ガンバレ、ニッポン

なんか、不安定なニッポンですね。

アパホテル炎上事件は謝罪しなければ終わらない - 李小牧(り・こまき) 元・中国人、現・日本人

2017-01-24 15:25:00 | 政治、経済
元・中国人、現・日本人って

中国系日本人と書いてほしい。


沈下しなくもこのままで良いでしょ。

日本人が泊まりやすくなるしね。



ソースから

<元・中国人からのアドバイス。不当な要求ではあるが、中国共産党からGOサインが出ている以上、今回の愛国主義の動きは、なんらかの落としどころがなければ鎮火しない> (写真は東京のアパグループ本社)

 新宿案内人の李小牧です。今回はアパホテルの炎上事件を取り上げたい。

 ご存じの方も多いだろうが、事件の経緯について簡単に説明しよう。アパホテルの全客室には南京大虐殺否定論の書籍が置かれている。著者は藤誠二。元谷外志雄グループ代表のペンネームだ。1月15日、中国の動画配信サイトでこの事実を取り上げた動画が公開され、爆発的な話題となった。

 20日現在、再生回数は1億回を突破している。さらに中国外交部報道官が批判したほか、中国共産党の準機関紙である環球時報には「病的歴史観だ」とのコラムが掲載された。また中国の大手旅行会社ではアパホテルの予約ページが削除されるなど事態は拡大している。

 さて、皆さんはこの問題についてどのようなご意見をお持ちだろうか。私の意見ははっきりしている。「元・中国人として、そして現・南京人の夫として、旅行客のアパホテル宿泊は支持しない。」――これは中国のSNS「微博」での私の書き込みだ(私の妻は南京出身)。アパグループのやり方は明らかに間違っている。

 南京大虐殺についてはさまざまな異論があるのは承知している。歴史学者ではない私には細かい議論の真贋を評価することはできないが、少なくとも1937年12月の南京で相当数の民間人が殺害されたということはわかる。多くの歴史学者が検証し認めている事実ではないか。

 言論の自由だから何を言おうがどんな本を書こうが自由という人もいるようだが、間違った考えだ。自分の経営するホテルに自分の著作を置くことそのものには問題はないだろう(かく言う私も、経営する歌舞伎町のレストラン「湖南菜館」に自分の著作を置いている)。だが言論の自由とは、無責任な放談を認めるものではない。ヘイトスピーチやデマについては一定の抑止力が必要だ。もちろん権力による思想統制があってはならないが、だからこそ間違った発言については市民社会が厳しく批判することが必要になる。そうした思いで私も声をあげた。

 特に元谷代表は安倍晋三首相の後援会とされる「安晋会」の副会長という立場にある。あの書籍が彼の個人的な思想表明だったとしても、世界はそうは受け取らない。「軍国主義復活を目指す安倍首相」という中国の国際的宣伝に有力な証拠として利用されるだろう。後援会副会長でありながら、安倍首相を支えるどころか足を引っ張っているわけだ。

【参考記事】アパホテル書籍で言及された「通州事件」の歴史事実

なぜ"今"炎上したのか

 さて、今回の炎上事件について、なぜこのタイミングなのか不思議に思っている人が少なくないようだ。アパホテルの客室に元谷代表の著作が置かれていたのはよく知られた話である。

 実は私自身も約1年前の2016年2月11日に微博でアパホテルの問題を取り上げている。ある中国人ネットユーザーが元谷代表の政治思想を問題視したつぶやきを微博に書き、私にもリツイートするよう求めたからだ。

 正直な話をすると、SNSであまり政治的な発言をしたくはない。私本人はかまわないのだが、妻がいやがるのだ。「政治なんて金食い虫のことはやめて、ビジネスに集中して欲しい」というのが彼女の願いだ。

「社会のため、人々のために政治家として私は貢献したいのだ! 止めてくれるな、妻よ!」と、がつんと言ってやりたいのだが、なにせ新宿区議選に出馬した時の費用は妻に借りたのでどうにも頭が上がらない(笑)。だがこの件ではさすがに黙っていられないと微博に書き込んだ。



 ところが、だ。中国ナンバーワンの人気トーク番組「鏘鏘三人行」の準レギュラー格であり、中国では空港でも街中でも盗撮されるほどの著名人である私が怒りとともに意見を表明したのに、まったく話題にならなかった。それはなぜだろうか。

 答えは「日中関係の改善傾向が炎上につながった」というものだ。なぜ日中関係がよくなるとアパホテルが炎上するのか、中国独特の政治力学を知らないとさっぱり理解できないだろう。

 1年前の冬には日中関係は冷え込みきっていたため、これ以上の材料を提供すれば大衆の日本叩きが過熱すると当局は判断したのだ。一方で、回復基調にある現在ならば釘の一本でも刺しておくのはありだと炎上を認めたということ。そうでもなければ、共産党準機関紙に批判コラムが掲載されることはない。

【参考記事】日中間の危険な認識ギャップ

 中国の愛国主義は常に敵を必要としている。汚職政治家、反動分子、外国政府、外国企業と対象は常に移り変わるが、いつもなにかしらの敵を必要としているのだ。敵がいなければ国家の元に一致団結できないのが愛国主義の思想であり、そのため中国は常に敵を求めている。

週末に計画されていた中国人の抗議デモ

 ひとたび火がついた愛国主義の動きは、なんらかの落としどころがなければ鎮火しない。アパホテル側は時が過ぎれば忘れられると思っているかもしれないが、そんなことはない。

 実際、1月22日の日曜日には、都内のアパホテルに対する抗議デモが在日中国人の間で計画されていた。100人近くが含まれるSNS「微信(WeChat)」のグループで、デモをやろうということで盛り上がっていたのだが、結局、誰もリーダーをやりたくないからか責任の押し付け合いが始まった。当局の主導がなければ組織行動ができないという中国人の悪い癖が出て計画は頓挫したが、怒りの火は今も消えてはいない。

 2013年にアップルが中国で槍玉に挙げられたのを覚えているだろうか。CCTV(中国中央電視台)の特別番組で、iPhoneの修理サービスが取り上げられた。「他国では新品と交換してくれるのに、中国では裏蓋だけは古い機種のものが使われている。これは差別だ」という内容だ。アップルの対応は中国の法律に対応したもので差別とは言い切れなかったのだが、謝罪を拒むアップルに官制メディアは「比類なき傲慢さ」などの言葉で猛批判。中国ネット世論もバッシングに加わるなか、ついにアップルは謝罪した。

 中国の企業向け炎上対策マニュアルでは、愛国主義的バッシングを受けた時には速やかな謝罪が必要だと書かれている。さもなくばアップルのような世界的企業ですら大きな傷を負ってしまうのだ。アパホテルは中国では事業を展開していないため、中国人客が一時減っても大丈夫だと高をくくっているのかもしれないが、このまま盛り上がりが続くようだと、アパホテルの代わりに別の日本企業がやり玉にあげられてもおかしくはない。

 企業だけで済めばまだましだろう。2月に札幌市と帯広市で開かれるアジア大会の組織委員会が、札幌で選手の宿舎となるアパホテルに対して「スポーツ理念にのっとった対応を」と配慮を要請しているらしい。スポーツイベントにもマイナスの影響を与える事態となれば、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催にもつながっていく恐れすらある。

 不当な要求に謝罪させられるのはやりきれないが、今回に限ってはアパホテル側に非があることは明白だ。傷が浅いうちに事態沈静化へのアクションを起こすべきだろう。
李小牧(り・こまき)


最新の画像もっと見る

コメントを投稿