意を二度三度と翻す主人公、冬治。
そうだな・・・と思った。「恋愛」も「就職」も自分の人生を決定的に
左右させる大きなもので、それを20歳前後で決めてしまうというのは
やはりとても怖い。怖いけれど、確実に決断は必要で、その決断に
伴って、「さようなら」と「こんにちは」が発生する。
それって切ないけれど、素敵だな、と思った。
登場人物ひとりひとりがとても魅力的な小説だった。
76.猫になる日まで/新井素子
77.結婚物語(上)(中)(下)/新井素子
・眠たい瞳のお嬢さん
・正彦君のお引越し
・大忙しの二日間
80.新婚物語1、2、3/新井素子
・新婚旅行は命がけ
・引越し貧乏
・傍若無人の冷蔵庫
■感想 猫になる日まで ☆☆☆
結婚物語 ☆☆☆*
新婚物語 ☆☆☆
これまた久々に「そうだ!新井さんに会いたいぞ!」と思い立ち、
持っていた文庫を引っ張り出しました。高校時代にはまっていた
新井さんでしたが、大学時代後半には、いつの間にか抜けていて
たまに読み返す程度。「グリーン・レクイエム」は未だに好きですが
今回読んだ作品はどれも久々で非常に懐かしい気持ちになりました。
あの頃、あんなにも読みやすいと思っていた彼女独特の文体は、
今、読み返すと、なんとも読みにくいというか、少し気恥ずかしい。
気恥ずかしいのは、今の私の文体が確実に彼女の影響を受けている
からだと思われます。句読点の使い方など顕著に影響を受けていました。
それにしてもバブル真っ只中に書かれた「結婚物語」と「新婚物語」。
この頃はいい時代だったんだなぁということを痛感させられました。
時代が明るい。そして牧歌的。結婚披露宴についての事情も
この頃と今とでは激変したんだな、と感じました。あと10年後ぐらいに
読み返すと、その感覚的なズレが更に大きくなって、もっと面白く
感じるところが増えるんじゃないかな。
83.星々の船/唯川恵
■ストーリ
禁断の恋に悩む兄妹。他人の男ばかり好きになる末っ子。
居場所を探す団塊世代の長兄。そして父は戦争の傷痕を抱いていて。
愛とは何か、家族とは何かを描いた心震える物語。
■感想 ☆☆☆☆
ぽこりんからお勧めされたこの作品。2年越しでようやく読めました。
ありがとう!ぽこりん!食わず嫌いだった作家さんなので、お勧めして
くれなかったら、一生出会えなかった作品だったと思う。
出会えてよかったです。でも、少し辛かったです。読み終えてずしんと
きました。あぁ!だから!ともやもやしました。
人生でたったひとつの恋に出会ってしまうのは怖い。ずっとその恋に
捉えられてしまうから。その恋の前には何もかもが色あせてしまう。
大きな喜びと出会えるけれど、その分、失うものも多く、私はそんな
激しい心の動きには耐えられない、そう思った。誰かの存在が
そこまで大きくなってしまうことは私にとって大きな恐怖で、それと
同時に大きな大きな憧れだと気付かされた。たぶん、私が追い求めて
いるのは、こういった大きな感情の動きで、だから、ちょっとした
心の揺れ動きや、少しの「いいな」には鈍感であり続けるのだと思う。
それにしても。あのなんともいえないラストはすごい。
私はハッピーエンド至上主義者として、私の中だけのサイドストーリー
を作り上げました。誰がなんと言おうと、(それが作者であっても)
この作品には「5年後」とか「10年後」があって、そこでは、
世間体も禁断の恋も気にしないふたりの姿があるのだと信じたい。
84.クジラの彼/有川浩
■ストーリ
「沈む」んじゃなくて「潜る」。潜水艦とクジラと同じだから。
人数あわせのために合コンに呼ばれた聡子。そこで出会った冬原は
潜水艦乗りだった。いつ出かけてしまうか、いつ帰ってくるのかわからない。
そんな彼とのレンアイには、いつも大きな海が横たわる。
自衛隊員たちを巡る恋愛事情を描く連作短編集。
■感想 ☆☆☆☆☆☆
あとがきに書かれていた作者の言葉を引用しましょう。
「いい年してラブロマ好きで何が悪い!」
悪くない!絶対に悪くないはず!私もラブロマ大好きです。
ハッピーエンド大好きです。幸せな話の連続で、読み終えたと同時に
思わず2回ほど読み返しました。
「空の中」「海の中」のサイドストーリーだそうです。
これは、この2作品も見つけ出さなくては。
85.お縫い子テルミー/栗田有起
■ストーリ
依頼主の家に住み込み、服を仕立てる「流しのお縫い子」として生きる
テルミーこと照美。生まれ育った島をあとにして歌舞伎町を目指したのは
十五歳のとき。彼女はそこで、女装の歌手・シナイちゃんに恋をする。
■感想 ☆☆☆☆☆
何度読み返しても、テルミーの生き様にしびれます。私もテルミーのように
自信を持って渡せるような仕事を見つけたい。テルミーのように自分の
仕事への取り組みを潔く言葉で表して、自信を持って掲げたい。
とにかくかっこいいオンナノコとの久々の再会にしびれました。
そして、テルミーのおばあちゃんの家訓のかっこよさ、潔さにも、
毎回のことながらしびれます。
「命短し恋せよ乙女」「たわむれに恋はすまじ」は、全国の永遠のオトメ
永遠の思春期女子たち全員と共有したい。この家訓について語り合いたい。