涼麻が行く ~白犬ウエスティの のんきな生活~

ウエストハイランドホワイトテリア(ウエス、ウエスティ、白犬)の涼麻(りょうま)のことを中心にいろいろと

『天球の歩き方 計算編』#5 〜冬のダイヤモンドはどんな六角形か〜

2017年06月18日 10時17分47秒 | 星空・気象

今回は、冬のダイヤモンドの形状について、調べてみます

冬のダイヤモンドは、オリオン座のリゲル、大犬座のシリウス、小犬座のプロキオン、双子座のポルックス、馭者座のカペラ、牡牛座のアルデバランを繋いでできる六角形で、都会でも大気の状態が落ち着いている夜ならば、容易に見つけることができます

ただ、六角形を結んでいく際に、ポルックスかカストルだったかなと、迷うことがあります。

ポルックスは1.14等星、カストルは1.58等星で、ポルックスの方が1.5倍だけ明るい注1ので、明るい方(正中したとき、左側の方)のポルックスを選べばよいわけですが、なぜか、カストルの方を選びたくなるのです。

注1) 10^{(1.58-1.14)/5*2}=1.50

 

1. 6つの恒星の位置

計算では、リゲル、シリウス、プロキオン、ポルックス、カペラ、アルデバランを、それぞれ恒星A〜Fとします。

それぞれの赤径RA及び赤緯Decは、下記の通りです(元期 J2000.0)。

リゲル:(RA, Dec)=(5h 14m 32.27210s, -8° 12′ 05.8981″)

シリウス:(RA, Dec)=(6h 45m 8.91728s, -16° 42′ 58.0171″)

プロキオン:(RA, Dec)=(7h 39m 18.11950s, +5° 13′ 29.9552″)

ポルックス:(RA, Dec)=(7h 45m 18.94987s, +28° 01′ 34.3160″)

カペラ:(RA, Dec)=(5h 16m 41.35871s, +45° 59′ 52.7693″)

アルデバラン:(RA, Dec)=(4h 35m 55.23907s, +16° 30′ 33.4885″)

 

2.各辺の長さと各内角の計算

まず、6辺の長さを求めます。【基本計算式1】を用いれば、

リゲル〜シリウスの角距離θAB=23.6732°

シリウス〜プロキオンの角距離θBC=25.7014°

プロキオンポルックスの角距離θCD=22.8459°

ポルックスカペラの角距離θDE=34.2370°

カペラアルデバランの角距離θEF=30.6899°

アルデバランリゲルの角距離θFA=26.4930°

と計算されます。6辺のうち最短であるプロキオン〜ポルックスの角距離を1とすると、各辺の長さの比率は、以下のとおりとなります。

リゲル〜シリウス(辺AB):1.0362

シリウス〜プロキオン(辺BC):1.1250

プロキオン〜ポルックス(辺CD):1.0

ポルックスカペラ(辺DE):1.4986

カペラアルデバラン(辺EF):1.3433

アルデバランリゲル(辺FA):1.1596

うーん、辺DEや辺EFが、少し長めなのですね。冬のダイヤモンドは均整のとれた正六角形ではなく、カペラが、ちょっと離れているようです。見た目には、結構、バランスのよい六角形と思っていましたが


次に、6つの内角を計算します。リゲルにおける内角φAは三角形FABに【基本計算式5】を適用して求めます。同様に計算していくと、

リゲルにおける内角φA=134.3932°

シリウスにおける内角φB=104.2132°

プロキオンにおける内角φC=152.2901°

ポルックスにおける内角φD=127.9156°

カペラにおける内角φE=90.7941°

アルデバランにおける内角φF=144.2187°

が得られます。相対する内角の値は近い(134.4°と127.9°、104.2°と90.8°、152.3°と144.2°)ようです。

以上の計算結果を手持ちの写真で説明すると、こんな感じになります(写真画像なので歪曲収差があります)。

ちょっと歪んだ六角形ですね。

ここで、相対する辺の平行度合いを調べてみましょう。

実は、観測者からみたとき、天球上にある異なる2本の直線(=2つの大円)は、どうやっても平行にはなりません。なぜなら、異なる2つの大円は必ず2点で交わってしまうからです。これは、平面上のユークリッド幾何学とは異なる非ユークリッド幾何学の特徴のひとつです。

でも、私たちが、天空の星々を繋いだとき、平行っぽく見える部分があるのも確かです。そこで、ここでは、例えば、辺CDと辺AFが平行に見えるかどうかを、「線分ACと線分FDの長さが同じくらいか」によって判定することにします注2。おそらく、私たちは、そんな感じで平行性を認識していると思います(左図)。

注2) 点A及び点Fから直線CDにおろした垂線の足を、それぞれ点Q、点Rとし、線分AQと線分FRの長さを比較するという方法もよいかと思います(右図)。

それぞれの線分の長さは、【基本計算式1】を用いて計算します。

線分ACの長さ:38.5111°、線分DFの長さ:45.0128°

線分BDの長さ:47.0537°、線分EAの長さ:54.2081°

線分CEの長さ:51.1243°、線分FBの長さ:46.0228°

 

計算結果は以下に示すように、線分の比率が1.11〜1.17と、そこそこ1に近く、相対する辺同士は結構、平行っぽいということが分かります。

 

3. ポルックスの代わりにカストル

試みに、ポルックスの代わりにカストルを結ぶと、どんな感じになるか計算してみました。

カストルの赤径RA及び赤緯Decは、次の通りです(元期 J2000.0)。

カストル:(RA, Dec)=(7h 34m 35.87319s, +31° 53′ 17.8160″)

第2章に示した一連の計算で、恒星D(ポルックス)をカストルに入れ替えて計算してみると、六角形の形は次のようになります。冬のダイヤモンドでは、各辺の長さの比が最大1.5倍の差があったことと比べると、ポルックスをカストルに入れ替えた六角形では、各辺の長さの差は1.3倍以下に収まっており、より均整のとれた六角形だといえます。

 

「冬のダイヤモンド」と「ポルックスをカストルに入れ替えた六角形」について、6辺の長さの平均値μ、標準偏差σ、変動係数CVを計算してみると、

冬のダイヤモンド:μ=27.27°、σ=5.11°、CV=18.7%

ポルックスをカストルに入れ替えた六角形:μ=27.20°、σ=3.90°、CV=14.3%

となり、6辺の長さの差異が是正されていることが、定量的に確認できます。

 

カストルに入れ替えた六角形について、相対する辺の平行度を計算し直すと、下図のように線分の比率が1.08〜1.12になり、これらの値は冬のダイヤモンド(1.11〜1.17)より1に近づいており、平行度合いが増していることが分かります。

 

4. まとめ

冬のダイヤモンドは、ちょっとカペラが遠くに離れている六角形です。ポルックスをカストルに入れ替えると、均整のとれた六角形に近づきます。夜空を見上げて、冬のダイヤモンドの六角形を紡いでいこうとするとき、ポルックスかカストルか道に迷いそうになる原因は、ここにあったのかも知れませんね。

 

5つの【基本計算式】こちらで紹介しています

その他の『天球の歩き方』はこちらへどうぞ

Winter Hexagon, Winter Diamond

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『天球の歩き方 計算編』#4 ... | トップ | 『天球の歩き方 計算編』#6 ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

星空・気象」カテゴリの最新記事