思考の部屋

日々、思考の世界を追求して思うところを綴る小部屋

「男女川」について

2019年02月20日 | カラオケ

カラオケ愛好家は、数ある楽曲から選択するのは大変だろうと思われるかもしれませんが、それぞれに好みの歌手がいるもので発表会を見ていると、この人はこの歌手の曲を歌うのが常と分かってきます。私にもこの人の曲を歌ってみたい歌手がいて♭1か♭2でくらいでその方の曲を選択します。

 その方とは小田純平さんで自らも歌い、他の歌手の歌の作曲もされている人です。今週も一曲レパートリーに入れようと思う曲があり、小田さんの曲で題名は「男女川(みなのがわ)」です。この「みなのがわ」の響きから

 百人一首になじみのある方ならば陽成院の次の歌が浮かぶかと思います。

筑波嶺の 峰より落つる 男女川 恋ぞつもりて 淵となりぬる

完訳用例古語辞典(学研)の口語訳では、

筑波山の峰から流れ落ちる男女川が、だんだんと水量を増して深い淵となるように、初めは淡い思いだった私の恋も、積もり積もって今では淵のように深くなってしまった。

とありました。私には縁遠い世界ですが、古代人の表現の世界のすばらしさに驚かされます。

小田純平さんの歌は、作曲はご本人で作詞は作詞家の友秋さんです。4分少々の短めの曲で1・2番プラスくり返し部という構成になっています。全歌詞を引用したいのですが問題が出るといけませんので1番だけ紹介します。

恋の悲しみ 知り過ぎていても

慣れることない 一人の淋しさ

宵の筑波嶺(つくばね) 谷間も消えて

針ひとつの痛み 胸のときめきか 

さらさら流る 秋の男(ひと)

しんしん積もる 冬の女(ひと)

それでも待ちます 目を閉じて

誘ってください あなたから

という内容で、これがしっとりとしたメロディーで小田さんが歌っています。最後の「誘ってください」の部分は1・2番では「ください」の高低が異なっています。これが小田さん流の曲作りで、他の曲にも出てくるので情感を歌い上げる手法なのだと勝手に推測しています。

YouTubeにご本人のバージョンがアップされていればいいのですが、他の人によるカバー曲バージョンしかないので残念です。

この曲を唄っていて

1番の「宵の筑波嶺(つくばね) 谷間も消えて」

と2番の同段の「夢の歌垣(うたがき) 詠み人 途絶え」

の言葉のイントネーションとメロディーがとても符合していて響きます。

くり返される部は、

さらさら流る 秋の男(ひと)

しんしん積もる 冬の女(ひと)

それでも待ちます 目を閉じて

誘ってください あなたから

ですが、男・女を「ひと」で唄っています。聞く側は「人」であって性別が隠されていることを知るよしもありません。

 秋の男、冬の女の詩に隠された意味

聴くだけでは出てきません。そして「マン」や「ウーマン」、そしてヒューマンでは、性別不詳の「ひと」の味わいが出てきません。


女性が語る「あのひと」

男性が語る「あのひと」

語る場における状況で「ひと」の性別は変化します。そして夫や妻にもなることは誰もが知るところでしょう。

ということで今週はこの「男女川」を覚えたいと思います。