6月27日(水)、教育福祉常任委員会で可決されていた「綾瀬市図書館条例」が本会議にかかり、採決の結果、賛成多数で可決されました。この結果、来年(2008年)4月から民間企業が、「指定管理者」として市立図書館と三つの分室の管理運営を行うことになります。
私は、日本共産党を代表してこの条例に反対する立場で討論いたしました。その要旨は下記に載せますのでお読みいただきご意見等をお寄せください。
なお、この条例に反対したのは、日本共産党の私、上田と松本議員、神奈川ネットワーク運動の渡部議員、無所属の二見議員の4名でした(渡部議員、二見議員も反対討論を行いました)。賛成討論を行ったのは、市民会議21の安藤議員と公明党の井上議員でした。
-------------------------------------------------------------
第35号議案 綾瀬市図書館条例について、日本共産党を代表して反対の討論を行います。
この条例は、これまで直営で行ってきた市立図書館の運営を民間企業に任せるというものです。そもそも指定管理者制度がもつ問題点については、これまでも日本共産党としてことあるごとに指摘してきたところでありますが、今回の公立図書館への指定管理者制度の導入は、もっとも市場原理での運営が不適当な分野です。そのことは、2006年3月時点の日本図書館協会の調査で340もの自治体が「公立図書館に指定管理者制度を導入しない」と表明していることからもあきらかです。また、指定管理者制度の公立図書館への導入が、神奈川県で綾瀬市が最初であるということもそのあらわれだと思われます。
図書館に指定管理者制度を適用することの効果についてお伺いしたところ、「開館日の増加」「開館時間の延長」との回答でした。このようなことは直営の図書館でも行っているところは多数あり、導入の理由とはなりえないということを、まず最初に指摘させていただきます。
公立図書館は、「図書館法」第17条により「入館料その他図書館資料の利用に対するいかなる対価をも徴収してはならない」と定められており、利用者や貸出数が増えても指定管理者の収入が増えるわけではありません。また、これまで無料で行ってきている各種講習会などを有料にすることは市民サービスの低下になり、認めることはできません。こうしたなかで指定管理者に応募してくる企業の動機は、ひとえに企業のイメージアップのみであるということは、教育福祉常任委員会のなかでの市側の答弁としてもされています。このような低い動機付けで図書館運営の改革がすすめられるのかはなはだ不安です。いま図書館に求められるニーズは多様化し高度化しています。ただ単に、本を貸し出ししていればいいという時代ではなくなってきています。たとえば、本や雑誌、新聞、行政資料などの印刷資料と、インターネットを組み合わせた高度な情報提供機関、ハイブリッド図書館への脱皮は時代の要請となっています。
また、市民の役に立つ図書館への脱皮としては、市民の調べたい課題の解決を支援するシステム、たとえばパスファインダーを作るとかのとりくみが必要ですが、それには高度な専門性のある、しかも継続したとりくみができる司書が必要です。教育福祉常任委員会の質疑で市側の答弁の中にも「継続性はある意味懸念している」とありましたが、5年ごとに指定管理者が変わる可能性がある状態でこのような改革がすすめられるでしょうか。指定管理者が雇用するスタッフは短時間の勤務のもの、短期間の雇用のものが多く、知識や技能の蓄積が行われず、図書館サービスの低下が懸念されます。
次に図書館の自由、中立性の問題です。ご存知のように、わが国においては、図書館が国民の知る自由を保障するのではなく、国民に対する「思想統制」の機関として、国民の知る自由を妨げる役割さえ果たした歴史的事実があることを忘れてはならないと思います。こうした反省から、「資料収集の自由を有する」「資料提供の自由を有する」「利用者の秘密を守る」「すべての検閲に反対する」ことが「図書館の自由に関する宣言」として宣言されていますが、こうした自由は高い守秘義務が課せられている公務員こそ実現可能なのではないでしょうか。
こうしたことから、以下の5点に整理し反対の討論といたします。
1、 指定管理者制度では、図書館の継続性、蓄積性を守ることが難しいこと。
2、 指定管理者制度では、図書館の自立性、独立性の確保が保障されず、「図書館の自由」が脅かされること。
3、 指定管理者制度導入の目的が経費削減にあるので、図書館で働く人の一層の低賃金化が進行し、不安定雇用を拡大させてしまうこと。
4、 住民要望に基づくサービス改善を図ることが難しくなること。
5、 他の自治体などの図書館とのネットワークがスムースにすすめにくくなること。
以上5点ですが、さいごに、民間にまかせれば、なにかものごとがうまく行くという発想に警鐘を鳴らさせていただきます。
この発想は、民間企業のほうが公務員よりすぐれた管理・運営能力をもっているということを認めることになります。ですから、こうした条例を公務員の方が作るということが実はおどろきなわけです。私は、最初から公務員が白旗をかかげているこうした方向では、真の公務員改革はできないと考えます。行政運営のスピードや柔軟性、経費の削減といった今日的要請に答えることのできる公務員になるにはどうしたらよいのか。全体の奉仕者である公務員だからこそ、その自覚を高め、その自覚のもとに創意工夫し、鋭意努力し続けることで可能になると考えます。そうした住民全体の奉仕者として成長できるシステム、そうした職員が正当に評価されるシステムをつくることが今こそ必要なのだということ、指定管理者制度を乱用することはこうした公務員の成長・発展を阻害するものだということを申し添えさせていただきます。
なお、市民の権利を守り、地方自治体としての公的責任を明確にするため、各公社でおこなわれているように、議会で報告を行う仕組みをつくることをあわせて求め、反対の討論といたします。
-------------------------------------------------------------
追記●(2009年11月27日)
2008 年1 2 月に日本図書館協会が「公立図書館の指定管理者制度について」を公表していましたので、資料としてリンクします。リンク先はPDFファイルです。ご参照ください。