ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

麻生大臣の「費用対効果」発言は

2019-05-24 10:56:40 | 日記
科学の進歩はめざましい。かつて不治の病と言われたガンは、今では薬で治せるようになり、白血病も同様である。

問題は、新開発されたその治療薬の、アッと驚くお値段である。ガンの治療薬オプジーボは年間で3800万円、(使用例が増えた)最近では1450万円まで下がったというが、それでも一般庶民の手に届く値段ではない。白血病の治療薬キムリアの場合は3349万円というから、これも同様である。

科学の進歩とともに、命は金で買えるものになった。金持ちは科学の恩恵にあずかれるが、貧乏人はそうはいかない。ーーこの不平等な状況を是正しようとして生まれたのが、日本の医療保険制度である。白血病の治療薬キムリアはこのほど医療保険の適用対象になり、60万円ほどの自己負担額で済むことになった。やれやれ。

だが、これで一件落着とはいかないのが、この問題の難しいところである。高額な医薬品を保険適用にすれば、その分だけ国家の財政に負担がかかることになる。国家財政の原資は、言うまでもなく国民が支払う税金である。高い税金に喘ぎながらかつかつ暮らす一般庶民は、この現状を前にして、割り切れない思いを懐くことだろう。

麻生財務大臣が次のように述べたという。
「そういう薬が出てくるのは良いことなんだと思いますけど、高額の医療をやって存命期間が何年ですっていうと、だいたい数カ月。そのためにその数千万の金が必要なんですかってよく言われる話ですけど」

麻生大臣のこの発言がネットの言論界に物議を醸している。失言暴言大臣がまたまたトンデモ発言をした、という扱いだが、思うにこの発言は、これまでの失言暴言とは明らかに次元を異にしている。国家財政を預かる側の立場からすれば、医療制度の改革は「費用対効果を考えて進めていくべきだ」ということになる。これはある意味、理の当然である

麻生大臣の発言に対しては、「人の命に費用対効果なんてあるのか」という意見もあるようだが、国家財政を悪化させないよう、医療保険費の膨張に何らかの歯止めをかける必要があることは否定できない。そういう財務大臣の立場からすれば、保険適用の是非を判断する場合に「費用対効果」の基準を持ち込んではいけないとしたら、では、それ以外にもっと適切な基準があるのかを考えなければならないことになる。そんな都合のよい基準など、ないと私は思っている。「医療の現場に費用対効果の基準を持ち込むなど、もってのほか」と主張する人は、高い税金に喘ぎながら暮らす一般庶民の苦労がわからない人なのだ。結構なご身分だよな。

今回に限って言えば、麻生大臣はトンデモ大臣ではなく、「庶民の味方」であるように思える。失言・暴言の前科があるからといって、ただ叩けば良いというものではないと思うよ。
コメント
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