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治しやすいところから治す--発達障害への提言

花風社・浅見淳子のブログ
発達障害の人たちが
少しでもラクになる方法を考える場です。

加害者の主治医はメジャーどころぞろい

2012-03-06 08:35:36 | 日記
昨日この本読み始めました。
きっともうすぐ読み終わると思う。

「十七歳の自閉症裁判」 佐藤幹夫著



寝屋川事件に関する本です。
いい本だ!
これも単行本で買って、文庫で買いなおし。その後の話まで載っています。

う~ん、資料としてどっちが優れているかというと
少なくとも私にとっては「自閉症裁判」よりこっちかも、と思いました。

というのは、鑑定した医師の見解がたっぷり載っていて
(これは、ベムが素人考えでワケもわからず批判したあの先生ですが)
それが実にフェア。
障害特性に対してフェアです。

寝屋川事件の少年は
もうやりとりからしてかなりディープに自閉っ子だし
俺ルールのきっつい人なんですが

「贖罪なき更生」
私は自閉症の人に対しては、これでいいんじゃないかと思ってきました。
だって大事なのは、再犯しないことでしょ。
普通はそこで、反省という道のりをたどるんだけど
反省能力のない人もいて(ある人も多いよ。念のため)
そういう人には、反省を無理に求めなくても再犯しない状態に持っていけばいいんじゃないかと思ってたんです。

だから自分の事件のときでも
「反省も謝罪も求めない。前科一犯にしてください」とお願いしてきた。
それが一番再犯を防ぐ道だと思ってたからね。
民事で敗訴してもやめない。
訴えられたこと事態に文句を言っている。
それは反省能力のある人間の態度とは思えなかったですからね。

それにしても、この本読んで思い出したのは

この寝屋川事件にしろ
京都塾講師にしろ
そしてもちろんYTにしろ

事件を起こした時点ですでに診断はついていて
この寝屋川の少年も現行犯逮捕直後の接見で弁護士に「自分はアスペルガー障害という診断が出ている」と話している。

そういえば、昔ギョーカイ的には
「事件を起こす子は未診断なのだ。ケアされていないから起こすのだ」みたいな大本営発表がありましたけど
これだけ重なると、あれもウソだったのね、ということで。

もちろんここで私は
「メジャー医師が診断した子がうんぬん」という俺ルールを掲げる気はないですよ。

第一YTの件と違い、寝屋川や京都の主治医たちは
「現行犯を放置した」わけじゃないからね。

ただこれを見て「医療ってのは限界があるな」って(あたりまえだけど)。

そして大事なのは「教育だな」って。

でもこの事件の保護者はきっと、怠らなかったような気がするのね。
ただ、障害特性の恐ろしさを知らなかったかも、という気はする。
鑑定医はその点、障害特性を知り尽くしている

っていう感じ。

診断はもちろん受けたほうがいいよね。

でもその結果、YTがそうであったように「だから何をしても許される」わけじゃないことは、教育しておかなくてはいけないのではないでしょうか。

いや、寝屋川の子がそうだったっては思わないですよ。

ただ、障害があるとわかった子に
「君は頑張らなくていいんだよ。社会が理解すればいいんだ」って周囲が声をかけ
はいぱーりちぎに受け取るとすると

「そうか。社会のせいなんだ」と思いかねない気がする。

実際、社会を恨んで恨んで、という状態から立ち直らせてきた保護者に取材させていただいたばかりなので
そういう気がするんですよね。

「自閉っ子と未来への希望」の最後に、ちゅん平さんの「すべての母さんたちへ」っていう一文を載せさせてもらっているけど、ちゅん平さんのお母さんは、昔こう言ってた。
「親として至らなかった」
これはね、診断がわかったときの決意とか愛情があふれている言葉なんだけど

ちゅん平さんが受け取ったのは
「そ~か、この人は親として至らないんだ」ってこと。素直だからね。

私は言ってあげましたよ。
「おたくのお母さん、いいお母さんだよ。ただ理解に時間がかかっただけだ」

今はちゅん平さんも
自分のお母さんがいいお母さんだって知ってます。

だからね、本人に
「周囲が合わせればいいんだよ」って言うことは
こういう結果をもたらすかも、って頭の隅においておいてもらえれば。

私は今、YTにひとかけらも同情してないよ。
自閉症に生まれたことも。だってそれは別に不幸じゃないし。
そしてこういう結果になったことも。
だって自分でやったことだし。

ただかわいそうに思う点があるとすれば

診断を受けたことによって

「自分は何をしても罪に問われない。健常者がガマンする」っていう俺ルールを、どっかで拾ってきちゃったことだな。