花・伊太利

日々の生活に関する備忘録です。

日々これ初日なり

2021-08-25 19:50:13 | Weblog
 ちょうど一年前の今日、ジャズ・トランぺッターの沖至(おき いたる)さんが、1974年から活動の拠点としてきたパリで亡くなりました。享年は78でした。パリ移住を表明した時、深代惇郎さんは天声人語に沖さんのことを書いています。その中で、「うまく吹けないときにも拍手、拍手なので不安になるんです」と、沖さんの言葉を紹介しています。それを承けた深代さんの弁は、「生の演奏や演技の良さとは受け手のお客と感応し合う中で、一回きりのものだということは分かる」でした(「最後の深代惇郎の天声人語」朝日文庫)。

 一回一回の演奏を一期一会の真剣勝負と捉える気魂が感じられますが、私は沖さんの求道者の如き姿勢に強く打たれました。「まだまだこんなものじゃない、もっと上がある」、そこには自分に対する妥協しない厳しさがあります。移り気な聴衆ではなく歴史を観客とすることを選び、スタジオ録音を重ねたグレン・グールドと、根っこのところでどこか通じずるものがあるのような気がします。自分の理想をしっかりと持ち、納得のいく演奏をあくまで追求する者同士で。沖さんの一周忌に献杯。

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