すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

その一瞬の真実だけを

2020年05月11日 | 教育ノート
 土曜日にEテレで放送された「ETV特集」は見応えがあった。

「映画監督 羽仁進の世界 〜すべては“教室の子供たち”からはじまった〜」

 残念ながら直接観た記憶のある作品はなかったが、部分的に映された箇所だけでもその凄さが伝わってくるようだった。
 羽仁進の著書はいくらか読んでいると思うし、TVなどで評論家のように登場して話している場面はいくらか観ている。しかし、映画監督としての偉大さについては恥ずかしさながら認識不足だった。

 取り上げられた「教室の子供たち」という記録映画には、副題としてなんと「学習指導への道」とあり、羽仁は「教えられない子どもがいる」という言い方で、多様な子どもたちの生態に注目しているのだった。

 次の「絵を描く子どもたち」では、なかなか「描きだせない」子に着目し、子どもがどのようにして心を開いていくか、置かれた環境を含めて明らかにするような展開だった。

 その後の「不良少年」という映画は、ドキュメンタリーではなく劇映画という範疇になるが、それは役者ではなく素人つまり「本物の不良」をキャストにしていた。等身大の言動を求める撮影の一端も紹介されていて、実に興味深かった。


 2020.5.3 その日だけの共演

 羽仁は、ドキュメンタリーと劇映画に違いはないという考えを持っている。
 それは、いわば「過程」や「練習」の否定といった見方もできよう。

 その一瞬にある真実だけが価値を持つ、そこを切り取っていくという姿勢だ。
 むろん作品である以上編集という要素は抜きに出来ない。しかし、画面から確実に訴えかけてくる姿だけを相手にしていたというべきか。


 番組中に何度か是枝裕和監督が登場し、作品を見ながら語っている。自ら認めるように彼のつくる映画が影響を受けているのは確かで、今後の作品をみるうえでの視点が深みを増したような気がする。

 娯楽映画ばかり見てきた若い頃を少し悔やむような気分がわいてきた。