TBSの日曜の朝に放送される番組に「サンデーモーニング」という番組がある。司会者は関口宏という、俳優業から司会者に転じた人物がその番組の司会を行っている。
東北関東大震災後2週間ほど続いた各局の被災状況の終日放送も、今は震災前の番組内容に変わりつつある。
昨日のサンデーモーニングを観た感想なのだが、一つとても気になる司会者の姿勢があった。原子力発電所に関する専門家への質問の仕方である。
われわれが一番心配になるのは、最悪の状態とはどのような状態になるのですか?
われわれが気になるのは、最悪の状態になるとどうなってしまうんですか?
という、関口氏の専門家への質問の仕方である。
私自身も気になるので、当然他の人もそうなのかも知れません。ですから関口氏は「われわれが一番気になること・・・・」という視聴者を代弁しての質問と自負してのことだと思う。
マスコミとはそういうもので、視聴者の求める視線で報道することにその使命を感じているのかもしれない。
誤りであるとか、という問題ではなく、問題とされる事柄に対して問、当然答えは出される。問はこの場合「不安」に対するものである。
出された答えに対しての視聴者の思い、思いとは従って、不安に対する解消を目的としており、少しでもその解消に向かう答えを聞きたいのが本音ではないだろうか。
ここで司会者として、あえて「われわれ・・・」「みなさんが・・・」を使わずに、
チェルノブイリ原発事故のような事故がありましたが、この場合の最悪の状態とはどのような状況でしょうか?
福島第一原発での最悪の事態とはどのようなものでしょうか?
と質問したらどうだろうか。
チェルノブイリのような核爆発自己ではなく水素爆発、直接の核爆発にはほとんどなる可能性はない。
これ以上の放射線が出ないように、冷やし続けることが一番で、安定するまで2・3年はかかるかも知れません。
植物についた放射能は、洗えば取れる程度のものです。
専門家の先生は、インパクトの強い「われわれの疑念」の問いに答えていました。「最悪事態」の質問にこらえていました。
それに対して、関口氏は
自衛隊や消防庁がやっている放水を、2年もやり続けるのですか?
この問いを疑問に思わない人もいると思いますが、わたしが勝手に思うことですが、非常に愚かしく思ってしまいました。
本当に関口氏が、脳裏に2年間も冷やし続ける自衛隊や消防庁の隊員を想像しているとするならば、私のある場と非常に異なる場にある人にある人の質問としか思えません。
このような冷却方法で確実に冷却することができたとして・・・・・。
こういう想定が脳裏に浮かんで来ないのか、疑問に思ってしまう。政治や芸能・スポーツに対する報道ではない。
「あなたの疑問に答えましょう」「あなたの疑問は最悪という不安なのです」
「そうなんです。私の不安は、最悪の状態なのです」
まるで催眠実のような世界である。
「あなたの腕は段々と重くなる」を「私たちの腕は段々と重くなる」
視聴者は関口氏の最悪の事態を共有しなければならないように、思ってしまう。
関口氏の言動には、怖さがあると私は勝手に思う。
人びとが望むことは救いである。
ここで月読寺の住職小池龍之介氏の『超訳 ブッダの言葉』(ディスカバリー)から次の言葉を紹介したい。
<引用>
君を苦しめるものは
君を苦しめる感情すなわち、かなわぬものを求める欲望と、いつまでも反復する怒りは、他人がつくったものではなく、君自身の心身から生まれる。
好き嫌いというわがまま恐怖によってビクッとすることも、気味の心身によってつくられる。
たくさんのよけいな考えごとも妄想も、君自身から生まれ、君の心をつかまえていじめる。
そう、まるで少年たちが、イタズラにカラスをつかまえ投げすてて、いじめるのにも似ている。
〔経集271〕
<以上>
題は「君を苦しめるもの」という二人称の語りになっている。小池住職は若者に語りかける形式というよりも、お釈迦様の語りである。
訳するということは非常に難しいと思います。もしもこの言葉が一人称で語られているならば、どうでしょう。
題名は「私を苦しめるものは」となります。
善悪の問題ではありません。一人称、二人称を気にしないでモノ言う指導者や語り手が多い。安心を与える語り方、というものがきっとあると思います。
現代人はどうも自分お置き場所がなかなかつかみづらいのか、浮いた状態で、常に流されやすいのではないか。
簡単に瞑想と言うが、瞑想する主体は自分自身であり、自己あるのみであると思う。
あなたはこうなるのではなく、わたしはこうなるのである。
導きとはそういうもののような気がします。この話は善し悪しの批判先がある話ではありません。単なる私の思いです。
「自己あるのみであると思う。」とかくと「そうではあるまい」と思う人がいるに違いないのですが、「あるということはないということの裏返し、現象は常に重なっているのです」という話を聴いたことがありますが、そういう意味の「ある」です。
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