花・伊太利

日々の生活に関する備忘録です。

独ソ戦

2019-07-28 15:17:06 | Book
(※朝日新聞朝刊連載「折々のことば」風に)

 「ソ連の脅威に対応する策を練っているうちに、対ソ侵攻も辞さずとのコンセンサスを固めていったことは明白だ」

 第二次大戦の初期、ドイツ軍に燃料を供給していたのはルーマニアの油田だった。ソ連がルーマニアに触手を伸ばすことを恐れた軍首脳部は、有事の場合の対応を検討する。そして、いつしかそれが既定路線と化し、ソ連侵攻に踏み切ることになる。「備えあれば憂いなし」と言うが、備えが憂いをもたらすこともあるのか。大木毅著「独ソ戦」(岩波新書)から。

富はいつも貧困を連れてくる

2019-07-22 23:15:29 | Book
(※朝日新聞朝刊連載「折々のことば」風に)

 「富はいつも貧困を連れてくる」   下川 裕治

 アンナプルナへのトレッキングルートにあるネパールのチョロン村。30年ぶりに訪れてみると、登山隊やハイカーのための山小屋が出来、現金収入でうるおっている様子。しかし、かつて自給自足で安全だった村は豊かになった反面、お金目当ての盗賊も現れるようになった。現金を落としてくれる外国人とその現金が引き寄せる盗賊、グルン村長は富がもたらした光と影を語る。下川裕治著「12万円で世界を歩くリターンズ」(朝日文庫)の「ヒマラヤ編」から。

使ってみたい科白

2019-07-08 20:58:50 | Weblog
 「かなしさは疾走する。涙は追いつけない」、これはかねてより機会があれば使ってみたいと思っているフレーズで、評論家・小林秀雄さんがモオツァルトの音楽を評した言葉です(新潮文庫「モオツァルト・無常という事」所収)。モオツァルトのピアノソナタ8番なんかは、まさしく「かなしさは疾走する」の感じにピッタリで、上手いことを言うなぁと思ったものでした。それはさておき、使えるシチュエーションとしては、奈落の底に突き落とされ茫然自失となった時などによく当てはまりそうです。
 さて、時代は相当にさかのぼり、しかもプロ野球に話は飛びます。阪神タイガーズの江夏投手がノーヒットノーランを達成し、しかも自身のホームランで勝負を決めたことがあります。その時のコメントが「野球はひとりでも勝てる。」えらくカッコいいことを言うなぁと思ったことを覚えています。ですが、仮に勝負の綾が逆に転じ、あとアウトひとつで大記録達成という時、相手チームにホームランを放り込まれて、ノーヒットノーランも勝利も一瞬にして消えてしまったとしたらどうでしょう。そんな場面で「かなしさは疾走する。涙は追いつけない」なんて言うと、落胆の度合いがひしと伝わって、これまた球界の名言として残ってもおかしくありません。
 またまた話は飛びますが、映画の007シリーズも使ってみたい科白の宝庫です。ある作品でロジャー・ムーア扮する007が、お色気ムンムンの女性から「食事はお済みでしょ。ご一緒出来なくて残念だわ」みたいなことを言われ、「デザートはまだなんだ」とニヤリ、すかさずこの美女を食べてしまうシーンがあります。これなんかもあこがれてはいますが、残念ながら一生(たぶん)使うことはないでしょう。