「ボクセルポリゴンな日々」 - UnityでMakersとVRをつなぐ挑戦 -

Unityプログラムで3DCGアセットデータをVRや3Dプリンターで利用可能にする最新技術や関連最新情報を紹介します。

MMDアバンドールの作成方法と課題

2012年12月11日 15時46分37秒 | MMDアバンドール
ローンチ映像を公開した以上、MMDアバンドールの展開について具体的な話を提示していかなくてはなりません。

ニコニコ動画にアップした「【MMD→立体出力】MMDアバンドール・俺の嫁を画面から取り出すために」で紹介しました”嫁取り出しの3ステップ”ですが、これを具体的に説明していきたいと思います。

まず最初の1ステップ目は、MMDモデルデータ(pmdファイル)とモーションデータ(vmdファイル)あるいは個別に作成したポーズデータ(vpdファイル)から、ポーズ固定のMMDモデルデータ(pmdファイル)を作成する方法です。
これは割と簡単な作業です。
用意する物は「PMDEditor」というMMDモデルデータを編集する上で不可欠と言っても過言ではないモデル制作支援ツールです。
まだお手元にない人はMMDの総本山であるVPVP Wiki(http://www6.atwiki.jp/vpvpwiki)からダウンロードして下さい。
PMDEditorには付属ツールとしてVMDViewというモーションビュワーツールが添付しています。
こちらでMMDモデルデータ(pmdファイル)を開き、任意のモーションデータ(vmdファイル)やポーズデータ(vpdファイル)を開いて好みのポーズに合わせた後、
トップメニューの「ファイル/現在の形状でモデル保存」を選択すればそのままのポーズで固定化されたMMDモデルデータ(pmdファイル)が得られます。

通常はこんなファイルを作ってもMMD上でアニメーション表示させられないため無意味と思われそうですが、ポーズ固定化したポリゴン情報が得られないと立体出力には使えないので機能として有り難く使わせて頂いてます。


次に第2ステップである「立体出力可能な形状に作り変え」があります。
動画上でもコメントでご指摘がありましたように、ここが唯一にして最大の鬼門です。
というのも、MMDをはじめとする映像制作向けの3DCGデータは基本的に立体出力の事を考慮されていません。

では立体出力向けの3DCGデータとは何か?それを説明していきます。

現在、私たちが手にする家電製品や文具品等はほとんどがプラスティック製品です。これらはそうやって作られているかと言うとたい焼き屋さんのたい焼きと同様に「金型」による型抜きで作られています。
金型に流し込むプラスチック原料はドロドロの液体状になっています。それが金型の中に押し込まれて冷やされ固まると最終的な製品になるのです。

それでは、その金型の底に穴が開いてたらどうなりますでしょうか?
・・・皆さんのご想像通り、底の穴からプラスチック原料がドロドロと出ていって固まっても製品の形になりません。

これを防ぐため、工業製品をデザインするための3DCGデータは「穴があいてない」ということを最低限の条件として守っています。
穴あきのデータでは製品としての型を作ることが出来ないのです。
よって工業製品向けの3DCGデータは細部にわたり穴があかないようにきっちりと作られています。
(※製品によっては力がかかる所に材料を集中させたり、力のかからない所は肉抜きしたりと言った細かい調整をかけてますがここではあえて説明を割愛します。)

しかし、
MMDを始めとした映像表現に使われる3DCGでは、基本的に「目に見えない部分は作らなくてよい」というルールが徹底されています。
何故かと言うと、見えない部分までデータを作るとデータ量が多くなって表示処理が重くなるからです。ましてや曲面部分もとことんシェーディング表現でごまかせる所はごまかしてポリゴン数を減らしています。
これによって標準的なMMDモデルデータ、特に初音ミクの場合2~3万ポリゴン以内に抑えられています。しかしこれでも過去のゲーム用ポリゴンモデルとしてはデータが大きい方なのです。

