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授業史に学ぶ人に学ぶ

2009年01月20日 | 読書
 『秋田の戦後授業史に学ぶ』(千葉信一郎著 秋田県教育振興会
に次のような一節がある。

 授業史に学ぶということは、現在、私たち教師が直面する切実な課題そのものを、過去と未来とのつながりにおいて意識することなのです。

 およそ10年前に書かれたこの本(雑誌連載のまとめ)は、戦後だけでなく戦前、明治・大正期までさかのぼって本県の教育を概観しながら、授業に関わる教師の意識の変遷という点を中心に書かれてあるように思った。

 歴史的な資料もあり十分に興味深い。例えば昭和31年に始まった全国一斉学力調査、本県は下位だったと聞いてはいたが、まさしく国語も算数も最下位だったこと。「沖縄よりも低かったのです。」という文章まで添えられてある。悉皆調査ではなかったといえ、まさしく隔世の感がある。

 そんなことより自分がこの本から学ぶべきこととして強く残るのは、次の二点である。もちろん、直面する課題に正対するという意味を含めてのことである。

 一つは、二元論的発想にとらわれないことである。歴史の数多くの論争とその結果の不毛さがそれを物語る。今でいえば「学力テスト」しかり「英語教育」しかりである。
 もう一つは、子どもの現実、社会の変化をカリキュラムとして生かすという点である。経験主義と系統主義のせめぎ合いが大きく取り沙汰されてきた時代であるが、社会状況の変化がそれらの主義自体も変質を余儀なくしているように思う。指導する側として現実と将来を見据え、信念をもって組立て実践していく必要を感じた。

 著者の千葉氏が亡くなってから10年が経つ。まさしく秋田県教育界の重鎮でもあった方だ。今の県の状況をどんな思いで見つめているだろうか。
 その千葉先生へ一度手紙とサークルでまとめた冊子を送ったことがあった。20年ほど前だったろうか。中味はもう覚えていないが、授業研究についての熱い思いを書きなぐったのだろう。
 そんな田舎の一教師に対しても励ましの言葉が綴られた返信が確かにあった。その便箋は今も机の中にある。

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