花・伊太利

日々の生活に関する備忘録です。

伎芸天

2014-02-01 15:11:14 | Weblog
 1月最後の土曜日、奈良の秋篠寺に着いたのは昼過ぎでした。秋篠寺と言えば有名なのは伎芸天、もちろん伎芸天を観るのが目的だったのですが、そのためだけに関西へやってきたわけではありませんでした。先ずもって大阪で開かれる飲み会への参加があり、折角大阪へ行くのだからお寺のひとつふたつに立ち寄ってみたいと思った次第です。焼失した金堂の跡地は苔にすっかり覆われ、冬の弱い日差しの中でも鮮やかな、けれども落ち着いた緑で迎えてくれました。本堂を一回りした後、左側にある入口から中へ入りました。有名な仏像は奥まったところでさも有難げに鎮座ましましているとのイメージがあったのですが、伎芸天は入ってすぐのところにあり、心の準備が出来ていなかった私は思わず目をそらして、そして呼吸を整えてから伎芸天と相対しました。伎芸天とのファースト・コンタクトは予想外だったものの、伎芸天の優美な姿は想像通りでした。肘のところから折り曲げてやや前上方へ向けられた右腕は指の先まですっきりとしており、方や垂らし気味の左腕は肩のあたりから心もち前へ出された様子で、わずかに左に傾げられた顔と相まって堀辰雄が「ミュウズ」と称したような艶めかしさをまとっていました。伎芸天の前に一本のろうそくが灯されていて、その光に映し出されたシルエットも艶やかなラインを示して向かって右後方で伎芸天に寄り添っていました。伎芸天は歌舞音曲の神、個別のある職能を代表する優しげな仏像を観て、国を護ったり他を威圧する役目を課せられた仏教とは役割が変わってきた時代の仏像であることを感じました。

追伸 秋篠寺の十二神将の一体に横綱白鵬によく似たものがありました。

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