データ量の話はこれくらいにして、
形状を表現するデータが削られているという事は、仮にMMD初音ミクモデルの頭に穴をあけてそこからプラスチックの原料を流し込んだと考えましょう。(ミクさんごめん!)
結果はどうなるか?
当然ながらあっちこっちで原料のダダ漏れが発生します。
なぜなら原料が漏れないように考慮して作られていないからです。

すなわち、第2ステップの主な作業はこの「原料がダダ漏れないようにモデルの穴を閉じる作業(=ポリゴン追加作業)」がメインとなります。

但しここまでの内容は立体出力に際して最低限守らなければならない事です。
さらに高度な、例えばフィギュアモデルの原型になりえる形を立体出力する場合はこれに表面形状の微細化やらバランス調整やら型抜きの限界の考慮etc.の作業が加わりますが、
MMDアバンドール制作においては最初のうちはオミットします。


実はここまで書きましたが、
最初から第2ステップの「原料がダダ漏れないようにモデルの穴を閉じる作業」が済んだMMDモデルデータを用意すると、
上記の工程を丸々すっとばすことも可能です。
その場合でも細かい調整が必要になる場合がありますが、上記の工程を実際に行なうよりははるかに楽になります。
ということで先日公開した「そむにうむ式初音ミクv1.0」ではその準備工事が済んでいます。


そして第3ステップ、
第2ステップで作成した「原料がダダ漏れないようにモデルの穴を閉じる作業」が済んだ立体出力用のデータを、
各種の立体出力様3Dプリンターに適したファイル形式で保存し、立体出力する行程です。

最近では立体出力が行なえる3Dプリンターの種類も格段に増えましたが、当然ながら出力サイズが大きくなればなるほど出力費用も増大します。
また、小さく出力しようとして単純に縮尺をかけて縮めても、今度は3Dプリンターの出力限界に引っかかって綺麗に出力できなかったり出力後にすぐ壊れたりします。

立体出力に関しては自前で3Dプリンターを用意すると経済性が高いですが、慣れないうちは3Dプリンターで出力サービスを行なう業者さんに依頼して出力物の感覚を掴みましょう。
それと、今回の作例のミクさんの様なフルカラー出力タイプ(最初から出力物が着色済みで出てくる)の3Dプリンターはまだ個人で購入できる値段ではありません。(250万~800万以上)
これについては専門出力業者さんに依頼するのがベターです。

映像における作例のミクさんは、横浜にある株式会社アイジェットさんに依頼して出力してもらいました。
下の写真のように最初から6つのパーツに分割されています。



このモデルでは最大高さが123mmもあるのと土台まで立体出力してしまったのとで、しめて5万6千円ほどかかりました。(汗)
但し全高が8cm程度に収まる小型のモデルにすれば1万円台もしくはそれ以下の出力も可能であるとのことです。

即ち、同じモデルでも寄りローコストに立体出力を得るための改造を施せば、望む価格帯で立体を手にする事が出来るのです。


・・・・・

以上が動画内で説明した3つのステップについての詳細です。
「MMDアバンドール」プロジェクトでは、こうした立体出力に関するノウハウを共有するだけでなく、MMDから変換した立体出力用原型データも出来るだけ公開&共用し、
本家MMDと同じくクリエイターズコモンズによる分業化と知識共有を立体出力模型の世界にまで広げていきたいという思いがあります。

いずれ模型の世界の中でMMDから出力したモデル達がプラモデルと共演する時代が来ると思います。

しかしまだまだこの先クリアしなければならない問題は沢山あります。
今後も様々な人と意見交換をし、自らも手足を動かしてMMDアバンドールを通じた新たな知識の交換と交流の場を作っていきたいと思います。

もしもご興味がございましたら、筆者ツイッターアカウントをフォローして下さい。
たまにろくでもない事を呟きますが、大体はMMDとMMDアバンドールそして立体出力の最新トレンドについて呟いています。

それでは宜しくお願いします。

そむにうむ@森山弘樹 twitter: @Somnium

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